2017年もよろしくお願いします。

 あけましておめでとうございます。

 2016年は(毎日の仕事は別にして)部屋の中でダラダラと過ごすことが多かった年でした。18歳選挙権という目標が実現したことで、3年間近く関わっていたNPO Rightsの活動(理事)からも退き、2015年の千葉市のまちづくり委員会(市民シンクタンク)の活動も終わりました。土日は何となくドラマや映画を見たりして過ごすことが増え、目的意識を持って勉学に励むのでもなく、社会的な活動に関わることもなく、何かしたいと思いつつも、何をするべきか方向性が見えませんでした。

 また、昨年の12月、ついに30歳になり「若者」ではない歳になりました(つい最近まで大学生だったのが信じられん。大人になっても人間って変わらないものですね)。

 外務省との仕事(契約)は今年前半で終わりなので、その後はキャリアや人生設計を含めて色々と考えなければなりません。毎日追われるように組織の中で業務をしていると、自分がどう生きるかについては考えなくなりがちですが、今年は色々と試行錯誤をしていきたいと思っています。一方で、去年は途中からブログを完全にサボっていたので、今年は定期的に更新するようにします。特に今年は英国が離脱の交渉を開始する年であり、オランダ、フランス、ドイツの重要な選挙が控えている年でもあるので、自分なりにアウトプットを出していきたいと考えています(本当にEUはどうなるんでしょうね)。

 2017年もどうぞよろしくお願いします。

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スウェーデンの有望な大臣が飲酒運転で辞任へ

スウェーデンの若者担当大臣のアイーダ・ハジアリック(29歳)が飲酒運転の発覚により辞任するというニュースが入ってきた。ワインを二杯ほど飲んだ後、デンマークのコペンハーゲンからスウェーデンのマルメへ移動していたところをスウェーデンの警察に捕まったようだ。

スウェーデンでも人気と評価、期待値の高い政治家が高かっただけに、彼女の辞任を惜しむ声が多いようだ。なんとバカなことをしたという失望の声もあるが、彼女が自らの過ちを認めて、自分の判断で迅速に辞任を決断したことを評価する人も多い。メディアや世論の論調を見ていると、そもそもアルコールの量が大したことないので辞任はオーバーリアクションだったというものすらある。むしろ、彼女の潔い辞任は、将来の政治家としてのキャリアの可能性を残したという見方もされている。

Aida Hazialic (若者大臣(高校・知識向上担当大臣))
アイーダハジアリック

 

 若き社民党のスター選手

アイーダはボスニアヘルツェゴビナで生まれ、5歳のときにユーゴ紛争から逃れて両親とともに難民としてスウェーデンにやってきた。両親は清掃の仕事などで家計を支えて、アイーダは賢明に勉学に励んだ。社民党の外務大臣のアンナ・リンドに憧れて、16歳のときに社会民主党の青年部組織に入党し、頭角を現した。19歳で市議会議員となり、23歳で市議会の幹部となった。2年前の27歳のときに国政選挙に出て惜敗したが、ロベーン首相から直接招集され、最年少で閣僚(若者大臣)に就任することとなった。若者の教育や雇用の問題に取り組み、職業学校の改革を推し進めていたところだった。保守からも左派からも評価が高く、社民党の未来を担う有望な逸材のはずだった。

(参照:アイーダへのDNのロングインタビューの記事は面白い。題名は「私はスウエーデンが与えてくれた全てのことに感謝している(アイーダ)」)

欧州諸国と比べて厳しいスウェーデンの飲酒運転の基準

アイーダは、ワインを二杯飲んでから4時間経っていたので、アルコールは抜けていると思っていた。だが、実際に血中検査をしたら、0.2mg(血液1mℓ中のアルコール濃度)が検出されたのだ。

スウェーデンでは血中のアルコール濃度が0.2mgを超えると飲酒運転(酒気帯び運転)とみなされ、罰則の対象となるが、スウェーデンの飲酒運転の基準は他の欧州諸国と比べても厳しいものだ。デンマーク、フランス、フィンランド、オランダ、オーストリアでは通常0.5mg、英国では0.8mg(スコットランドは0.5mg)、スウェーデンと同じ水準の規制を課しているのはノルウェー、ポーランドなどであり、それよりも厳しいゼロ基準を採用しているのはハンガリー、ルーマニア、スロベニア、スロバキアなどである。なお、日本の酒気帯び運転の基準は約0.3mgなので、スウェーデンよりも緩い(ただし警察の裁量において飲酒と判断する場合には飲酒運転となる)。

ちなみに、アイーダはデンマークのコペンハーゲンからマルメを走行していたが、もしコペンハーゲンで検査を受けていたら、彼女は当然に辞任する必要はなかっただろう。もちろん、スウェーデンの国内法に違反したことには間違いないことであり、飲んだから乗るなの原則からしたらそもそもアウトである。法律を作成し、遵守させる側の人間がそれを守らないのは道理にかなわない。特に若者向けの「Don’t drink & drive」などのキャンペーンを推進する側であったのだから、言い訳はできない。その意味では、彼女がすぐに辞任をしたことは良いことであった。

スウェーデンの交通死亡者数に占める飲酒関連の割合

スウェーデンでは2014年の交通事故の死亡者数は270人であるが、そのうち54人(全体20%)は飲酒関連によるもの(o,2mg以上)である。過去の統計研究によれば、一人当たりの飲酒の消費量が1ℓ増加すれば、飲酒運転の違反件数は11%増加し、交通事故死亡者数が8%増加するとされている(リンク)。

 飲酒関連の交通死亡者数と全体に占める割合の推移(2007-2014)diagram_2_440px

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英国君の大冒険

 昔々あるところ、EU組というヤクザの組織がありました。EU組は、資金力や収益力の高さに加えて、民主的な組織運営が有名でした。組合規則の下の平等が確保されたり仲裁裁判所による不満処理がなされるなど,まさに夢のヤクザ組織でした。しかし、組合員の数が多くなるにつれて懐事情が悪くなり、組合員の中でも不満が溜まるようになりました。

 一番文句を言っていたのは英国君でした。英国君は能力が高く仕事もよくできましたが、プライドが高く性格が悪い奴でした。EU組への上納金の額が高すぎる、他の組合員の仕事が遅い、自分の意見が意思決定に反映されない、などずっと文句を言っていました。EU組の幹部のドイツさんとフランス君は、英国君のことを好きではありませんでしたが、その仕事ぶりは高く評価していたので、上納金の額を低くしたり、EU組の家の大きな部屋をあげたり、特別な待遇を与えていました。

 それでも英国君のイライラは止まりません。フランス君が作る農作物が高いとか、ドイツさんが自動車を作りすぎだとか、ギリシャ君は怠けものとか、ポーランド君のいびきがうるさくて眠れないとか、若い組合員のブルガリア君やルーマニア君の素行が悪いとか、その文句はとどまることを知りません。そして、英国君は「もっと大きな部屋に変えろ、上納金を減らせ、さもないと出て行く」と脱退を盾にして恫喝を始めました。EU組の組合員の多くは「英国君、脱退するな」と必死で懇願しました。一番仲良しのスウェーデン君、二番目に仲良しのオランダ君は、英国君がいなくなれば、フランス君やドイツさんが威張り始めて困ると思っていたので、 涙ながらに思いとどまるようにお願いしました。

 スウェーデン君とオランダ君からの慰留願いには後ろ髪を引かれましたが、もう耐えられませんでした。「お前らなんてオワコンだ、すぐに脱退してやる」と暴言を吐きました。EU組の組合員は、英国君の傍若無人な態度についに堪忍袋の尾がブチっと切れました。そして、「お前が出て行くなら出て行ってもいいが、今すぐサインしろ」と脱退契約書を突きつけました。

 英国君は急に怖くなって「まだ心の準備ができていない。もう少し待ってくれ」と言い始めました。このヤクザな世界は一人で生きるには厳しいところです。中国組やロシア組とも戦わないといけません。 きちんと準備をせずに脱退すれば、命に関わると心配になってきました。

 英国君は、EU組の家の隣にあるノルウェー君やスイス君の小屋を訪ねました。英国君は、ノルウェー君やスイス君が豪勢な生活ができていることを不思議に思っていました。ですが、ノルウェー君やスイス君からは、英国と同じくらい上納金を支払っているが、EU組は全然意見を聞いてくれないし反映されていない、実はチャンスがあれば正式な組合員になりたいと思っていることを聞きました。英国君は、隣の芝は青く見えること、EU組がいかに自分を守ってくれていたか、大切にしてくれていたか、いかに民主的なヤクザ組織だったのかに気が付きました。

 そして、英国君はEU組の組合員の一人一人を回って土下座して謝りました。こんなやつを許せんと怒っている組合員もいましたが、ドイツさんがみんなを説得しました。英国君との脱退契約書はそのまま破り捨てられ、この大騒動は無かったことになりました。

 その後、英国君は心を入れ替えて働き、EU組の発展に大いに貢献しました。

  (今後のシナリオの真面目な分析はこの記事をどうぞ)

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英国はそれでもノルウェー型(EEA型)を選ぶ

 EU離脱後の通商関係のシナリオについて、離脱支持派の最も強い要望が「EU移民の制限」にあることから、「カナダ型(カナダプラス型)」を指向する可能性が高いと予測した(過去記事)。だが、EU離脱がもたらす巨大な不確実性を前にして、「カナダ型」を回避し、より安全な「ノルウェー型(EEA型)」を選ぶ可能性が高まっている。物品への関税復活や金融サービスの制限を含むカナダ型よりも、EU単一市場へのアクセスが広範に維持されるノルウェー型を選択すれば、大学・研究機関やビジネスへの悪影響が最小限に抑えられるためだ。

 英国は本当にノルウェー型に落ち着くのだろうか? 

離脱派の選択肢

 EU離脱派の代表格であるボリス・ジョンソン保守党議員は6月24日のデイリーテレグラフ紙への寄稿(リンク)において、「単一市場のアクセス」の確保とともに「人の移動の自由の制限」(オーストラリアの移民管理制度の導入)を行う方針を明らかにした。これは「人の移動の自由」を伴わないカナダ型に「単一市場のアクセス」を確保するという意味で「カナダプラス型」であるが、そもそもEU単一市場とは「モノ,サービス,カネ,ヒトの移動の自由」を指すことから、この提案が実現する可能性はゼロである。このことは、キャメロン首相が今年2月までの再交渉で勝ち取れなかったことからも明らかであり、他国のドミノ追随を恐れるEU側が受け入れることはない。唯一英国に融和的な態度を取るドイツのメルケル首相ですら「義務を伴わずに特権だけを享受することはできない」(Politicoの記事)と譲歩しない姿勢を示している。(追記:6月27日のEUサミットの声明でもその点は明記されている)

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 上記の図は、EU通商協定における単一市場アクセスと人の移動の自由の度合いの関係をまとめたものである。EU離脱派の要求は、上記の図でいう①カナダプラス型か、②EEAマイナス型,③カナダややプラス型しかないが,①や②は、EU単一市場の性質から実現可能性はほぼない。②の可能性はゼロとは言えないが、ノルウェーやスイスが「なぜ英国にだけより良い条件を与えるのか」と反発するだろう。実現性が高いのは、ノルウェー型に「EUの意思決定過程への部分的な参画」を組み込んだ「ノルウェープラス型」である。もしEU側がノルウェープラス型を受け入れなければ、ノルウェー型に落ち着くだろう。③のカナダややプラス型やカナダ型はEU側として受入れ余地はあるが、むしろ、英国側として採用できない可能性がある。その構造的な理由としては、ア:スコットランド議会の拒否権の行使、イ:英議会の残留派の巻き返しなどが考えられる。

スコットランドは独立しない代わりにノルウェー型を選好する

 まず離脱協定の発効にはスコットランド議会の承認が必要との指摘があるが(英議会の資料),その場合、スコットランド議会は「カナダ型」に同意しない。スタージョン首相は、スコットランドでは全ての地域で残留派が多数であり,英国離脱の場合には独立に向けて再住民投票を行うとしている。ただ、英国政府はスコットランドの住民投票の実施に同意する見込みはない。また,スペインのカタルーニャ州やベルギーのフランダース地方など独立の火種を抱えていることから、EU側がスコットランドのEU加盟を認める見通しもないため,スコットランドは八方塞がりとなる。

 スコットランドに残された選択肢は,英国のEU離脱そのものを防ぐことであり,そのためならば迷うことなく離脱協定を否決するだろう。スコットランドは本気であり独立の動きも進めるだろう。英政府がスコットランドを説得する唯一の方法は、「単一市場アクセス」を確保できるノルウェー型を取ることだ。スコットランドは、カナダ型の選択肢には同意しないので、これが最終的な妥協点となる。

英議会の残留派もノルウェー型を選好する

 英議会の7割以上はEU残留派(650人のうち460人)であり、離脱したとしても単一市場アクセスの確保が重要だと考えている(BBCリンク)。離脱が国民の賛成多数を得たことは尊重する必要があるが,離脱•新協定に関する英国の方針はこれから確定する。私は保守党離脱派が国民の意思表示を盾にして党内基盤の強化を図るとみていたが,離脱派はバラバラで一体化する見込みが薄い。一方で、国民の間に困惑と戸惑いが広がる中で,悪影響を最小限に抑えようとする動きが活発化している。保守党の中でも離脱派への逆襲が始まり,労働党が乗っかれば,ノルウェー型に落ち着く可能性がある(カナダ型の選択は不可能になる)。

グラフ:英議会の議席構成と離脱派と残留派の議席バランス

英国議会の議席構成とBrexit

それでもEU残留はあり得る?

 なお、英労働党が新しい党首を選出し,解散総選挙に向けて体制を立て直すことができれば、EU残留の可能性もないわけではない。スコットランド国民党、自由民主党はEU支持であり、保守党にも残留派の方が多数いる。英国が落ち着くだろう「ノルウェー型」では、EUの意思決定に十分に関わることはできないので、その選択は「主権を取り戻す」どころか「主権を失う」ことになってしまう。もし解散総選挙となれば,離脱しない方が得策という雰囲気が生まれる可能性がある。新しい労働党がそうした政治の空白を埋めることができれば、EU残留は十分あり得るだろう。

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大雨が降ればEU離脱に傾く?

 英国の運命を決める国民投票が明日に迫ってきた。欧州の歴史を決める分岐点に立ち合っていると思うと、感慨深い気持ちになる。歴史が書き換えられる瞬間を共有したいという、怖いもの見たさの気持ちもないわけではないが、EUの存続のためには是非残ってほしいと思っている。

 英国の残留派と離脱派は僅差で競り合っており、どちらにも転びうる状況になっている。どちらかといえば残留が有利と言われているが、当日の天候次第で結果がひっくり返る可能性は残っている。

 既に過去記事で書いたように、高齢世代の7割近くがEU離脱を強く支持しているのに対して、若年層では残留派が多い。一方で、高齢世代の方が相対的に投票率が高く、若年層は投票率が低い傾向にあるので、若者が投票に行かないと離脱派が上回る可能性がある。

 もし快晴になれば、投票率が底上げされるので、そのまま残留派が勝利するはずだが、大雨になれば番狂わせがあるかもしれない。高齢者はEU離脱に対して強い熱意があるので投票所まで足を運ぶが、若者はそれほど強い思いを持っているわけではないので、面倒になって投票所に行かなくなる人も多いだろう。つまり、残留派と離脱派の差が僅差なだけに、大雨によって離脱派が上回る可能性があるのだ(過去記事)。

 なお、23日はイングランド南部で雨の予報のようだが、大雨にならないことを祈るのみだ。

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英国のEU離脱•残留後のシナリオ

 英国のEU離脱を巡る国民投票があと5日後に迫ってきた。投票の結果を予測することはもはや不可能であると悟ったので、そのことは諦めて、今回は英国民が残留又は離脱を選んだ場合の今後のシナリオについてそれぞれ考えてみたい。

EU離脱の場合

 英国民が離脱を選んだ場合にすぐにEUから離脱となるのかといえば、そんなことはない。夫婦が離婚をするときに資産整理を含めて離婚契約書等を作成するのと同様、英国とEUも離脱•新協定を結ぶ必要があるのだ。離脱•新協定では、①英国内のEU企業やEU市民、EU内の英国企業や英国人の既得権の保護のあり方に関する内容とともに、②英国とEUの新たな通商協定の中身を定めることとなる(通商協定のあり方についてはノルウェー型、トルコ型、カナダ型についてまとめた過去記事を参考)。

 EUのリスボン条約第50条1項は「離脱する国は、欧州理事会に通知し、EUと離脱に関する取り決めを明記した協定を締結する」「EU関連法令は離脱協定の発効日また発効しない場合には通知日から二年後に停止される」と規定している。つまり、英国政府がEU側に離脱の意思を通知し、離脱•新協定を二年以内に定めた上で初めてEU離脱に至ることになる。逆にいえば、少なくとも二年以内は従来通りの関係が続くことになる。なお、二年以内に離脱•新協定が締結できない場合、EU側の全会一致の同意があれば、期限を延期することができるが、同意が得られなければ離脱•新協定なく離脱することになる)。

 ここで問題となるのは、英国政府による第50条の通知の時期である。残留派のキャメロン首相は、国民投票の結果が離脱となれば、すぐにEU側に通知し離脱•新交渉を開始すると明言している。一方で、離脱派のゴーブ司法大臣は「自らの首を締めるような拙速な通知はしない、離脱派が勝利すれば離脱派が実権を握ることになるのでキャメロン首相が通知することは許されない」という趣旨の発言をしている。

 離脱派のシナリオは、年内にキャメロン首相に代わり、元ロンドン知事のジョンソン政権を誕生させた後、EU側と非公式な協議を進めつつ、正式な通知をどこかで行うというものだ。だが、保守党政権は離脱派と残留派で真っ二つに分裂しており、政府として離脱•新協定に対する統一的な立場を取ることができない可能性がある。その場合には下院の解散総選挙を行い、勝利した保守党政権が「カナダ型」の選択肢を決定した上で、正式な通知を行うことになるだろう(英国独立党はその役目を終えて保守党に合流し、労働党は全く求心力がなく相手にならないので、保守党の圧勝だろう)。

 一方で、通知を先送りしつつ非公式な協議を行うという選択は第50条の手続きを無視するものであり、EU側は猛反発するだろう。だが、EU側が対抗できる手段はほとんどないので、指をくわえて見ているしかない。また仮に離脱協定なくして英国が離脱した場合、EU側には貿易制裁措置で脅かすくらいしか選択肢が残されていないが、それを実行すればEU側も大量の返り血を浴びるのでありえないだろう。

EU残留の場合

 EUとは従来通りの関係が続くことになるが、英国の国内政治はカオスになる可能性がある。保守党は離脱派と残留派が分裂して過半数を失い、議会運営が困難になり、解散総選挙が行われる可能性がある。保守党は一部が分裂したまままとまらず、英国独立党は燻り続ける反EU感情を利用して支持を伸ばし、労働党は全く相手にならずさらに支持を下げ、スコットランド国民党はますます民族主義化する。その結果、過半数を制する政党が出てこないので、不安定な政権運営が続くこととなる。

参考文献:中村民雄(2016)「5章 EU脱退の法的諸問題」(福田耕治編著『EUの連帯とリスクガバナンス』(アマゾンのリンク

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英国離脱は本当に避けられないのか?

 英国のEU離脱を巡る国民投票が6日後に迫ってきた。昨日発表されたIPSOS MORIとSturvationの世論調査会社の電話調査の結果でもEU離脱派が残留派を上回っており、EU離脱はかなり高い確度で現実のものになりつつある。もちろん、世論調査が間違っている可能性はあるし、昨日の労働党議員の殺害などの突発的な事件によって世論の流れが変わる可能性も否定できないが、このままいけば離脱派が勝利する可能性が高い。

IPSOS MORI (6月17日)Survation(6月17日).png

Sturvationの調査(6月16日)では、離脱派(Leave)が44.9%、残留派(Remain)が42.1%、未定(Undecided)が13%という結果であるが、IPSOSの調査(6月16日)では、離脱派が51.3%、残留派が45.6%、未定が3.1%であり、いずれも離脱派が2%と6%ほど上回っている。なお、両者はともに投票意思があると回答した人を対象とした値である。

 IPSOSの未定の割合が少ない理由は、同社は質問に対して未定と回答した人に対して、さらに「強いて言えばどちらに投票しますか」という質問を改めて投げかけいるためだ。未定の割合を少なくしているという点では、IPSOSの数値の方がより正確に現実の世論を反映していると考えられる。(なお、電話調査とネット調査の違いについては過去記事を参照のこと)

 グラフ:有権者の再重要視する争点の変化優先事項(IPSOS 6月)

 また、IPSOSの調査で特筆すべきは、有権者が投票で重要視している争点に明確な変化が見られる点である。5月の調査では、最も重要視する争点として「経済影響」と回答する人が33%いたが、6月では28%に減少した。その一方で、最重要な争点として「移民の数」と回答した人が同じ期間で28%から33%に増加した。つまり、有権者の関心事項に大きな変化が見られるのである。

 あと6日間のうちにTV討論や議論が行われることになるが、有権者の関心事項が「経済」から「移民」に移行しているので、残留派が攻め手としている「経済への悪影響」はあまり響かない可能性がある。ここ数日間で英ポンドの通貨が下落しているが、英国国債は全く上昇していない(そのかわりに南欧諸国などの国債が上昇する傾向にある)。むしろ、英経済にとってはポンドの下落は歓迎するべきことなので、現時点では離脱を選択して何が悪影響なのかつ伝わらないだろう。

 あとは労働党議員を殺害した犯人が極右グループに所属していたということがどれだけ有権者に響いてくるかだが、それは全く予想ができず、未知数だ。あとは奇跡が起こることを祈るのみである。

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