1.日本ーEUの自由貿易協定交渉の焦点は鉄道セクター

 、世間ではTPPの交渉に注目が集まっているが、日本はEUとも大規模な自由貿易協定(FTA/EPA)の締結交渉を進めていることを忘れてはいけない。これまですでに二回の交渉が行われており、今月21日から始まる第三回交渉では、EUが日本の“非関税障壁(Non-Tariff Barriers)”として攻撃している「政府公共調達(特に鉄道セクター)」などが主な論点となるとみられている。

 日本政府は、安全性の確保という理由で鉄道セクターを、WTOの政府調協定(Government Procurement Agreement)の対象から除外する措置を取ってきた。もちろん、JRを含めて多くの日本の鉄道運営事業者は民間経営だが、WTOの協定では未だに公共事業者とみなされており、EUが長期に渡って門戸開放の要求を行っていた。こうした背景から、EUがEPAの交渉開始の際に付けた条件が日本の非関税障壁、特に鉄道の公共調達市場の開放であった。もしも日本がこの分野で十分な譲歩の姿勢を見せなければ、EU側に日本は非関税障壁をなくすつもりはない」と受け取られる可能性もある。

 今、EUからの自動車/商用車およびテレビに対する関税(それぞれ0%、0%)はすでになくなっているが、日本からEUへの主要な輸出品に対する関税(自動車10%、商用車10%-22%、電化製品14%)にはまだ削減の余地が残っている。日本の輸出企業はこうした高い関税を引き下げたいとの思惑があるが、EU側からすれば、日本の“競争力のある”自動車製品の流入”によってEU側だけが損をすることになるため、特にフランスやイタリア、ドイツなどの製造業団体(特に自動車業界)は断固として反対している。

 こうした断固反対を唱えるEUの業界団体を説得して交渉を始める際に付けた条件が、日本の非関税障壁の撤廃である。日本はEUの関税水準が下がることでメリットが得られるし、EUも日本側の非関税障壁が撤廃されればメリットが出てくる、両者ともにWin-Winになるので交渉を始めよう、という論理である。確かに日本ばかりが関税以外のシステムを変更させられるのは頭に来るが、何かを得るためには、何かを差し出さなければならないのは交渉の常である。すでに日本の非関税障壁の撤廃は、EPAの締結の前提条件となっているため、必ずどこかの分野で妥協と譲歩をしなければならない。そこで分かりやすく譲歩しやすい対象として上げられたのが鉄道セクターというわけだ。
 
 もちろん、自動車の非関税障壁(軽自動車優遇措置や技術要件や認証手続きの見直し)なども大きなトピックだが、日本が譲歩をしているという姿勢を見せるためには鉄道セクターほど分かりやすい例はない。

 実際、欧州議会の国際貿易委員会の議員は日本の鉄道セクターを含む公共調達市場の障壁の撤廃を強く求めている。

欧州議会の国際貿易委員会の議長を務めるVital MOREIRA:(引用

 「日本とEUの経済貿易関係はまだ未成熟でありポテンシャルがある。日本には非関税障壁があるが、公共調達市場がこうした障壁のなかで現在最も大きなものである。日欧EPAは、これらの非関税障壁を取り除く最も効果的かつ唯一の手段である」。

 同委員会に所属している有力議員のDaniel CASPARY:(引用

 「(我々は日欧EPAの締結を望んでいる)。しかし、日本側が市場開放に対する消極的な姿勢には懸念を抱いている。我々は、2011年末に日本が鉄道分野で譲歩を提示してきたとき、とても喜んだことを覚えている。しかし、こうしたコミットメント(約束)をどれだけ実際に守ってくれるのだろうか。私は、日本がEUの市場にアクセスして車を売ることのみに関心があるが、自国の市場を開放することには何の努力もしていないのではと懸念している」。

                    (2へ続く)

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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1.日本ーEUの自由貿易協定交渉の焦点は鉄道セクター への3件のフィードバック

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