国際連帯税@千葉大ゼミ

 2月から、千葉大の「上村剛彦ゼミ」にお邪魔させてもらっている。上村先生は、もともと国連職員として働いていたが、「日本からこそ世界を変えることができる」と思いはじめ、現在は、千葉大学地球福祉研究センターで研究を行っている。その専門は、ズバリ、どうすれば世界がハッピーになれるか。より具体的にいえば、「グローバルタックス・国際連帯税」についてである。
 年々減り続けるODA、そして内向きな政治状況。これらの政治状況の打破の一助として期待されているのが、「国際連帯税・グローバルタックス」である。2月28日には、超党派による「国際連帯税」の議員連盟が発足。これから日本の「国際連帯税」の導入に向けて活動していくという。
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 春休み中、パリやジュネーブ、ノルウェーでその最先端の動きを見てきた上村先生。先日のゼミでは、「国際連帯税」についての報告を伺った。ものすごく簡単にまとめると次のようなものになる。
 現代のもっとも大きな政治的な問題は、どのようにしてグローバルな問題について対処していくか・規制をかけていくかという点に収斂されるといってよい。現代は、「グローバル市場」が突出して影響力を持っている。多国籍企業が市場を席巻し、ヘッジマネーは世界を行きかう。その一方、「グローバル政府」なるものは未だに存在しない。「グローバル市民社会」の影響力も未熟である。
 そんな中でも、各国ごとにできることはある。それが「国際連帯税」である。
 フランスは「航空連帯税」をいち早く導入した。飛行機はボーダーレスな乗り物である。資源もグローバルに消費する。しかも金持ちしか使えない(付加価値)。このような観点から、ファーストクラスに六千円、ビジネスクラスで二千円、エコノミークラス五百円の税金をかけた。
 そして、そこで得られた税収を、ODAに組み込んだ上で、国連ミレミアム開発目標の貧困削減(UNITAIDという団体を通じて、エイズや結核、マラリアのための薬代)へと使われるというのである。
 すでにフランス、ブラジル、ノルウェー、チリ、イギリスなどが主導しているが、全体の枠組みである「開発資金のための連帯税に関するリーディング・グループ」には、すでに38カ国以上が参加を表明している。ただし、アメリカやカナダ、日本(2月に超党派が結成)は無反応だったとのこと。
 また、もうひとつ大きなグローバルタックスとして期待されているものがある。
 「通貨取引税」である。
 通貨取引税といえば、トービン税が有名であるが、なにやら改良トービン税なるものが出てきているらしい。僕も詳しくよく分からないので超簡単にいえば、たとえば、「円」に関する為替取引のすべてに超低率(0.00001%とか)の税をかける。そして、為替の変動がある一定の水準(異常)を超える場合には80%とかの超高率の税をかけることにより、ヘッジファンドなどの投機を抑制することができるらしい。つまり、二段構えの仕組みなのである。
 このような「国際連帯税」による税収は、ODAに当てられる。貧困削減のための医療支援に充てられたり、人間の安全保障センター(まだない)の一部に加えられたりするらしい。
 いまだに消費税が上がらず、福祉制度の確立ができずにいる日本。それなのになぜ海外に、という声はあるかもしれない。それでも、と思う。これ以上ODAが減り続けるとしたら国際的義務を果たせまい。国際的秩序の維持は日本の平和にも寄与するし、グローバルに地球資源を使っている以上、グローバルな責任は生じる。そもそも、人権・民主主義を基礎にしているならば、僕らの内なる倫理がそれを無視できまい。日本は、国際連帯税に積極的にかかわっていくべきである。そして、内向きな政治を、僕たち市民は後押ししていくべきである。
 
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 千葉大の上村ゼミは、社会人、学生、誰でも参加できます。先生はとっても素敵。しかも、色んな人が来ていて、面白い。僕の「市民社会のハブであるべき大学」という理想像にぴったりと合致している、シヴィルな空間です。千葉近郊にお住いの方で興味があればぜひともご一緒に行きましょう。

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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国際連帯税@千葉大ゼミ への2件のフィードバック

  1. ちゃんす より:

    >改良トービン税
    初めて聞いたけど、これはすばらしーですね笑。
    ヘッジファンドなんて市場の不安定を煽って利益を上げてるようなもんだけに、儲けどきにそんな異常な高税率とかかけられたら、やっとられんわなw すごく気持ちよい税金だけど、こういう規制については逆風もすごそうw
    >現代のもっとも大きな政治的な問題は、どのようにしてグローバルな問題について対処していくか・規制をかけていくかという点に収斂されるといってよい。
    ほんとそう思うわ。「自由と規律」って言うと自制的で性善説的な感じがして、両立可能な感じがするけど、「自由と規制」となると、なんか性悪説的で、相容れないものが衝突しあってる感じでどこか寂しいです。

  2. ぐし より:

    ちゃんす氏
    たぶん激烈な逆風が吹くことでしょう。日本は特に内政、内政、内政っていう雰囲気が充満しているので(君が海外に行って福田さんになってからますます内向きな状態なんですよ)。けど、これからの世界の流れとしては、炭素税をはじめ環境税など、グローバルなレベルでの課税は増えていくと思われる。
    ちなみにこのグローバルタックスのリーデング加盟国はほとんどがフランスの旧植民地国であって、反アングロサクソン国なのですよ。つまり反米国。そして彼らが主導して先にルールを作っていくと。というわけで、日本も後追いにならないうちに、コミットしていくべきだと思うのであります。

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