午前中に簡単なオリエンテーションを済ませたのち、午後からプログラムが本格的にスタートした。今日のレクチャーは「ジャーナリストと情報源」と「フィンランドで働く特派員」の二つ。最初のレクチャラーはフィンランドの全国紙であるヘルシングサノマットの男性記者。お話の内容は主に「フィンランドは世界で最も透明な民主主義国だといわれるが本当にそうなのか」というもの。
彼の主張を強引にまとめると次のようになる。フィンランドはジャーナリストにとって取材し易いし、権力の側も進んで情報を開示する。その意味では透明性はあるといえる。ただし、その場合には小国という要素を勘案しないといけない。ものすごく単純に考えたとして、フィンランドよりも人口が十倍の国では十倍の問い合わせが来るわけだ(たぶんもっとだけど)。普通に考えて対応しきれない。
そもそも「透明性」といった場合に何を持って透明性を定義するのかもよくわからない。たとえば、国連では人々の主観的認識をもとに汚職具合を測っている。あるいはNGOのトランスペアレンシーインターナショナルのホームページによれば、人々の政治に対する汚職認識具合と汚職そのものを総合して判定しているらしい。いずれにしても先進国の小国であれば汚職の認識は低くなるだろう。
またフィンランドのような小国での政治サークルでは、ジャーナリストも政治家もNGOもかなりの程度が顔見知りになる。あらゆる情報は比較的にダイレクトに手に入る。だが情報が簡単に手に入るがゆえに意外にメディアの追求が甘くなることもある。つい最近のケースでいえば、政治家の政治献金の問題が明らかになったそうだ。法律を抜けて規定以上のお金を受け取ることが可能だったらしい(詳しくはよくわからないが、もうすぐ詳細レポートが出てくるらしいのでまたチェックしたい)。
その他にも原発の増設問題がある。現在4つの原発が稼働中で、5つ目の原発が2012年に完成する予定。そしてスウェーデンとフィンランド資本のフォーツムが6つ目の生産を打診中だ。フィンランドは2002年に原発増産にいち早く舵を切ったが、国民の世論では77%の反対が出ていたらしい(すいません。これは間違いで50%程度。原発反対の声はそれほど大きくないそうです)。それでも政府は強攻策に出た。しかしながら現在、原発がコスト面で安いという前提が崩れつつある。というのも建設が計画通りに進んでいないのだ。建設が長引いたせいで従来の価格の50%以上が上乗せされるという。
フィンランドでは、社民党、中央党、保守党が常にリーディング政党であるが、これらは虹色連立(レインボーコーリション)と呼ばれるように連立を組んできた。これはスウェーデンでも見られない超コンセンサス政治である。2007年の選挙で社民党が外れたが、それでもスーパーコンセンサス政治の本質は変わっていない。フィンランドはソ連に脅かされてきた歴史背景もあり、そして今も海外への輸出が国を支えていることもあり、政治の果たすべき役割はサバイバルである。政党間にイデオロギーも政策の違いもさほど無い。生存することが共通基盤のプラクティカルな政党なのである。
だから、彼はここまで言ってはいなかったが、フィンランドの政党システムには挙国一致内閣みたいな要素があることは否めない。国民の意思が果たして本当に反映されているのか疑問が出てくる。フィンランドのなかではこれを「フェイク民主主義」だという人もいるくらいだ…。「生存が大事だ」といえば誰も否定できない。昔も現在もフィンランドにとっては「生存」は喫緊の課題なのである。
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