Film in Finland

 日前、フィンランドフィルムアカデミーで、プログラム参加者のための試写会が行われました。そこで見たのは、「The house of dark butterflies(その家の暗い蝶々たち」です。映画監督は、ドメ・カルコフスキー氏。フィンランドの映画学校の卒業作品が認められて06年に監督としてデビュー。08年に製作されたこの作品がフィンランドでヒットして、今年も「Forbidden Fruit」という作品を続けてリリースしています。現在33歳、若くて力のあるフィンランド人監督の一人です。
 この映画の鑑賞後、カルコフスキー監督との会談の機会がありました。彼は母親が国連で働いていたこともあり、キプロス島で生まれ育ちました。明るくリラックスした環境で生まれ育った彼は、フィンランドに帰国後、フィンランドの暗くて抑うつ的な雰囲気に大きなカルチャーショックを受けたといいます。そんな監督は、社交的で英語もペラペラ、そしてとにかくしゃべる。ひとつ質問すると、マシンガンのように言葉が次々と出てきます。彼いわく「映画監督の仕事はコミュニケーションを取ること」だといいます。
 監督の話のなかで面白かったことの一つが、映画の補助金システムです。フィンランドのように人口が小さい国では、市場の論理で映画を作ろうとしても上手くいきません。総需要が小さいからです。そこで、独立機関であるフィンランド・フィルムアカデミーの補助金が大きな役割を果たしますが、そのお金の出所は、フィンランド人の税金ではなく、宝くじなのです。これにより、「自国民の血税は自国民のために使え」という圧力を弱めることができます。
 たとえば、現在、フィンランドの独立の父ともいわれる、フィンランドの歴史のなかでも最も重要な人物であるマンネルハイム大佐の映画を作っています。しかし製作予算を大幅にオーバーして完成が遅れています。国民も待望の映画だけに補助金を増やしてほしいと嘆願したところ、フィルムアカデミーの回答は「ノー」でした。フィンランドの国のイメージに関わる映画であろうと、関係ない。予算は限られており、他の映画にもお金を回さなければなりません。この組織の自立性の担保に、もしかしたら、宝くじという色のないお金は一役買っているかもしれません。 

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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Film in Finland への2件のフィードバック

  1. REIKO.G より:

    ぐしけんさんこんにちは。静岡在住のREIKO.Gと申します。記事がとても為になり、まずは感謝の言葉を言わせてください。ありがとうございます。
    実は子供(小学生男児2名)を連れてスウェーデンに行きたいと思っておりまして行程について是非アドバイスをいただきたくメールさせていただきました。私は現在行政勤務ですが温暖化や環境破壊に強い危機感があり、子供達にリサイクルや環境保護の重要性を伝えていきたい、一緒に考えていきたいと思い、前々からスウェーデンを訪れたいという漠然とした夢がありました(国内のエコツアーは年に1〜2度参加しています)
    しかし実際海外ツアーで探してみると観光向けが多く、エコツアーであっても子供と同伴となると難しく実現しないでいました。そこで個人で1から予定を立てたいのですが、あまりに知識がなく進行しません。漠然とした希望ですがスウェーデンのリサイクルシステムを見学出来るような施設、各家庭においての日本とスウェーデンの違い、子供達への環境学習の方法、そういったものを子供達と一緒に知る事が出来るツアーにしたいと思っています。滞在方法やルートもどう調べていったらいいのか…まだ全く未定です。そこでぐしけんさんにご相談させていただけきたいのですが一度ご連絡をいただけませんでしょうか。突然のお願いメールで申し訳ありません。『充電中の風見鶏』は私の個人ブログになります。PCメールはhugfrom015@yahoo.co.jpになります。ご連絡をいただけたら嬉しいです。ご多忙とは存じますがどうぞよろしくお願いいたします。

  2. おぐし より:

    Reiko-san
    こんにちは、コメントありがとうございます。ブログを拝見したところ、色々と環境への取り組みを日々実践されているようで、感心しました。紙を持ち帰ってお皿拭きに使うというのはとてもいいですね。僕もあまり洗剤を使わないようにしているので参考にさせていただきます。
    スウェーデンへの環境学習の旅行を考えていらっしゃるとのこと。僕は環境についての専門知識はほとんどないのですが、もしも力になれることがあればお手伝いしますので、メールを送っていただければと思います(英語ができると個人での環境学習も十分できると思いますが、そうでないと難しいかもしれません)。
    あるいは僕の知っている限りでは、旅行会社の「リボーン」さんがスウェーデンへの環境学習の旅行を企画しています。ぜひホームページをチェックしてみてください(僕が同行させて頂いたリボーンのツアーでは、このときは特別だったかもしれませんが、ゼロ歳児の赤子も参加していました!)。
    あと一つ付け加えるとしたら、おそらくREIKOさんのように細かいところまで環境に配慮している人はスウェーデンでもそれほど多くないかもしれません。むしろ日本の方が多いのではというのが僕の印象です。けっこうこっちの人達はゴミを葛藤無く捨てますしそれがけっこう普通になってきています。フィンランドでさえ、パーティーのあとはもう信じられないほどのゴミの山です(かなりショックを受けました)。また、デンマークに住んでいた友達によれば、土曜日の朝はどこもゴミでいっぱい。ついには市の清掃会社が「こんなゴミの町に誰がした」というメッセージを込めてストライキを起こしたほどだそうです。北欧の環境への取り組みは概して社会システムの構築が上手いということは強調しておくべき点かもしれません。

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