近況と進路報告

 の今後の進路について書いていなかったので報告します。ウプサラ大学大学院の修士課程は今年の夏で卒業する予定でしたが、来年の1月まで延長することにしました。ようやくスウェーデン語が分かるようになってきたのでもう少し勉強したいということ、またヨーロッパで仕事やインターンを見つけたいという理由からです(ウプサラ大学は修士論文を提出しなければ学生ビザの延長が可能です)。

 現在、秋の欧州議会のインターンシップ(10月スタート)に応募していて結果を待っています。欧州委員会(及び欧州委員会、閣僚理事会)への正式なインターンはWEBサイトを通じて行ないます。どの分野のどの部署で働きたいかという希望を三つ出します。私の場合、「漁業政策」「農業政策」「図書管理室」にしました。前者二つは、私の修士論文のテーマに関わるという理由で、後者はインターンで入りやすいということを聞いたからです。
 
 先日、欧州議会で働いている知り合いに、こっそり選考の途中経過を教えてもらったところ、「地域政策(Structural and Cohesive Policy)」の補欠リストの一番上に名前が載っているということでした(なぜ地域政策になっているのかわかりませんが)。つまり、もしも候補者がインターンを辞退すれば、私に回ってきます。ただ、このインターンは人気がありかつ有給なので、その可能性は高くはないでしょう。もしダメだった場合は、すぐに他にインターンを探すか、ウプサラ大学のスウェーデン語のコースに入れてもらうかなど考えています。
 
 本当は欧州議会でインターンできるのが、次の仕事を見つける上でも一番良いのですが、なかなか上手くは行かないですね。夏休みの間は、アルバイトを探しながら、スウェーデン語を自学自習しています(スウェーデンではサマージョブの募集の多くが冬から春にかけて行なわれているので、今の時期だとほとんど見つからないですね。日本がいかに仕事を見つけやすいのかを実感しています)。ウプサラは8月になるまでは学生も少なく静かな町です。大学図書館は朝9時から19時まで空いているので、そこで地道に勉強する予定です。

カテゴリー: 自分事, 告知 | コメントを残す

ゴットランドの政治祭②

 ットランドの「政治週間(アルメダーレン)」が終わった。現役の首相や大臣などの政治家だけでなく、官僚、政党メンバー、学者、NGOや市民団体、PR会社の関係者が小さな島に集まり、総勢で1万5千人を超える人達が一週間丸々「政治漬け」になる。よくよく考えてみると、こんなイベントはスウェーデンにしかないかもしれない。アルメダーレンの政治週間は世界の国々からも注目されており、デンマークやノルウェーでも同様の試みが始まっている(ノルウェーのUtoya島での銃撃事件!)。

            Gotland
 
 また、お隣の韓国は2007年から視察団を派遣しており、今年は150人以上の韓国人がゴットランドにやってきたらしい。ゴットランドのアルメダーレンをモデルにして、済州島で同様の「政治イベント」を開催できないかと検討しているようだ。政治学者のYonhyok Choe氏は「受け入れ側の自治体が政党と上手く協力できれば十分に可能である。あと一、二年後には現実になっているかもしれない」と大手紙SVDにコメントしている。

 =======================================
 
       Almedalen2

         町中にセミナーの会場やブースが設置されている。
 
        Europahuset  

         ここは主にEUに関するセミナーを開いている場所。

       MSE

 これはMSCという漁業/水産物の認証団体とマクドナルドの取り組みに関するセミナー。MSCは、漁獲管理や海洋環境の保全に取り組んでいる漁業者と流通•小売り業者に認証ラベルを与えている。
     
        Nick%20Davies

 これはSveriges Radioという公共ラジオの主催の「未来のジャーナリズム」に関するセミナー。Nick Daviesというイギリス人で名の知られている名物記者が招かれた。ここでの話は面白かったのでまた日を改めてまとめたいと思う。

         Discussion on Nuclear Power

 反核兵器/原発の団体の主催による「フクシマ後のスウェーデンの原発」というセミナー。司会は環境党のアッコ•カールソン、ゲストは元エネルギー庁長官のトーマス•コーベルグと、「Nuclear Power? Yes Please」という原発推進団体の代表のミカエル•カーネフォーシュ。
 
 主にフクシマの現状と健康被害に関する科学的な知見についてのディスカッション。原発の健康被害については、今ははっきりとしたことが分からない、ということで落ち着いたが、原発を推進/廃止するかどうかという点では、原発推進団体の代表は、石炭の危険性と原発の優位性を強調、トーマスは「市場に任せるべきだ」と言いながらも「これから再生可能エネルギーは安くなる」と言い返した。ただ、時間があまりなく議論が深まることなく尻切れトンボに終わってしまった。こういうファクトに基づいた討論は見ていて面白いので、またやってほしい。

        %E7%92%B0%E5%A2%83%E5%85%9A%E5%85%9A%E9%A6%96%E3%81%AE%E6%BC%94%E8%AA%AC

             環境党の党首の演説(二日目)

        %E7%92%B0%E5%A2%83%E5%85%9A%E5%AD%A6%E7%94%9F%E9%83%A8%E3%81%AE%E3%83%92%E3%82%9A%E3%82%AF%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

          環境党学生部の党員とのピクニック(夜10時)。夕日の美しさが目に染みる。

カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(政治・社会), 政治参加・投票率・若者政策 | タグ: | コメントを残す

ゴットランドの政治祭①

  週の土曜日からゴッドランド島のビスビィーという町に来ている。毎年7月1日から一週間、ここで政治週間というイベントが開かれており、環境党の学生部の人達と一緒に参加しているからだ。首相や大臣を含めた政治家、政党はもちろんのこと、メディアやシンクタンク、経済団体、労働組合、NGOや市民団体などが参加し、朝から晩まで島の至る所でカンファレンスやセミナーが開催されている。
  この 「政治祭」には、今年は1800を超えるセミナーやイベントが開催されており、去年の数字では一万4千人くらいが参加している。それぞれのイベントは1時間から2時間で、昨日だけで444ものイベントがあり、どこに行くかかを決めるだけで一苦労だ。日本のコミックマーケットに近い感覚かもしれない。大きい団体になると、ブレックファストからランチ、夜にはワインを出してくれるところもある。
   また、この一週間は、夜の19時(まだ外は明るい!)から、8つの政党の党首が日替わりでスピーチを行なう。テレビは生放送で放映し、ジャーナリストや専門家が党首の演説の内容やレトリックなどを分析して評価する。初日は極右党党首、二日目は環境党の党首(女性の方)、三日目は穏健党の党首(首相)が演説を行った。
  新聞を見る限り、極右党首の党首はレトリックはうまかったが、政策内容と予算の整合性がまるでかみ合っていないと酷評され、環境党の党首は演説の途中で気候変動問題の専門家をゲストに呼んで解説させるなどの試みがポジティブに受け入れられていたように思えるが、演説自体は「新しく買うよりも修理して使おう」というフレーズがださく、古い環境党のイメージを惹起させると辛口の評価だった(私的には、環境党の目指すビジョンを示し、未来思考で希望を感じさせるものだったし、かつ右派政権の弱点をレトリックを使い効果的につき、上手くやったように思えたのだが。ただ、原発のことに一切触れなかったことは残念だった)。
  首相の演説は、市井の人々の話を具体的に紹介し、具体的な対処法を示すという説得力と安定感のある、ただ何かものたりないという印象を受けた。私には「仕事、雇用(jobjob)」という現実的な話ばかりで、目指すべきビジョンに欠け、希望を感じさせない演説だった。とはいうものの、きちんと政策があり、自分の言葉で訴えかける。こういうきちんとした演説を聞くと、日本の演説って何なんだと思う。福沢諭吉は日本の政治家を見て呆れていることだろう。
 残りの5日間、他の党首の演説も楽しみだ。

カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(政治・社会), 政治参加・投票率・若者政策 | タグ: | コメントを残す

ウプサラの夏至祭

 本での滞在もあっという間に終わり、スウェーデンに帰ってきた。青空の、カラッとした空気のなか、まばゆい日光が降り注ぐ。町のあちこちの芝生には、人々が寝転がっている。今日は夏至祭で、国中がお休みになる。
 今回、日本に滞在中、たくさんの人達に会い、スウェーデンで学んできたことを話す機会があり、今後自分が日本で何ができるかを考える良いきっかけになった。Rightsという若者の政治参加を促す活動を行なっているNPOの勉強会に参加したり、One Voice Campaignというインターネットの選挙活動の解禁運動を行なっている原田さんにも現状を聞くことが出来た。「若者は政治に興味がないのではなくて、興味があっても参加する機会がないことが問題だ」。「今の仕組みが間違っていることは明らかであり、それをどう変えていけるかが課題である」。こういう問題意識を持っていて活動されている若い人達がいることはとても励みになる。
 日本でもっとアウトプットができるように、今のうちにインプットを増やさなければいけない。この夏休みの間は十分に時間があるので重厚な本を読み、スウェーデン語も本格的に勉強し、毎日ランニングをして、エネルギーを溜めようと思う。

カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(その他) | タグ: | コメントを残す

スウェーデンの民主主義と若者 勉強会のお知らせ

 週の日曜日(17日)に「スウェーデンの民主主義と若者〜環境党の事例より〜」というテーマで勉強会を行います。東京の市民ネットワークという地域政党の主催で、14時〜16時に新宿の生活者ネットワーク4階会議室。住所は、〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル4・5階です。参加料は(資料代)の300円です。
 今年の2月にリボーンのスウェーデンツアーに参加されていた、東京の市民ネットワークのメンバーである大嶽さんが、今回のイベントを企画してくれました。スウェーデンと日本の諸条件の違いなどを鑑みながら、日本で若者の政治や社会参加を促すにはどうすればいいのか、参加者の皆さんとアイディアを出し合えればと思っています。お時間のある方はぜひご参加ください。
 リボーンのホームページにも載せてもらいました。

カテゴリー: スウェーデン(政治・社会), 告知, 政治参加・投票率・若者政策 | コメントを残す

オーガニックコットンのボランティアツアー

 5月26-27日にリボーンのボランティアツアー(オーガニックコットンの栽培のお手伝い)で、福島のいわき市に行って来た。被災地の状況を実際に見てみたいと思っていたところ、ちょうどリボーンがツアーを組むということで参加させてもらった。本当は「天ぷらバス」(天ぷら油で走るエコバス)を使って行く予定だったが、突然のアクシデントで普通のバスに変更になった(残念!)。
 いわき市では、地元のNPOの人々が現在の被災地の状況の説明をしてくれた。メディアを通じて得る情報だけでなく、現地に行ってこそ気づかされることがたくさんあった。
 ーいわき市には、原発の20キロ圏内から避難してきている人達が何万人という規模で入り、仮設住宅で生活を送っている。それぞれの町の役場の機能がいわき市の中にある状態だ。
 ー住宅が圧倒的に不足している。急ピッチで仮設住宅や新規住宅が建設されているが、間に合っていない。病院の職員や学校職員を雇う際に住む場所を確保することも難しいくらい。
 ー原発避難民の方々には一人当たり10万円の支援金が出る。家族四人なら、40万円。強制移住ですべてを失った方々への支援はきめ細かく厚くするべきだが、何もしなくても生活はできるので何もする気にならず、労働意欲も湧かない。アルコールやメンタルケアが必要。
 ーそもそも働きたくても雇用がない、あるいは限られている。働ける人、働きたい人に向けた職業訓練や再教育の場が必要とされている。
 ーいわき市は4,11の地震の被害も大きかった。津波で家が壊れただけでなく、地震によって半壊や全壊、そして水や電気などの基本的なインフラも壊された。復旧が進んでいるが、地域によっては農地に使う水源も破壊されてしまったまま。農業もできない。
 ー農業を再開できても売れない。市場に出荷する分は厳密な安全基準を満たしているが、売れない。また、魚も売れない。太平洋の沖合のカツオは他の漁船も同じように取っているにもかかわらず、水揚げされた港が福島県というだけで、値段がつかないという。
 ー市役所も、市議会も機能不全。住民の意思もバラバラになりがちで、どのように意見集約したらいいのかわからない。
 ーまだ福島第一の第四原発の状況も不安定だ。
 =======================================
 こういう状況を前にすると、希望がないように見える。でも、僕らが会った地元の人々は前向きで自分たちで出来ることをやっていこうと立ち上がっている。彼らこそ希望である。
 例えば、このオーガニックコットンのプロジェクトを始めた、NPOザ•ピープルの吉田さん。とても声に張りのあるパワフルなお方。もともと吉田さんは、古着のリサイクル活動を地元密着で行なってきた。震災後は、雇用創出という目的の下、種からコットンを作り、製品としてブランド化させ、福島で流通させるようと決意。オーガニックコットンの服を扱う会社とタッグを組み、地元の人々だけでなく、都会のボランティアの人々を呼び込んでスタートした。
 
 また、老舗の旅館「古滝屋」の若旦那の里見喜生さんにも出会った。古滝屋は、江戸時代から300年以上続いている老舗旅館で、源泉掛け流しの天然温泉が有名。地震の影響でまだ休業中だが、夏にオープンできるように準備している。ボランティアグループは、ここに泊めてもらった。夜に参加者と里見さん始め、地元の方々と一緒に円卓を囲んで議論をした。
 里見さんは「原発は人の心を壊すものだった」という言葉が頭に残っている。お金をつぎ込むことで原発依存の体質を作り出し、まさに麻薬の依存者のように、それなしでは生きていけないような町になっていたと気づいた。地元で里見さんと一緒に活動している大澤さんも、「このままではダメだ」と思い、地域のNPO「ふうど」の活動に参加した。「福島の町は多かれ早かれ衰退の一途を辿っていた。今回の事故はあってはならないものだったが、これをきっかけに自分たちが生きるために何とかしないといけないと思うようになった」という。
 里見さんには、ふくしま•いわきを世界のエコの町として蘇らせたいという思いがある。現在も、老舗の古滝屋とは別に、利用者参加型の低料金のエコホテルを作ろうとしている。自然エネルギーなどを活用はもちろん、ライフスタイルの見直しを織り込んだようなホテルー。その他にも色んな新しいアイディアがどんどんと生まれてきている。
 こういう人達を見ると、島根県の海士町を思い出す。今や地域活性化のモデルのようなあの町にも、「これまでのやり方ではダメだ」「自分たちのことは自分たちで何とかしよう」と立ち上がった人達がいた。そんな人達に引かれて多くの人が協力を申し出てきた。外からも多くの人達が集まってきた。そして人材交流が広がり、新しいアイディアが生まれてきたー。
 福島のいわき市もそんな過渡期なのかもしれない。もしかしたら他の衰退していく市や町よりも面白いものが生まれてくるかもしれない。原爆の町のHIROSHIMAが平和都市として知られるようになったように、公害の町のMINAMATAが環境に優しい町として知られるようになったように、原発事故のFUKUSHIMAのイメージを払拭できるように変わってほしい。
 これからが本当の正念場であろう。私もできることで協力していきたい。

カテゴリー: 自分事, 体験ツアー報告 | コメントを残す

5月24日の勉強会@日吉キャンパス

 5月22日から6月20日まで日本に一時帰国します。一ヶ月しか滞在しませんが、「緑の党のようなもの!」を立ち上げる活動に関わる予定です。
 5月24日(木)に慶應大学の日吉キャンパスの協生館3FのC3S02教室@19:00-21:00で勉強会をやります。私がウプサラで知り合った方が慶應のシステムデザイン研究科で研究員をしており、今回の勉強会をアレンジしてくれました。私はゲストスピーカーの一人として「スウェーデンの環境党の活動や若者参加」について話します。他にも交詢社(福澤諭吉が創った社交クラブ!)で地球環境研究会を立ち上げて活動をされている大森弘一郎さんがゲスト。
 もし留学生が多数参加する場合は英語で話す予定です(下手な英語でw)。若い理系系の研究者や留学生の方もいらっしゃるようなので面白いと思います。もし興味のある方がいたら大歓迎です。その際は私までメールしていただければと思います。
 ホームページでのお知らせ 

カテゴリー: EU, 自分事, 政治参加・投票率・若者政策 | 4件のコメント

ウプサラ大学の学生組合と政治

月、年に一度のウプサラ大学•学生組合(Student Union)の選挙が行なわれた。

学生組合は、ウプサラ大学の学生によって構成され、大学の教育環境や学生の福利厚生の向上に努めている。学生組合の選挙は、主に政党の学生部の立候補者によって争われ、各党の得票率によって議席が割り当てられる(比例代表制の仕組み)。

選挙の結果は下記のとおりである

 表:ウプサラ大学の学生組合の議席数

ウプサラ大学の学生組合

環境党は去年から2議席伸ばして7議席を獲得して、第二勢力となった。ひそかに環境党から立候補していた私は14票を獲得したが、あと2票足りず、補欠議員になった。その他の政党については、ウプサラ大学党(地域政党)が最多の11席、フェミニスト党が5議席、左党(共産党)が5議席、穏健党(保守党)は4議席、社会民主党は4議席、海賊党は3議席、中央党は2議席だった。

去年までは穏健党・ウプサラ大学党・中央党・海賊党が連立与党を組んでいたが、今年は環境党/社会民主党/海賊党/フェミニズム党が連立を組むこととなった。(ちなみに去年の学生組合の選挙では、海賊党は左派勢力と連立を組むと約束しておきながら、結局、右派に鞍替えした)。

学生組合の議会に参加したら、ちょうど組合の執行部のメンバーを決める所だった。

学生組合の代表には、海賊党の女性とウプサラ大学党の男性の二人が立候補をした。ウプサラ大学党に次ぐ最大勢力でありながら、環境党からは誰も立候補しなかった。海賊党を取り込むための妥協であるらしいが、環境党に適切な人材がいなかったというのが本当のところかもしれない。

その二人は、なぜ自分が代表にふさわしいかについて5分のスピーチをしたあと、会場からは30分に渡って様々な具体的な質問が浴びせられた。「組合代表として一番やりたいことは何か?」「組合員を増やすために何をするか?「政党中心の組織運営についてどう思うか?」「ウプサラの住宅不足にはどう対応するのか?」「薬学系の学生が議会には少ないが、どう思うか?」。

二人の立候補者は、答弁原稿を用意していたかのように、身振り手振りを交えて、流暢に回答する。二人ともまるで政治家のような振る舞い方であった。スウェーデンの大学組合が政治家養成の場として機能していたというが、それもうなづける。

======================

一方で、大学組合が果たしている役割に疑問の声が出てきている。

ウプサラ大学では学生組合への加入は義務とされていたが、2010年からは自由選択制となった。今年の学生組合の会員数は急激に減少し、全体の75%まで下がった。また、学生組合の選挙の投票率は10%に過ぎず去年は6%)、学生組合の代表者に正当性があるかといえば疑問符がつく。

なぜ学生組合への関心が低くなっているのか?

一つの理由は「学生組合に参加するメリットが見えないこと」。もう一つは「政党が自分たちの意見を上手く反映していないこと」がある。

今回の選挙では、右派の政党から「学生組合における政党政治の廃止」の提案が出された。現行の制度においては、政党ごとに選出された学生らが、それぞれの担当分野で細かい方針を作り、それを議会に諮る。だが、選ばれた学生の専攻科目が文系に隔たっており、理系の学生の中では自分達の利益になっていないという声が強い(実際、農学/生物学の学部は学生組合から脱退し、自分たちだけの組合を創設している)。

たしかに各専学科ごとに組合を作れば、メンバーの興味や関心に沿ったサービスが提供しやすくなる。同じ専攻を学んでいる学生ならば顔も見えやすいし、相談もしやすいだろう。その一方で、ウプサラ大学としての全体利益を見据えた運営が難しくなるという短所もある。ウプサラの学生組合は、学生の福利厚生に努めるだけでなく、ウプサラ大学の予算分配やスウェーデン全体の高等教育政策にも関わることができるため、全体的な観点から見ると、政党を中心とした組合運営が好ましい。

これまで政党はスウェーデンの社会で大きな役割を果たしてきた。市議会の政策委員会では選挙で選ばれていなくとも政党によって承認されれば委員会で活動することができる。日本の栽培員制度の下では「ランダムに選ばれた市民」が刑事裁判に参加するが、スウェーデンでは「政党によって選ばれたメンバー」が参加することになっている。ただ、政党に所属する会員数が減り続けており、政党の「正当性」も揺らいできている。ウプサラ大学の組合政治に対する不信の背景には、スウェーデン社会における政党政治の地盤沈下があると思われる。

今後、ウプサラの組合政治のあり方も変わらざるをえないだろう。

カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(政治・社会), 政治参加・投票率・若者政策 | タグ: | 2件のコメント

スウェーデンのジャーナリストは環境党が好き

 ウェーデンのジャーナリストを対象に「どの政党が一番好きか」という政党支持の調査が行なわれた(約五年ごとに行なわれている)。その結果はというと、環境党が42%の支持を受けて断トツの一位、次に左党(15%)、社会民主党と穏健党(保守党)(14%)が続いた。環境党は、前回の調査(2005年)の23%から19%も支持を伸ばし、大躍進となった。

 環境党が伸びた一番の理由として「社民党党首のスキャンダル」が上げられていた。この調査が行なわれたときは、ちょうど社民党の前党首であるホーカン=ユーホルト(Håkan Juholt)のスキャンダル(公費をアパート代に流用など)の真っ最中だった。このネガティブな出来事のせいで、いつもなら社民党に入る支持が、環境党へと流れたのだという。ただし、さすがにそれだけではないだろう。環境党の党首の魅力、党内民主主義の取り組み、取材のし易さ、政策の中道化(EU肯定、グリーンニューディール)なども背景にあると思われる。

 (ちなみに調査の方法は、ジャーナリスト組合に所属する人(17,300人)のうち、ランダムに抽出された2500人が対象。こちらを参照のこと(スウェーデン語))
 
 この調査から分かることは、1)ジャーナリスト(組合)は、一般世論を反映しておらず、2)ジャーナリストの性別や年齢によって、支持政党に差があり、3)ジャーナリストの所属先によって支持政党に差がある、ということ。

        Difference between journalist and public in terms of political preference

                  調査結果(%)

        Journalist Political Preference in Sweden

                過去の調査結果との比較(%)

 1)については、ジャーナリストは一般世論と比べて、左党と環境党への支持が高くなっている。特に環境党は、30%の乖離がある。また、穏健党は一般市民から34%の支持を受けているが、ジャーナリストからは14%に留まっており、その差は20%に上る。

 2)男女差については、女性はみどりを支持し、男性は保守党を好む傾向にある。女性のジャーナリストの環境党の支持率は47%だが、穏健党は12%となっている。男性の環境党への支持は37%に留まり、穏健党への支持は17%となっている。逆に、年齢差を見てみると、30-49代では、環境党への支持が48%に上るのに対し、20代では37%に留まっている(ただ、後者の若い世代は左党を支持している(18%))。

 また、3)公共放送や公共ラジオに所属するジャーナリストは、より環境党に対して好感を示しているが(約53%)、新聞メディアでは40%に留まっている。

  =====================================

 マスメディアは単に現実を映す「鏡」ではなく、現実を作り上げる装置でもある。

 一般世論の動向を動かすだけでなく、社会規範を形成する上でも大きな役割を果たしている。もしもジャーナリストの支配的な思想が市民の思想形成に影響を持つのであれば、一般市民の環境党や左党に対する支持がもっと多いはずだが、実際はそうなっていない。このことは、メディアが影響力を持っていないことを示しているのか、それともジャーナリストが自分の「色」を出さずに中立的に報道していることを意味しているのだろうか? 興味深いテーマである。 

 ただ、スウェーデンのメディアに対する不満はあるようだ。私が友人に対して、この結果を見せたところ、「スウェーデンの大手メディアが進歩主義的な左翼勢力に牛耳られていることがはっきりした」と怒りをぶちまけ、「ジャーナリズムの役割は事実を中立的かつ多角的に報道することなのに、スウェーデンのジャーナリストは、自分の理想に向けて市民を啓蒙することが自分の仕事だと思っている」と痛烈に批判の声を上げた。

カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(政治・社会) | タグ: | コメントを残す

EU/欧州議会④

リュッセルでの滞在中、スウェーデンのイサベラ=ロビーン欧州議員の秘書に頼んで、4月23日-24日に漁業委員会を聴講させてもらった。欧州議会はブリュッセルとストラスブルグの二カ所にあり、月に一週間〜二週間ずつ、二つの都市を行き来する。今回もストラスブルグでのセッションを終えた政治家が大挙をなしてブリュッセルに戻って来た(壮大なる税金の無駄使い!)。

さて、漁業委員会の議題は共通漁業政策の改革に関するもので多岐に渡った。その中でも焦点になっていたのは「船上でのフカヒレ漁(shark finning)の全面禁止」と「漁業権譲渡スキーム(Transferable Fishing Concession) 」。

フカヒレ漁は、船上でサメのヒレだけを切り取り、胴体を海に捨てる行為を指す。EUでは2003年から禁止されたが、いくつか例外規定があった(例えば、切り取られたヒレの重さが、サメの合計重量の5%以下であれば、ヒレと個体を別々の港でおろすことができる)。今回の法案では、サメの個体にヒレが付いたまま陸揚げされることを「例外なく」要求している。例外規定があると、その規定を上手くチョロマカそうとする漁業者が出てくるし、漁業者がルールを遵守しているかどうかチェックする必要が出てくる。だが、すべてをチェックすることは不可能であるし、チェックを強化しようとすれば余分なコストが掛かる。よって欧州委員会は、「フカヒレ漁の全面禁止」が最も効率的な方法と判断した。

だが、スペインやポルトガルの議員はこれに反対している。漁船の倉庫は限られているので、お金になるヒレだけをできるだけたくさん持って帰りたいのである。

これに関する議論は白熱して面白かった。ポルトガルの議員は「私が見たデータでは、サメの個体数は必ずしも減っていない。またヨシキリザメ(blue shark)などの特定のサメは繁殖力が高く成長が早いので取っても問題はない」という。これに対して、欧州委員会の担当者や他の議員らが「個体数が危機的に減っていることは、どの公式的なデータを見ても明らかだ。さらに調査が必要なことには同意するが、それにはコストがかかるし、すべての情報が手に入ることはありえない。予防原則に沿って行動することが大事だ」といって反論。

同法案は欧州議会では6月に漁業委員会で採決し、その後、9月に本会議で採決される予定。北欧諸国やイギリスはこれを支持するだろうし、南欧の国は反対するだろう。ドイツやフランスの議員がどのように投票するかがキーポイントとなりそうだ。

もう一つの焦点は「漁業権譲渡スキーム(Transferable Fishing Concession,TFC)」。これは乱獲を防ぐための施策として最も注目され、また論争の的になっている。TFCの眼目は、市場メカニズムを利用することで、きちんと管理能力がある漁船を生き残らせ、そうでない漁船を淘汰することにある。市場メカニズムを使うという点では、CO2排出権取引の漁業版ともいえる。まず、各加盟国が、既に決められているクオータを、過去の実績や伝統に配慮し、国内の漁船に割り振る(ex 沿海部の小規模漁船)。その際、全体の5%の漁業枠をオークションの枠として残す。これにより、オークションでの競争を通じて、管理能力のある漁船はさらに漁業枠を増やすことができる。

スペインやポルトガルの議員は「数ある選択肢の中で最も効果的で効率的な仕組み」としてTFCを擁護するが、フランスやスウェーデン、ドイツなどの議員は反対している。主な理由は以下のとおり。1)乱獲の問題の根っこは、きちんとしたクオータを設定することである。漁船の数を減らしたからといって、乱獲が減るとは限らない(漁船の数が減ったとしても漁船の稼働能力が高いため乱獲は続く)。2)EUのなかでもきちんと資源管理できている国とそうでない国がある。すべての加盟国が一律でTCFを導入する必要はない。3)自由競争で漁業権の購入を認めれば、スペインやポルトガルの大型漁船に小規模の地元の漁船が駆逐される。4)漁業権が投機の対象になる。

この日、会場は座れない人が出るほどの盛況振りだった。また、環境団体からの参加者も多かった。彼らは入り口で待ち構え、意見書を配布していた。手渡されたものは、別々の団体が統一戦線を組んで作成した共同文書で、その日の議題ごとに詳しい背景説明や政策提言が掲載されていた。そこには「Bird Life, Oceana, Greenpeace, Ocean2012, WWF」のロゴと担当者のサインが掲載されていた。こういう市民団体の圧力がどれほど政治家を動かすのかは分からないが、世界的に知られるNGOが統一キャンペーンを張ることの意義は少なくないだろう。

ちなみに、TCFの法案が欧州議会で採決されるのは上手くいけば9月の予定だ。

カテゴリー: EU, EU Environment | タグ: , | コメントを残す

EU/欧州議会③

の修士論文は、2009年のリスボン条約の発効により欧州議会の「共同手続き」の権限が「共通農業政策(CAP)」や「共通漁業政策(CFP)」にも拡大されたことを受け、欧州議会の政策決定に果たす役割に注目している。特に上記の二つの政策分野は、これまで閣僚理事会が政策決定の権限を独占し、主に加盟国の農業•漁業セクターのサイズや力関係によって政策が決められてきた。しかし、欧州議会が法案作成のプロセスに参加できるようになれば、従来の政策決定のプロセスに変化を及ぼす可能性がある。つまり、私が修士論文で書いているのは、リスボン条約によって与えられた欧州議会の新しい権限が、どのように議員の投票行動に影響を与えるのか、そして、実際にどのように政策を変えるのか、という点である。

一般的に欧州議会の議員は、各国の利益よりも欧州全体の利益を反映させるために行動し、特に環境保護の分野ではより強い規制を好むといわれる(これは欧州市民の選好を反映している)。実際、農業、漁業政策は産業的な側面だけでなく環境政策とも切っても切り離せないものになっていることを考えると、リスボン条約の発効により、これまで直接利害を持つ議員ばかりで構成されてきた農業/漁業委員会で、環境保護に重きを置く議員が増えることが予想される。特に漁業分野は、スペインやポルトガルなど国が大きな利権を有しているが、ドイツ、チェコ、ハンガリーにとってはそれほど重要なセクターではない。つまり、後者の加盟国の議員にとっては利権がそれほど大きくないだけに、欧州全体で魚資源の懸念が強くなれば、これまで「何となく」グループの方針に従ってきた議員が投票行動を変えるかもし

こうした変化を調べるにはどうすればいいのか? 欧州議員の投票行動を調べるにはロールコールを見れば良い。ロールコールは、電子記録された投票のこと。投票にはいくつか種類があり(手での投票)、すべての投票が記録されているわけではないが、ロールコールは全体の投票の30%ほどを占めている。ちなみに、リスボン条約の発効後は、すべての法案(ordinary legislative resolution)に対してロールコールが取られるようになった。

また、漁業委員会で環境志向の考え方が強くなったかどうかは、議員の投票記録だけでなく、委員会のメンバーを見ることでも調べられる(メンバーは2年半ごとに改変あり)。ただ、量的な分析だけでは十分な結果が出てこないので、インタビューなどの質的な分析をする必要がある。世論の変化や環境団体のロビーイングの戦略なども考慮することも必要だろう。

カテゴリー: EU, 評論・書評・感想 | タグ: | コメントを残す

EU/欧州議会 ②

EUがどのような政策決定プロセスの下で機能しているのか? ここをきちんと理解している人は日本にはあまりいないだろうし、EU内に住んでいる人でもよくわからないだろう。私も法制度については細かいところまで分かっているわけではないが、ここでは出来る限り簡単に説明したい。

大雑把に言うと、EUには政策決定プロセスに欠かせない三つの機関がある。それは「欧州委員会(European Commission)」、「閣僚理事会(Council of Ministers)」、そして「欧州議会(European Parliament)」である。欧州委員会は、いわゆる「内閣や政府(cabinet or government)」に当たる機関である。すべての政策の立案•作成機能を独占的に有し、基本的には欧州委員会しか法律案を提出することができない。まさにEUの司令塔的な存在といえる。

欧州委員会のトップは欧州委員長と呼ばれ、各加盟国と欧州議会の承認を経て選出される(現在は、バロッソ委員長)。また、欧州委員会の閣僚(コミッショナー)は、各加盟国から一人ずつ推薦され、外交、経済、環境、産業などのそれぞれの専門分野ごとに割り当てられる。欧州委員会の閣僚と官僚は、各国の利益のために働いてならず、あくまでも「ヨーロッパ全体の利益」に奉仕することが義務づけられている(実際は必ずしもそうではないらしいが)。

欧州委員会が草案を提出した後、閣僚理事会と欧州議会が精査を行なう。閣僚理事会は、加盟国の大臣によって構成され、各国の大臣は「国益」を背負って交渉に臨む。特定多数決方式での賛成(あるいは全会一致)が得られなければ法案が通らないので、時々、審議が止まる。そうなった場合、27カ国の代表(首相や大統領)の集まる「欧州理事会(European Council)」に委ねられる。欧州理事会はサミットと呼ばれる、実質、閣僚理事会の上位組織である。欧州理事会を束ねるのはファンロンポイ大統領であるが、実質的な力は何もない。例えば、現在の欧州危機では、ドイツ(とフランス)主導によるサミット会談が頻発に開かれており、欧州委員会や欧州議会などの機関をバイパスするように経済財政政策が決められている。

歴史的にみれば、EUの政策決定は、欧州委員会と閣僚理事会(あるいは欧州理事会のサミット会談)によって支配されてきた。しかし、20年くらいで、欧州議会が影響力を持ち始めてきた。当初、欧州委員会(と閣僚理事会)のトップダウンでEUの政策が決められ、欧州全体の市民の声が反映されていないという批判が高まってきたからだ(「民主主義の負債」)。民主主義は「人民による人民のための統治」(Rule by the people for the people)」と定義されるが、EUの場合は「エリートによる人民のための統治(Rule by the elite for the people」とよく揶揄され、今では「エリートによるエリートのための統治(Rule by the elite for the elite)とまで言われるまでに市民のEUに対する信頼は低下している。

つまり、欧州議会の権限が増大してきたのは、EUの市民によって選ばれた欧州議員を、欧州委員会のトップの承認や法案の決定過程に参加させることで、民主的な正当性(democratic legitimacy)を高めようという狙いがあったのである。

当初は、法案作成のプロセスには「参考意見を述べる(Consultation)」というだけの役割しか与えられていなかった欧州議会であるが、現在では予算の決定、条約締結を担うようになっている。また、法案作成に参加できる分野(ex 環境政策)も増え、欧州議会が閣僚理事会とともに「共同手続き(co-decision procedure)」の権限を持つようになっている。つまり、共同手続きが適用される分野では、閣僚理事会で合意に至った決定についても、欧州議会の反対によって拒否することが出来るのだ。しかも、2009年のリスボン条約の発効により、欧州議会の「共同手続き」の適用範囲が「共通農業政策」や「共通漁業政策」にも広げられた。

現在のEUの法案成立の過程(Ordinary legislative procedure)を細かくまとめると、まず、欧州委員会が法案を提出した後、(加盟国の国会が補完性の原則(subsidiary principle)に則り、精査を行なった後)、閣僚理事会と欧州議会の各委員会がそれぞれ精査を行なう(第一次ステージ)。もし両院で修正がなく、多数の賛成が得られれば、そのまま法案は可決。もし閣僚理事会が欧州議会の修正点を受け入れない場合、あるいは閣僚理事会が欧州委員会の法案に修正点を入れた場合、次の審査に持ち越しとなる(第二次ステージ)。

ここで欧州議会が何もしなければ法案は可決となるが、もしさらに修正点を加えた上、過半数の賛成を得られれば、再度、閣僚理事会へと持ち込まれる。ここで欧州委員会の意見を参考にし、閣僚理事会で投票が行なわれる。もし欧州委員会の修正点が受け入れられなければ、調停委員会(Conciliation committee)が設けられる(第三ステージ)。調停委員会では、欧州議会と閣僚理事会のメンバーと、欧州委員会のスタッフで、妥協を探る。ここでも最後には閣僚理事会と欧州議会の承認が必要となる。もし妥協に失敗すれば、法案は廃案となる。

法案の細かい手続きはこちらを参照のこと。またこのチャートを見れば、EUの政策決定プロセスがいかに複雑かが分かるだろう。

カテゴリー: EU | コメントを残す