ホームレスになってみよう①

 後18時、新宿駅の西口から都庁への地下道。仕事帰りのサラリーマンやOLたちが新宿駅に向かって足早に通り過ぎていく。僕は、寝袋を詰めたリュックサックを背負い、その人の流れに逆らうように突き進む。目的地は新宿中央公園。そこには今も多数のホームレスたちが生活している。自分から希望してなる人はいないと云われるホームレス。だが本当にそうだろうか。実は、その生活自体が楽しく愉快だと肯定的にホームレスをしている人はいないのだろうか―。そんな疑問をはらすため実際に自分でホームレスをやって検証してみることにした。
 
       
      (地下道を不法に占拠されないために、凹凸のブロックが敷き詰めてある。)
 この日の天気は、携帯の予報によれば、晴れのち曇り(一時雨)。暗くなり始めた空はどんよりしている。今にも雨が降りそうでこわい。「もし雨が降ったら傘とレインコートとダンボールで防げるのか。風邪を引かないか」 これらの不安がずっと頭について離れない。
 正面の『新宿ナイアガラの滝』という名所(?)の左側から公園に侵入する。見渡すと、右端のほうにホームレスの寝床の象徴であるブルーシートが三つほど並んでいるのを発見。僕は、公園をひと通り回った上で、どこに寝床を設定するか考えることに決めた。
 新宿公園は、それほど広くない。日比谷公園と同じくらいかと思ったが、それより一回りも二回りも小さい。だが、むしろそれゆえだろうか、妙に秩序立っていて整然としているように見える。芝生にはすべて立ち入り禁止のガードが張り巡らされ、歩道にはゴミがまったく見当たらない。しかも警備の人達が常に巡回している。正直、予想外、イメージしていたのと違っていた。これでは寝床を作れるような地味なスペースがないではないか。そう思っているとき、ついに右の奥ほどに大量のブルーシートの郡が姿を現した。立ち入り禁止と記してある看板の内側に、10個前後、ブルーシートで作られたテントが窮屈に並んでいる。「おお、これだこれを探していたんだよ!!」この目の前に寝床を設定した。
 次はダンボールとブルーシートの調達。「すいません、ダンボール、あるだけください!」 早速、近くのコンビニに突入して尋ねる。応対した店員さんに怪訝な顔をされながらも、これを繰り返すこと3回、僕は7つのダンボールを入手することに成功した。さらに近くの専門店でブルーシートを二畳分600円で購入。これですべての用意はそろった。準備完了である。
 先の場所に戻り、ダンボールを潰して地面に広げた。2畳ほどのダンボールの上にブルーシートを敷いて、傘を2つ、風避けとして横に広げて置いて、さあ、完成だ。この時、時刻19時半―。
 寝床にドテンと寝転がり薄い照明の下で本を読んでいたら、突然、隣にホームレスのおじさんが大荷物を背負いやって来た。ブルーシートに包まれ置いてあった荷物から推察するに、おそらくここが彼のテリトリーだったのだろう。僕の存在にはまったく気に掛けることなく、プイと背中を向け、シートと傘を広げて寝転がってしまった。「おいこら、隣にニューカマーが入ったんだから挨拶くらいしろよ」、と文句をごちたくなったが、万が一、怒らせてしまったらそれはそれで困るのであえなく断念する…。そうして、じりじりしているうちに、ついに雨がぽつりぽつり降ってきてしまった。
 雨を感知すると、そのおじさんは颯爽と立ち上がり、荷物を持ってどこかへ消えてしまった。だが、それを気にしている場合ではなかった。この寝床を雨用に改良しなければならない。二つの傘と余っていた原型のダンボール2つの上にブルーシートを乗せて、その間に体を滑り込ませた。これによって何とか上手くシートによって雨を防ぐことができた(?)。そうして僕は寝袋に包まって安らかな眠りに着いた。
            
 
 …ん、寒い。足が寒いぞ。なんで?どうして?WHY?「あ、俺、外で寝ていたんだ」。僕は目を覚ました。時刻は午前2時過ぎ。雨は止んでいるようだ。だが、とにかく、寒い。ぶるぶるぶるぶる。震えが止まらない。靴下は二枚重ねて履いている。でも足が寒い寒すぎる。いやむしろ体全体が冷たい、気がする。やばいなやばいな。どうしよう。…さあ、逃げるかおぐし耐えるかおぐし。ここで逃げたらホームレスの人の気持ちになることはできないぞ。いいのか、それでいいのか。いやそれはだめだ。やっぱり頑張ろう。…いやでも寒い。本当に寒い。もうホームレスの気持ちなんてどうでもいいじゃないか。体の方が大事だ。そうだ、ホームレスなんてどうでもいい!!いやでも……このような問いかけがおぐし内で延々2時間続いた。
 そして午前4時、僕はモスバーガーに逃げ込んでいた。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: 体験ツアー報告 パーマリンク

ホームレスになってみよう① への9件のフィードバック

  1. たっと より:

    ニューカマーから挨拶しなきゃいけない気が笑

  2. 植田啓生 より:

    「よのなか科」の影響ですね。
    さすが社会派おぐし先輩・・・
    続きが楽しみです。

  3. タカムラ より:

    こないだはども。
    一瞬、2丁目の新宿公園の方かと思いました。

  4. だにえる より:

    今日、都庁の展望台に行くついでに新宿中央公園にも寄って来ました。まさか、あそこで君がホームレス体験をしていたとは。。。お疲れ様です。
    >新宿公園は、それほど広くない。日比谷公園と同じくらいかと思ったが、そ>れより一回りも二回りも小さい。だが、むしろそれゆえだろうか、妙に秩序>立っていて整然としているように見える。芝生にはすべて立ち入り禁止のガ>ードが張り巡らされ、歩道にはゴミがまったく見当たらない。
    前に何回か見たことあるんだけど、新宿中央公園のホームレスの人達って、たまにNPO(?)の人達と一緒に公園の清掃活動をしてるみたいだよ。公園内が意外と綺麗なのは、多分そのおかげじゃないかな。

  5. だにえる より:

    ↑ごめん、記事中の文章の引用に失敗しちゃいました(>_<)。

  6. えふたか より:

    本当にやりやがった!
    てか、なりきるならやっぱり食料調達とかしない~。
    お金持ってるからモスバーガーとか行っちゃうんだってww
    しかし、その寝床の写真は秀逸だなww
    是非、もう一度チャレンジしてみてくれ。
    面白ければ、雑誌掲載、考えてみるww

  7. おぐし より:

    ○たっと氏
     コメントありがとぉ☆
    >ニューカマーから挨拶しなきゃいけない気が笑
     おっしゃる通り(笑)。こっちも挨拶をしようしようと思っていたんだけど、中々タイミングが掴めなくて機を逸してしまったんです(><)。それに彼があっち向いてずっとプイっとしているから、ついつい表現上(笑)。
    ○植田氏
     いやーよのなか科は偉大ですよ。中学生時代にあの授業を聞いていたら、今頃は僕はホームレスになっていたでしょう(笑)。…いやそれはないか、さすがに。まあでも、偉大な人や機会やチャンスはそれこそ腐るほど回りにあるわけで、それをどう自分が受容するかも大切だなと痛感しちゃいますよ。僕は勝手にこの事を『受動的能動性』と言っているけど、僕の大学時代に学んだ大切なものの一つですね。
    ○タカムラ氏
     あ、この間はどうも(笑)。
     新宿二丁目のある種のバーで是非こんど働いてみたいですね。一緒にいかがですか(笑)
    ○だにえるさん
     お久しぶりです。またコメントを下さり、ありがとうございます。
    >前に何回か見たことあるんだけど、新宿中央公園のホームレスの人達って、たまにNPO(?)の人達と一緒に公園の清掃活動をしてるみたいだよ。公園内が意外と綺麗なのは、多分そのおかげじゃないかな。
     そうなんですよ。昔は週に三回、朝からホームレスの人達とNPOの人が組んで掃除していたそうなんですよ。ただ今は、その組織が無くなってしまったそうで、どうなったのかわからないですね。まだ有志で続けているのかもしれないですね(それらしき人たちを見かけました)。
     都庁の展望台って行ったことがないです。今度、ホームレスするときに行ってみます(笑)。
    ○えふたか氏
    >てか、なりきるならやっぱり食料調達とかしない~。
     これは確かに~でも風邪は引きたくなかった(笑)。個人的にはこの①の体験はちょっとあまりにもショボイから記事にはできないなと思っていたところ。②のホームレスの声やテント潜入を混ぜるならある程度、面白くなるかなと思うけど、自分で作って勝手に寝てってだけじゃさすがにツマラナ過ぎるな。
     もし掲載するなら、おそらく食料の調達をやってみたり(コンビニでくださいって言ったり)、もっと本格的なブルーシートのテントを作ったりすれば(都庁から怒られそうだけど)面白いなと思う。
      

  8. タカムラ より:

    >新宿二丁目のある種のバーで是非こんど働いてみたいですね
    僕は無理ですな
    丁重にお断りさせていただきます(笑)
    ちなみに2丁目で学んだことがあるんですが、
    女装する人はみんな男の人が好きかと思っていたのですが
    女装はするけど女性が好きという人もいるらしいです。

  9. ぐしけん より:

    ○タカムラ氏
     二丁目で学んだことがある?? もしかして経験者とか……(ニヤニヤ)。
     てか女装はするけど女好きって、女性が油断して心を開いているときに、こっそりと…ってやつですよね。むっちゃ陰湿じゃないですか!! 
     もちろん、働くとしたら僕もその役回りを希望しますが(笑)

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