先月の10月21日、スウェーデンの大手紙(Svenska Dagbladet)は、スウェーデン人が思っているほどストックホルム市は環境先進都市ではないという趣旨の特集記事を書いた。特集記事は、主にロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)の報告書の内容に基づき、欧州都市と比較する形で問題点•改善するべき点を列挙している。私も知らない点があったので、紹介したい。
(1)廃棄物処理は不十分
リサイクルおよびコンポスト化のレベルはEU平均よりも低水準であるだけでなく、ゴミの分別(率)については国内の他のコミューン(市)の後塵を拝している。現在、ストックホルム市は、2018年までに食品廃棄物の半分を集めるという国家目標の達成に向け、食品廃棄物を含めた新しい処理方法を準備している。
(2)エネルギー消費の水準は高い
ストックホルム市における一人当たりのエネルギー消費は高い。寒い気候と高い生活水準が高いエネルギー消費に結びついている。エネルギーの効率化を進める余地は残されているが、過去20年では、ほとんどエネルギー消費を減らせていない。また、水の消費量も多い。ストックホルム市の家庭の平均水消費量は、その他の欧州都市よりも大幅に上回っている。
(3)自動車への依存度が高い
ストックホルム市には人口1000人当たり373台の自動車があり、同じ経済水準の英国のバーミンガム市を上回っている。また、ストックホルムの人々の車の使用回数および走行距離は大きいが、自転車やバス利用者の数が少ない。さらに、割り当てられている公共交通専用道路は、市内全体の2%に留まっており、欧州平均を下回っている。
(4)市内の公共交通での移動に時間がかかる
ストックホルム市内の公共交通での移動時間は、コペンハーゲン市よりも長くかかるため、環境負荷が高い上、経済の生産性に悪影響を及ぼしている。(追記;渋滞指標2013Q2によると、ストックホルム市の道路の混雑状況は昨年比で悪化しており、ラッシュ時の遅延時間は39分から48分に伸びている)。
(5)一人当たりのCO2排出は実態よりも多い
ストックホルム市は、1年間の一人当たりのCO2排出量は3.5トンで、欧州の中でも最も少ない都市の一つである。しかし、CO2排出量の原因となる大規模工場や施設は他の地域や他国に移しているため、こうした点を考慮すると、ストックホルム市のCO2排出量は15.68トンまで上昇する(※2004年のデータ)。スウェーデン全体の平均値よりも10%ほど上回っている。
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こうした批判的な記事が出てくるのは、やはりスウェーデン人が「自分たちが環境分野で世界をリードする」という気持ちを持っているからだろう。やや挑発的だが、きちんと最新の報告書や欧州各国との比較が数値で裏付けがされていて説得力もある。ジャーナリストからも未来を先導する社会を作るという気概が伝わってくる良い特集記事である。