先週からブリュッセルにいる。去年の12月にも環境党のイベントで来ているので、二回目。修士論文(欧州議会)の作成のための情報収集とインタビューが主な目的である。とはいいつつ、実際のところは、リフレッシュで外に出たかっただけだったりする。チケットも安かったので、せっかくだから行っちゃうかと。
今回は「カウチサーフィング」を通じて、ブリュッセルで泊めてくれる人を見つけたので、宿代が浮いた。カウチサーフィングは会員制のオンラインコミュニティーで、旅行者は現地で泊めてくれる人を探すことができる。会員のプロフィールの紹介、会員同士の評価•レビューが公開されているので、それを見て「旅行者」と「ホスト」は互いのマッチングを行なう。
私は、「10日間の滞在予定で、3日ずつくらいで泊めてくれる人を募集中」という申請をしていた。カウチサーフィングを使うのは初めてだったので(前に友達と一緒に使ったことはあるが)、私のレビューはもちろん空っぽだ。これではいきなり見つけるのは難しいと思っていたが、10日間泊めてくれるというベルギー人から連絡が来た。ルディーという50歳 台のおっちゃんで、アフリカのコンゴ生まれで、(個人)タクシードライバーをしているとある。会員からの評価を見ると、100件以上が記載されており、そのほとんどが好意的なものだった。
何より、タクシーの客にはドイツのシーメンスの重役が多いというのに、ベンツでもなく、アウディーでもなく、トヨタのレクサスを持っているというので親近感を覚えた。早速返事のメールをすると、「君が到着するときは仕事中なので空港に迎えにいけないが、勝手に家に入って休んでいて良い」という返事が来た。家の鍵は、マンションの向かい側にあるカフェに預けておくから、そこでもらうように」とのことだった。
ブリュッセルに到着して指示通りに家に向かった。アパートのある地区は、ブリュッセルでは決して評判の良い場所ではなかったが、彼の部屋はアパートの最上階だった。ドアを開けると、アフリカンな空間が広がっていた。ゾウの彫刻、昆虫の標本、ごっつくて重厚な家具—。部屋は整えられていて、キッチンも清潔そのもの。また、外には30㎡くらいあるバルコニーがある。外に出ると、ブリュッセルの中心地の景色が広がっている。居心地の良い場所だ。
アフリカンな家具とアフリカンな装飾物
バルコニー(晴れているときにビールを飲む)
ルディーは、外がまだ明るい、夕方の18時30分くらいに帰ってきた。50歳台の太っちょのおじさん。やや黒みがかった白髪にメガネをかけている。フランス語のなまりが入った英語だが、明瞭で聞き取りやすい。冷蔵庫からビールを取り出して早速、勧めてくる。Chimayという瓶のビール。やや濃いめのブラウン色をしていて、苦みがなく美味しかった。
「ブリュッセルの天気には失望しただろう?」と、外の雨降りを指していう。さっきまで晴れていたと思ったら、もう雨が降り始めている。ブリュッセルがこんなに雨降りとは思わなかった。ちょうど今が雨期(レイニーシーズン)なのかと聞いてみると、笑いながらこう言う。「ブリュッセルでは一年を通じて天気予報はいらないんだ。だって、どんなに天気がよくても、いつでも雨になることは分かっているから」。
カウチサーフィングのレビュー欄には、「彼のホスピタリティーには感激した」というコメントが並んでいるが、それは本当だった。日本人もびっくりのおもてなしの精神である。無料で泊めてもらっているのに、毎日、夕食にはコンゴの代表的な料理、パプリカを使った特性スープ、パスタ、ラザニア、ドイツ風ソーセージなど多種多様なメニューでもてなしてくれる。本当に美味しいのだが、量も多い。全部食べないと申し訳ないので、満腹でも頑張って食べる。私と同じくカウチサーフィングで泊まっていたルーマニア人のマリオは図々しくも(あるいは遠慮して)あまり食べないので、結局、私が食べることになる。おそらくこの一週間で2キロくらい太ったと思う。
コンゴのカレーのような料理、コンゴで採れたほうれん草のようなものにパームを使ったカレー粉のようなものと「ピリピリ」というスパイスを混ぜる。
パプリカのスープ
ルディーとマリオ
==================================
ルディーは去年からカウチサーフィングをスタートし、これまで150人ほどを泊めているという。彼はこれまで泊まった参加者のリストを、月ごとに写真付きでまとめている。国籍と住んでいる地域、性別(ゲイ)などの情報も書き込んでいる。リピーターも多いようで、同じ名前の人が何度も泊まっている。今は、私の写真を貼付けている。私は初めての日本人だったようだ。これまで泊まった人達の色んな話をしてくれる。世界には変な人達がたくさんいるというのよく分かる。しかも、国籍や地域で差が出てくるからそれもまた面白い。
明日にはメキシコ人の4人グループがやってくるという。「明日はパーティーだ」といってルディーは夕食のメニューを考えている。彼にとって、カウチサーフィングは世界との接点であり、最高の暇つぶしなのだろう。私も将来的にはこういう生活をしたいと思う。