スウェーデンの良いところは何かと考えたとき、真っ先に思い浮かぶのが、スウェーデン流のカフェの存在である。インテリアや家具が概して「カワイイ」ということはもちろんあるが、それだけではない。私があえてスウェーデンのカフェの魅力を力説をするのは、この国のカフェには一定のスタイルが確立されており、それが分ちがたくスウェーデン人のアイデンティティーと絡み合っている、そしてそれが分かりやすい形で現代でも残っている(と考えられる)からである。
日本における「茶」の様式が、「和」という概念とともに、独自の世界観を作り上げてきたように、スウェーデンでも、ある一定のカフェスタイルが生まれてきた。主に「極寒の冬」における「室内文化の発展」と、戦争の被害を受けていないという点での「歴史や伝統の継続性」。これらの二つの要素が、スウェーデンのカフェスタイルを形成してきた。
カフェの特徴は何かというと、プレモダンである。具体的には、「昔ながらの木製の家」「アンティークの大きな家具」「小奇麗な壁紙と絵画」「重みのあるカーテン」ーーつまり、バロック的な重厚な家具とロココ的なミニチュア様式の組み合わせ、そして、それらを対立させることになく包み込む「スウェーデン流の木製の家の佇まい」である。これによって、スウェーデン独特の歴史と伝統に根ざした室内空間を作り出しているといえる。
そもそも、ヨーロッパといっても、北ヨーロッパと大陸ヨーロッパでは、文化の成り立ちが大きく異なる。チェコ人の有名な文筆家のカレル=チャペックは、イギリスに旅行したときに書いた「イギリス便り」という本のなかで、次のようなことを述べている。
南ヨーロッパとは、「屋外」の文化である。そこに住む人々が広場やストリートに集まり、一緒に音楽を奏でたり、歌を口ずさんだりすることで、「屋外」における文化が形成された。その一方、北欧では、「室内文化」が発展した。厳しい冬を過ごすために、人々は室内の装飾に工夫を凝らし、カードゲームやボードゲ−ムに夢中になったー。いくぶんシンプル過ぎる分類ではあるが、北欧と南欧の違いの重要なポイントを言い当てていると思う。
また、私の印象であるが、日本で「北欧流のカフェ」という場合には、スウェーデン的なものよりも、フィンランド的なものがそのほとんどを占めている。それはシンプルな白色を基調にした、スタイリッシュでモダンな家具様式のことである。もちろん、スウェーデンにも、そのような現代的なスタイルのカフェはたくさんあるが、スウェーデン人にとっての伝統的なカフェといえば、上で述べたようなプレモダンなスタイルのことをいう。
というわけで、スウェーデンカフェを体験したい人はスウェーデンに来てください。
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メタ情報
冬の厳しいアメリカ中西部でも以前はコーヒーショップは薄暗くてどちらかというと濃厚な雰囲気のローカルカフェが主流だったと聞きました。しかし、冬のあまりない西海岸から明るい雰囲気のシアトル・スタイルの「スターバックス」などが1980年ごろから中西部にもはやりだしアメリカ全体のコーヒーショップを変えたそうです。アメリカは西海岸や東海岸で(中西部ではなく)何かがはやりだすと中西部や南部にもすぐ飛び火するようです。やっぱり同じ気にで同じ言語をしゃべるわけですから当たり前だと思います。ちなみに中西部の定年退職した老後の人たちは冬が暖かいフロリダやカリフォルニアに移る人が多いです。同じ国に北海道網走よりも寒いミネソタがある一年中夏のようなルイジアナが同じ国(ハワイとアラスカを除いても)にあるのは日本やスウェーデンともアメリカが違うところです。でも、だから国内旅行がアメリカでは楽しいのかな(私はおぐしさんと同じように貧乏学生なのであまり旅行はしませんが 笑)。カフェのイシューからサイドトタックしてすみません。
マインズさん
アメリカは大きいですから、場所によって時差も異なり、文化も違ってくるので、国内旅行で「旅行気分」を味わえるのでしょう。
なるほど、アメリカでもローカルカフェがあったんですね。私のなかでアメリカでカフェ文化の印象はありませんでしたが。お隣の家に行くのに車を使うという私の中西部のイメージがありました。
ちなみにスウェーデンにはスタバがありません(いわゆるスタバやドトール、タリーズなどのチェーン店も少なくローカルなカフェが多いです)。