安全・安心について

 品の安全・安心とか、医療の安全・安心とか、治安の安全・安心とか。なんか耳にタコができるくらい毎日聞くこの頃。正直、うんざりしてきた。
 「安全・安心が大事」っていうのは確かにそうだ。でもそれを「絶対視」して、「安全・安心」があることが「普通」というような雰囲気になっているのは、やはり、気持ち悪いと感じる。(そもそも「安心」は主観的かつ曖昧なもので、自分なりの期待値(納得)を低く設定しない限り獲得困難である)。
 例えば、小松秀樹氏も「医療崩壊」の中で言っているように、医療行為には必ず「不確実性」が付きまとう。100%の安全なんてない。予期しがたい避けがたいミスというのは、必ず伴う。それをすべて「安全・安心」のもとに「医療事故はない」という前提で進めてしまうと、医療行為が成立しない。医者の自己委縮がおこり、いわゆる「立ち去りがたサボタージュ」現象が起こってくる。悲しいことである。
 昨日の夜のニュースによれば、エスカレーターで一歳の女児が転倒し、指を切断されたという。
 8日午前11時半ごろ、神奈川県平塚市東中原のスーパー西友平塚店地下1階のエスカレーター前で、同市万田のパート松永麻美さん(28)の長女茉衣花ちゃん(1)が転倒、下りエスカレーター前端部と床面のすき間に手を挟まれ、左手の薬指を切断した。県警平塚署は事故の詳しい状況を調べているが、店側の管理に問題はなかったという。 調べによると、茉衣花ちゃんは両親が目を離したすきに、上りエスカレーターに乗ろうとして、並んでいた1階と地下1階を結ぶ下りエスカレーターの前で転倒した。茉衣花ちゃんは両親と一緒に買い物に来ていた。(時事通信より)
 悲しい出来事であり、非常に気の毒ではある。
 ただ、こういうことって必ず起こりうることである。どんなに安全性を追求しても、不確実性はつきまとう。「転倒」だって時たま起こりうる。100%の安全なんてない。
 そのテレビニュースは、記者会見の中で、西友の責任者が謝罪している場面を淡々と映していた。「善」と「悪」でいえば、間違いなく「悪者」のフレームで。彼だって言いたかったんじゃないか。「100%の安全なんてない。1歳の女児が転倒して偶然指が引っかかることなんて想定していない。女児を1人でエスカレーターに乗せるのがおかしい」と。

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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安全・安心について への9件のフィードバック

  1. g より:

    nhkのニュースでも、「同じ店で“また”おこるなんてちょっとおかしい」みたいな市民のコメントが紹介されてた。キャスターは「二度と起こらないように」と。
    安全とは何か、安心とは何か、一度立ち止まってみても悪くはないと思うんだけど、実際次々にいろんな事件が起こってしまうからね。

  2. ぐし より:

    g氏
    「二度と起こらないように」。
    たしかにそれはそのとおりだけど、普通に考えて、こういうことって必ず起こりうること。管理の問題じゃない人為的な問題については普通に「事故は不注意でよく起こりうるので気をつけましょう」っていえばいいと思うんだけど。
    まあ、難しいかな。

  3. ぐし より:

    ちゃんgす
    >平和ボケ
    平和ボケでいられることは基本的に良いことだと思うけど、平和ボケを続けたいと思うなら、平和ボケを支えているインフラをどうしたら維持できるかもう少し考えないとだめだよな。
    その意味で、上のデータは象徴的な例だな。常に眼をギラギラさせていないといけないっていう、まさに「自然状態」の度合いをあらわしていると思う。

  4. 名無し より:

    エスカレーターの事故はどう考えても親の不注意が原因だと思わずにはいられません。良識のある親だったら一歳のこどもを一人で歩かせたりしないでしょう。
    マスメディアは簡単に人や企業、国を悪人に仕立てあげることができるのですね。

  5. ぐし より:

    名無しさん
    「被害者」に寄り添う、ということはマスメディアの傾向としてあるでしょう。「被害者」=「可哀そう」、「加害者」=「悪いやつ」というような「感情」に訴えることが視聴者に受けるからかもしれません。
    個人的には「記者会見の謝罪」のような既に「悪いやつ」をイメージ付けられている映像を使うことには、もう少し慎重さがいると思います。もちろん、何か取ってこないといけないというのは事情としてあるのでしょうが。

  6. ゲン より:

    名無しさん
    >エスカレーターの事故はどう考えても親の不注意が原因だと思わずにはいられません。良識のある親だったら一歳のこどもを一人で歩かせたりしないでしょう。
    子どもを育てたことのない人の無責任な発言ですね。
    子どもは少し目を離すとあっという間にどこかへ行ってしまうんです。
    たしかに「不注意」ではあったかもしれませんが、
    だからといって「良識がない」とするのはいかがなものかと。
    ぐしけんさん
    勧善懲悪の構造で片づけてしまえば簡単なところを、
    その二項対立を超えて対策を考える。
    大切なことですよね。
    マスコミ批判にしても同じではないでしょうか。
    マスコミの報道の在り方を批判するのは簡単ですが、
    彼らだって必ずしも悪気があるわけではないかもしれない。
    だとするなら、非マスコミである私たちからどのような働きかけができるか、
    そこが大切な気がします。

  7. ぐし より:

    ゲンさん
    >非マスコミである私たちからどのような働きかけができるか、そこが大切な気がします。
    コメントありがとうございます。
    いや、まさにおっしゃる通りだと思います。ただ単に文句を言うだけでは何の生産性も生みません。しかも、そのようにマスコミを批判する言説自体が、実は、一面的な見方に終始している、というようなことがよく見受けられます。あまり新聞やテレビを読み込まずに、「だから朝日は」とか「だからフジテレビは」などなど。(僕もよくやってしまいますが…)
    あるいは、「ちゃんとやれよ」と文句だけを吐き捨てるクレーマー。個人的には、これは日本が陥っているもっともメジャーな病理だと思っています。いわゆる無責任病です。マスコミは「政治はちゃんとやれ」と文句をいい、市民は「マスコミもちゃんとやれ」と文句を言う。どっちも対岸から石を投げ合っているだけ。それぞれで責任分担すればいいじゃないって思うのですけどね。
    マスコミの報道のレベルは、あくまで、市民(国民)のレベルと同じじゃないでしょうか。だから、もしマスコミを良くしたいと思うのならば、自分たちから良くなろうと行動していくしかないでしょう。いま必要とされているのは、そういう行動ではないでしょうか。僕はそう思っています。

  8. 名無し より:

    ゲンさんへ。
    ではあなたはこどもを育てた経験がおありなのでしょうか?無責任、と小生におっしゃいましたが無責任なのはどう考えても子供から目を離した親なのでは?
    『目を離すとどこかへ行ってしまう』歳の子供だからこそ、親の注意が必要なのでしょう。
    よくスーパー等で小さいこどもがウロウロしているのを見かけますが、親はこどもなんてそっちのけで立ち話。こんな親に良識があるといえますか?
    少なくとも小生はそんな親になる気は毛頭ない。

  9. 名無し より:

    ゲンさんへ。
    ではあなたはこどもを育てた経験がおありなのでしょうか?無責任、と小生におっしゃいましたが無責任なのはどう考えても子供から目を離した親なのでは?
    『目を離すとどこかへ行ってしまう』歳の子供だからこそ、親の注意が必要なのでしょう。
    よくスーパー等で小さいこどもがウロウロしているのを見かけますが、親はこどもなんてそっちのけで立ち話。こんな親に良識があるといえますか?
    少なくとも小生はそんな親になる気は毛頭ない。

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