国民投票の一週間前に、残留派内で亀裂が生じ、投票行動にも影響を与える可能性がある。英大手紙のGuardianやFTの記事で報じられている。
6月14日、英労働党は残留派が勝利すれば,EU移民を制限できるようにEUと交渉を行う用意があると言い始めた。移民問題で支持が増えないことに焦った労働党が投票直前になって移民の制限に舵を切り始めたのである。だが,これは「単一市場のアクセスは移動の自由の保障とセットであり、EU移民の制限は行わない」とするキャメロン首相の主張と真っ向から対立するものである。
キャメロン首相は、EU移民の制限措置を巡って昨年から再交渉を行ってきたが、EU側は「EU移民の制限を行うのであればEU単一市場へのアクセスは認めない」としてこれを突っぱねた。EU移民の制限を認めれば他国もドミノ倒しのように続く可能性があるので、EUにとって決して譲歩できないものである。実際、スイスはEU移民の制限を求めたがEUは反対している。参考記事。
労働党の要求は実現不可能なので、キャメロン首相が受け入れることはない(受け入れたら嘘つき野郎といわれるだろう)。一方で,労働党が求める移民制限の要求を明確に突っぱねれば、移民をコントロールできないと有権者に思われるとともに、労働党の一部の議員や党員からの失望を買うことになるだろう。キャメロン首相は八方ふさがりで、どっちに転んでも残留派への信頼は損なわれることになる。
ポピュリズムにポピュリズムで対抗すれば、有権者はうんざりするだけだ。労働党がこんな無責任かつ大衆迎合的な姿勢をみせ始めたのはナンセンスというほかない。