G20 ユースサミット

2014年5月8日~11日、ドイツのミュンヘンから120km離れたGarmisch-Partenkirshenというアルプス山脈に囲まれた観光地で、G20ユースフォーラム(G20 Youth Forum)という(30歳までの)若者を対象としたG20の模擬イベントが開催された。G20ユースフォーラムは、主にG20の国々の学生、研究者、政治家、活動家などを一同に集め、様々な分野の最新の研究内容の共有、若者政策に関する議論を通じて、世界中に変革の種を撒くことを目的としている。

私はもう学生ではないが、現在ベルギーにいることもあり、たまたま知り合いの千葉大の先生から同イベントについて教えてもらった。世界中の次世代のリーダーたちが集まる(?)ということで休暇を取って自費で参加することにした。以下ではイベントの概要と様子をまとめて紹介する。

G20 入口

g20youth

G20 ユースフォーラムの概要

  • 今年の参加者数は私の推定で約300人~400人
  • 国ごとに参加者数が異なり、米国、オーストラリア、EU域内の国からの参加者が多かった
  • 「カンファレンス」という研究報告及び共有を目的とするアカデミック部会と「サミット」というトピックごとに政策提言をする部会があり、参加者は応募の段階でどちらかを選んで参加する
  • なお、応募の際は、推薦書、トピックに関する志望書、履歴書を提出する。締切前の応募であればおそらく誰でも参加できる模様(私は締切を過ぎて応募したが参加できた)
  • 参加費は食費込みのツインルームが約1090ユーロ、シングルルームが1400ユーロ
  • 日本からは約12人の学生が参加した(そのうち4人は日本の大学に所属する外国人学生)
  • ほとんどの参加者(学生)は大学から財政的支援を受けている(日本は筑波大と東工大だけが財政的に支援をしている模様)。

G20ユースサミットでの政策提言

ユースサミットでは参加者は下記の5つの政策議題ごとに分かれ、5月10日~11日の1日半で1ページ半の勧告をまとめる。その後、最終日の午後の閉会セレモニーにて、それぞれのグループの代表者が5分間のプレゼンテーションを行う。

  1. 「若者が起業するための環境」(Entrepreneurial Climate for Youth)
  2. 「家族と若者のためのキャリア機会」(Family and Career Opportunity for Youth)
  3. 「教育の機会と人権」(Access to Education and Human Rights)
  4. 「食料安全保障と将来の資源」(Food Security and Future Resource)
  5. 「税制と若者の生活環境」(Tax and Living Condition for Youth)

グループ:税制と若者の生活環境 

 私が加わっていたグループの「税制と若者の生活環境」では、G20の12カ国から総勢21人が参加した。同グループは、主に若者の生活状況を改善するために税制をどう活用するかという点について議論をした。同グループの参加者の7割くらいが学部生だった。

  • グループの作業手順は、各国の代表者が事前に準備してきたポジションペーパーに基づいて発言をした後、改めてトピックの問題点および解決策についてに議論を行い、そののちフォーマットに合わせてテキストを落とし込んでいく、というもの。
  • 主な論点は、①「世代間格差の改善策」、②「職業訓練プログラムの強化策」。
  • ①高齢化社会に直面している多くの先進国の代表は、世代間格差を減らすため、高齢者から若い世代への財政支出を拡大する施策(相続税強化、奨学金拡充、学生ローンの利率引き下げ)が不可欠という点で合意した。その一方、中国やインドなどの新興国では人口に占める若者の割合が多いため、こうした世代間での再分配策はあまり魅力的ではない。むしろ、全体の課税ベースを増やすべきと主張していた。
  • ②職業訓練プログラムの強化策の必要性は、ほぼすべての国で共有された。特に先進国ではITプログラマー、エンジニアなどの技術者が足りていない。大卒者の有するスキルと労働市場の求めるスキルのミスマッチがあり、(特に文系高学歴の)失業者が減らない。こうした問題を解決するため、工科大学や技術系専門大学、職業訓練プログラムへの財政支援の拡充、(文系大学よりも相対的に安い)授業料の優遇措置の導入などの対策案が提案された。

G20ユースフォーラムのエンターテイメント

ユースフォーラムでは、初日と最終日にディナーパーティーが用意されていた。プロの演奏家や歌手によるクラッシック音楽やオペラのパフォーマンスの披露、ドレスコード付きのディナーパーティー(男性は蝶ネクタイのタキシード、女性はドレス)に加え、バイエルン地方の伝統的男性衣装「レーダーホーゼン(肩ひも付き半ズボン!)」を使ったダンスセッションなどがあった。

Gala Dinner[1]

全体の感想

G20ユースフォーラムを運営するのはロシアを拠点とするNGO(G8/G20 Youth Forum Alumni)だということに応募後に気がついた。ウェブサイトを見ると創始者を含めて運営に関わっているのがほとんどがロシア人だった。ウクライナへの侵略でG8から追放されそうになっている中で、こうしたイベントがロシア人によって運営していることは皮肉である。今回のイベントでは安全保障全般については議題になっておらず、ウクライナが話題に上がることもなかった。イベントの運営上、センシティブなトピックに触れたくないということは理解できるが、G8/20という名称を使っている以上、そうした自国の問題点についても積極的に扱うべきだったと思う。

とはいえ、イベント自体はよく準備され充実した内容であった。個人的には、相部屋相手だったオランダ人学生スティーブン(24歳)との出会いが忘れられない。彼はユトレヒト大学で学生政党を設立、今年3月のユトレヒト市議会議員選挙に挑戦し、1議席を獲得した。彼からは学生党を設立する経緯から選挙キャンペーンなどの具体的な話を聞くことができた(このユトレヒト学生党の話は別の機会にブログでまとめる予定)。私の方からは日本でも18選挙権実現に向けた運動などの話題を共有して多いに盛り上がった。他にも中国、台湾の若い世代とも素晴らしい出会いがあった。ここで構築した(特にアジアでの)ネットワークを大事にしつつ、今後も広げていきたい。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: 政治参加・投票率・若者政策, 旅行(全般) タグ: パーマリンク

G20 ユースサミット への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ユトレヒト市の「学生起業党」 | ブリュッセルの政治動向分析

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