EU共通漁業政策の改革案、欧州議会で投票!

 ついに明日(2月6日)、EUの共通漁業政策の修正案がストラスブルグの欧州議会で投票にかけられる。下のポスター(Link)は明日の投票に合わせて欧州議会の宣伝部(環境団体ではない!)が作成したものだが、「海にはいつでもたくさんの魚がいるって、それ本当?」というキャッチコピーをつけて「乱獲の事実」を並べている。本来中立的であるはずの欧州議会のPR部がここまでやるのだから、いかに乱獲が「事実」として認知されているかが分かるだろう。

Plenary Vote on the Common Fisheries Policy

12月下旬に漁業委員会を通過したときに修正案の中身について書いたが、もう一度確認したい。どこの欧州政党も「水産資源の持続的な利用」に原則的に賛成しているものの、それをどのように達成するかで意見が分かれている。さて結果はどうなるか?

ー共通漁業政策の修正案(欧州社民党)のハイライトー

1. 科学的に持続的とされるMSYに基づく漁獲枠の設定と遵守(政治の介入にNO)

  •  2015年までに魚資源が再生産できる水準(MSY)で漁獲量を設定する(2020年までにはMSYの水準以上で設定する)。
  •  保守党グループは、準備が必要として、期限を2020年にするように要求。

2. 船外投棄の禁止(Discard Ban)

  •  漁獲された魚を原則的にすべて漁港に持ち帰ることを義務化(例外として5%の投棄)。
  •  加盟国には、魚種を絞りながら投棄の禁止の対象を拡大することを義務化。
  •  保守党グルー プは、例外の割合を10%にするように要求。

3.個別式委譲(取引)可能漁獲枠(Individual Transferable Quota-ITQ)の導入に反対

  •  現在、EUの漁獲枠は加盟国ごとに分配。それを国内でどのように分配するかは加盟国に委ねられている。
  •  ITQは漁業枠(権利)を取引可能にすることで、非効率な漁業者は淘汰され、経済的にパフォーマンスの良い漁業者(や企業)が生き残る。また、ITQをEUの加盟国全体で行なえば、さらに漁業の生産性が上がる、とされる。
  •  しかし、EU全体でITQを導入すれば、(スペインなどの)大きな漁船が漁獲枠を増やし、小さな漁業者は淘汰される。また、大規模の漁船が資源管理を守り、効率的な漁業をするとは限らない。むしろ、乱獲が助長される可能性すらあり、認められない。
  •  むしろEU全体でやるよりも、加盟国ごとに個別に漁獲枠を設定し資源管理を強化するほうがより現実的である。
  •  保守党グループの多くもITQの導入に反対(ただし、スペインなどの漁業国の議員はITQの導入に賛成)

4.資源回復エリアあるいは海洋保護区(Stock Recovery Area/Maritime Protected Area)の設定

  •  加盟国にそれぞれの海域内で10%-20%の資源回復エリアの設定を義務化
  •  保守党グループは、数値目標の設定に反対(漁業委員会では否決)。

5.中長期的な漁獲枠の設定における欧州議会の権限拡大

  •  現在、漁獲枠の設定については閣僚理事会(上院)が政策決定を独占。
  •  欧州議会(下院)は「リスボン条約(2009)の締結後、漁獲枠の設定に関与できる権限がある」と主張。もし認めなければ、欧州司法裁判所に訴えるとして閣僚理事会を牽制。
  •  欧州議会の政党のほとんどが賛成している。
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ブリュッセルでのシューカツ

リュッセルのEUの機関には半年ごとに千人規模のインターン生が集まってくる(ex 欧州委員会に600人〜700人、欧州議会に100人、その他の付随機関に100人弱)。多くのインターン生(特に南欧諸国出身)はそのままブリュッセルで仕事を見つけようとするが、正規雇用はもちろん、インターンのポジションを見つけることも簡単ではない。インターンの期間が終わりに近づいてくると、同僚との会話は就職活動に関する話題が多くなる。現時点で運良く仕事を見つけた友達の中には、いわゆるロビーイング団体(業界団体、PR会社)で働く人が多い。EU機関で継続して働くためには年に一度のEPSAという統一試験(一次試験の通過は全体の5%)をクリアしないといけないので、インターンからそのまま正規雇用になるのは原則的に難しい。ただし、欧州議会には議員秘書や政党スタッフという枠があってこれらには特に規制はない。次への「つなぎ」のため、ここを狙うインターン生は少なくない。

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先週、欧州委員会で開催されたインターン生のためのジョブフェアーに参加した。朝から夕方まで企業や団体を招いての大きなイベント。人材派遣会社、コンサルタント、法律事務所、PR会社などの人事担当者がここで実際にCV(履歴書)などを見てアドバイスをくれる。また、同時に、別の会場では招かれたゲストがブリュッセルで仕事を見つけるための秘訣を披露する。

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              企業や人事のブース

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              講演会の様子

講演の目玉は、ブリュッセルで人脈作りの神(king of networker)といわれるフランク=シャルバ=ホフ(Frank Schalba-Hoth)。ドイツの緑の党を創設したカリスマ的な存在で、元欧州緑の党の議員としても知られる。最近ではブリュッセルで仕事を探す上で書かせない「電話帳」を出版、これは毎年更新されている。この業界では超有名人なのに、謙虚できさくで話しやすい。いわゆる日本でいう政治家というイメージからは対極の存在だ。欧州緑の党のドイツ緑の党の新年会にいったときに、日本人だというと、興味のありそうな人を見つけては紹介してくれた。新年会の会場に最後まで残って掃除や後片付けをしていた姿が記憶に残っている。

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ブリュッセルでの周りのシューカツを見ていると、シューカツは「バイト探し」の感覚に近いと感じる。だれも生涯に渡って一つの場所で働こうなんて微塵も思っていない。とにかく「つなぎ」として仕事を見つければ良いと思っている。ブリュッセルは、欧州エリートの集まる小さなコミュニティー、人材の入れ替わりが激しいだけに活気がある。ここで働いていればいわゆるエリート層との交流を楽しめるし、言語(主にフランス語)も学べる、自分が成長できる余地があると思うから低賃金でも気にならない。もちろん、この「バイト探し」がずっと続くと思うと、生活が安定しなくて神経がすり減りそうだが、30歳くらいまでなら楽しめそうな気がする。

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サバ戦争(Mackerel War)ーEU•ノルウェー vs アイスランド•フェロー諸島

 州議会の漁業委員会にアイルランド人のガラガーという議員がいる。母国のアイルランドでは閣僚経験を持ち、いつもジョークを飛ばす愛嬌と余裕のあるおじいちゃんだが、アイスランドのことになると、怒りのボルテージが急上昇、声を荒げて「アイスランドに対する(貿易)制裁を急げ」と訴える。最初はどうしてアイスランドに制裁をするのかよく分からなかった。アイスランドの銀行が破綻したことによる係争かとも思ったが、そんな経済金融の話は漁業委員会にはふさわしくない。よくよく聞いてみると、これはサバを巡る戦いであった(MACKEREL War)。

 「サバ戦争」は、サバの漁獲枠を巡って、「英国+アイルランド +ノルウェー」vs「アイスランド+フェロー諸島(デンマークの自治領)」の間で現在進行中の「外交問題」のことである。これまでスコットランドやノルウェーの沿岸を回遊していたサバが2000年台後半から北へと回遊し始めた。それに応じてそれまで漁獲量がほとんどなかったアイスランドおよびフェロー諸島がサバを穫り始めた。イギリスやアイルランドは「過去の漁獲量に応じて漁獲枠を決めるべきだ」としてアイスランドおよびフェロー諸島に漁獲枠を抑制するように呼びかけている。一方、後者の二カ国は「サバは回遊ルートを変えて排他的経済水域(EEZ)に入ってきている。サバの漁獲枠を下げるのはお前たちだ」と反論。過去3年間、両者は交渉を続けているが主張は平行線を辿っている。その結果、持続的とされる漁獲水準を超過、全体の漁獲量は大幅に増えている。

北大西洋サバの漁獲量(Northeast Atlantic Mackerel Catches 2002-2011)

北大西洋のサバの漁獲量と漁獲枠

出所:ICES advice 2013

 アイスランドのサバの漁獲量は2002年に53トンだったのが、2011年には16万トンまでに急増。フェロー諸島も2万トンから12万トンに増えている。全体に占める漁獲量の割合はそれぞれ17%、13%。しかし、これまでサバを利用してきたノルウェーやイギリス、アイルランドも同じくらいサバを穫り続けているため、持続的とされる漁獲枠の水準を大幅に超えている。2011年は全体で60万7千トンの漁獲枠が推奨されていたところ、90万4千トンの漁獲量が記録されている。

 なぜサバの回遊ルートが北に移動しているのかについては、気候変動による海面気温の上昇が影響しているとか、一部ではサバの資源量自体が増えているという見方もあるが、正確なことは分かっていない。ただ、このまま毎年のように漁獲量が増えていけば、資源量の減少は避けられないといわれている。解決への道は、きちんとした漁獲枠の設定と分配ができるかどうかに掛かっている。

 2013年、EU+ノルウェーはサバの科学的に設定された漁獲枠の90%を自分たちの取り分として割り当てている。これをそのまま飲み込めば、アイスランド、フェロー諸島はそれぞれ5%以下しか取れないことになる。アイスランドとフェロー諸島はこれを無視してそれぞれ1525%ほどの漁獲枠を設定するといっている(追記;アイスランドは漁獲枠を減らすと発表したが、それでも1223%を超える模様)。

 アイスランドはGDPの9%を漁業セクターに依存している漁業国で、2008年の経済危機(国家破綻)の後に復活を遂げた要因には、サバの漁獲量の増加による輸出増が指摘されているほどだ。経済的にも心情的にも重要なセクターであるので簡単には折れないだろう。そもそもサバはアイスランドやフェロー諸島の排他的経済水域に入ってきている。この現実を無視し、過去の漁獲量に沿って漁獲枠を決めようとするのはやや理不尽にもみえる。もちろん、イギリスやノルウェーの主張にも一理ある。アイスランドは人口が32万人、フェロー諸島は5万人しかいないのに、イギリス•ノルウェーと同じ漁獲枠を要求するのは納得がいかないだろう。

 ノルウェーは二カ国の漁船のサバの水揚げの一部を拒否しているが、EUはこうした措置を取るまでには至っていない。2012年の9月に欧州議会(下院)と閣僚理事会(上院)でアイスランドとフェロー諸島に対する制裁案(主に水揚げ禁止/サバの輸入禁止など)を承認したものの、まだ実際に発動されていない。執行機関の欧州委員会(行政部)は、制裁の発動には慎重。水産物の輸入禁止の措置が二カ国に大きなダメージを与えることは確かだが、これまでサバの水揚げを受け入れてきたスコットランドやアイルランドの漁港や加工業者にとっても損失となる。また、アイスランドがEU加盟の手続きをしているときに、EUの設定した漁獲枠に賛成しないからと制裁をすれば、アイスランド人のEUに対する感情は(さらに)悪化するだろう。今、まさに外交の駆け引きが行なわれている。これから欧州委員会がどう対応するか注目だ!

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ニホンウナギの現状(Current State of Japanese Eel)

の投稿で、ヨーロッパウナギの資源管理が上手くいっていないと書いたが、実はニホンウナギの資源状況はさらに深刻である。先日、欧州議会の漁業委員会の仕事で、ニホンウナギについての報告書をまとめる機会があった(日本の漁業についてのブリーフィングノートは5月くらいにオンラインでも公開されるはず!)。そこで使ったグラフをいくつか紹介したい。

  ニホンウナギの漁獲量の変遷(Japan’s catch volume of natural eel 1956-2011 (tonnes))

ニホンウナギの漁獲量

 シラスウナギ(仔魚)の漁獲量の変遷(Japan’s catch volume of glass eel 1950-2011 (tonnes))

 シラスウナギの漁獲量

  シラスウナギの輸入量(kg)と値段(kg)(Import volume and price of glass eel 2000-2012)

  シラスウナギの輸入量と値段(kg)

 (シラスウナギが1kgで180万円までになっている。輸出側にとっては金のなる魚だ)

今、ニホンウナギの資源量はほとんど瀬戸際(the end of the line)。これより下がったらすぐに絶滅危惧種に指定されるという最後の一線である(実際にヨーロッパウナギは絶滅危惧種になっている)。日本政府は去年の夏から(ようやく)ウナギ資源管理対策を打ち出したが、数値目標が具体的に設定されていない上、それを異なる都道府県の漁業者が守るかどうか疑問符が残る。また、ニホンウナギを穫っている(といわれる)中国や台湾とも資源管理計画の共有も欠かせない。例えば、鹿児島県だけ厳しい対策をしたとしても静岡県で捕獲を続けていたら公平でない&効果が薄くなるし、日本だけ頑張っても中国や台湾でたくさん穫っていたならば意味がない。

過去の漁獲に関するデータをできるだけ集める、そして数値目標を決めて実行する、EU加盟国のようにバラバラの規制にならないように、もし守らないところがあれば遠慮なく罰則/制裁を発動する。また、消費者もスーパーで売っているような安いウナギは絶対に買わないようにする、どうしても食べたいときは専門店のウナギを食べるようにしていくなどの必要があるだろう。もしあなたの友達がウナギを食べようといってきたら、代わりに南極海のミンククジラを食べようと提案しましょう笑。これからの日本の資源管理の取り組みに期待しながら、動向をウォッチしていきたい。

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ヨーロッパウナギの資源管理(Resource Management plan for European eel)

欧州議会の漁業委員会での審議の続きで、議題は「ヨーロッパウナギの資源管理」。

日本ではニホンウナギの激減が問題になっているが、 欧州でも同様の状況にある。ICES(主に欧州の魚の資源評価機関) によれば、ヨーロッパウナギの稚魚(シラスウナギ)の加入量(Recruitment)は1960-70年代の平均と比べて大西洋地域では95%、北海地域では99%の減少。2007年からはCITES(絶滅危惧種を扱う国際機関)の付属書Ⅱに記載されており、2009年からEU圏外の国への輸出は禁止さ れている。EUは2007年からウナギ資源管理を行なってきたが、これまでの途中経過をみながら今年中にその内容が更新される模様。

ご存知のようにウナ ギは謎の多い魚である。ヨーロッパウナギの場合、西大西洋のバミューダトライアング ルのサルガッソー海で産卵するといわれている。そこで生まれた仔魚は、透明なシラスウナギに変態(メタモルフォーゼ!)しながら大西洋を超えてヨーロッパに 向かう。そして各国の河を駆け上がりながら黄ウナギになり、大人の銀ウナギになる。そのあと、わざわざ何千キロと離れたサルガッソー海まで戻って産卵をして死ぬ(ただし、そのまま 生きるものもいるらしい)。

     ウナギの生活史
             (東京大学ホームページ

ヨーロッパウナギの 数が激減しているのは、大人の銀ウナギがきちん とサルガッソー海に戻れていないためだといわれている。ただ、なぜ激減しているのかについては諸説あり確実なことは分かっていない。漁業者による乱獲だけでなく、ダム の建設を含めた河口環境の変化、気候変動による海水の気温の変化などもあって、資源管理の対策を絞りにくい状況にある。欧州議会の漁業委員会で修正案を担 当する緑の党のイサベラロビーン議員は、シラスウナギの激減の一番の原因は乱獲にあるとして、モラトリアム(一時的な禁漁)を含めたより厳しい措置を穫る ことを求めている。漁業委員会の多くの議員はいますぐのモラトリアムの実施には反対している。

ただ、科学的な資源評価機関(ICES)の勧告内容ははっきりしている。ヨーロッパウナギの(漁獲やダム建設による)死亡率を限りなく0にするべきというものだ(2012年11月の資源評価と勧告)。

2007 年に欧州委員会が打ち出したウナギの資源管理案は、欧州委員会は、過去の銀ウナギの資源量(過去に銀ウナギが海に戻っていたとされる予想数)の少なくとも 40%が海にかえすことを目標として、加盟国に具体的な計画案の作成および実行、そして成果報告を義務づけている。しかし、成果は上がっていない。漁獲禁 止 (モラトリアム)を実施しているのは、アイルランドとノルウェーだけで、そもそもすべての国々がきちんと計画案を作っていない。2カ国は実施も報告すらしていない(が、罰則はなし)。

欧州委員会の担当者によれば、ウナギ激減の一番の原因は乱獲にあるだろう が、他の要因も無視できないという。フランスなどの加盟国では水力発電(特に小型)を大量に設置しているようだ。小型の水力発電は「地域分散」で「環境に優しい」エネルギーである。川を駆け上がっていくウナギの邪魔をせずにきちんと海に返すことが不可欠であるが、ウナギの保全をとるか、クリーンなエネルギーをとるかをとらわれれば、これ は再生可能エネルギーを促進する政党にとっても難しい政治的に問題である。

今の資源管理の対策をきちんと実行したとしても、 ヨーロッパウナギの資源が回復(?)するのは10年から60年かかるという。EUの5 年間の資源管理から教訓が得られるとすれば、それは、加盟国でバラバラにやるのではなく全体で実行性を持って取り組むこと、そして義務を遂行しない国に対してはきちんと罰則や制裁をしていくことだろう。これをやらなければ、ヨーロッパウナギの資源は回復しないだろう。ヨーロッパウナギの保全に失敗すれば、世界に一つだけの、欧州だけに生息する貴重なウナギの種を失うことになる。欧州統合の象徴としても、ヨーロッパウナギの保全に成功することを願っている。

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EU−モーリタニア漁業協定 (EU-Mauritania Fisheries Agreement)

週の欧州議会の漁業委員会で、EU-モーリタニアの漁業協定の再更新 についての検討が行なわれた(漁業協定とは、EUが補助金を与える代わりにEUの漁船にモーリタニアの海で漁業を認める取り決め)。近年、モーリタニアの漁民から、EU(や他国)の漁船が乱獲を行なっているとして不満の声が上がっていた。モーリタニアは好漁場で知られ、特に日本人が教えたタコ漁によってモーリタニアは大きな利益を上げている(国家収入のほぼ3割が漁業によるもの)。

ちなみに日本で消費されるタコの25%はモーリタニア産(2009)

Share of Octopus to Japan

 欧州委員会が提出したEU漁船の入漁条件を厳格化する草案に対して、欧州議会の漁業委員会では賛否が分かれている。新しい漁業協定は、これまでEUの漁船の入漁エリアが沿岸13マイルまでだったものを20マイルに制限する、船上スタッフの地元民の雇用割合を37%から60%に増やす、漁獲量の2%を無償で提供する、また漁獲や漁船を監視する仕組みの強化などが盛り込まれている。これまでEUの漁船による浮魚の漁獲量の56%が13~20マイルだったことから、新しい漁業協定はEUの漁業国にとって大きな痛手となる。

この日、資源専門家、EUの漁業組合の関係者、モーリタニアの漁業者を招いての公聴会が行なわれた。EUの漁業者の代表者は今回の協定内容では漁業者の利益が出ないとして反対したが、もう一人は「協定は業界にとって良くない内容だが、議会が承認しなければ協定自体がなくなるので悪化する」として賛成を表明した。

モーリタニアの漁業者は「モーリタニアのタコは総漁獲量の60%、漁獲価値の70%をもたらし、加工工場を含めて漁業セクターの90%の雇用を生み出している」「モーリタニアの漁業者は、外国船がタコを取らないことを求めている。また外国船が漁法を改めて浮魚の混獲の量を減らし、モーリタニアの漁民が取れきれずに余ったものを取るようにするべきだ」といい、EUによる規制強化を含んだ協定案に好意的な意見を示した。

なお、すべての公述人のコメントに「中国への批判」が盛り込まれていた点が注目される。中国は、外国船 の漁獲が禁止されているタコを含めてあらゆる魚を漁獲している。モーリタニア政府は現在、中国のPOLY HONDONEという水産企業と漁業協定を締結しているが、中国がルールを守らないとして批判が高まっており、地元の小さな漁業組合からも見直すように迫られている。

欧州議会の漁業委員会では、同漁業協定に、保守党の一部の漁業国の議員を除き、賛成派が多数の模様。欧州緑の党は当初、「途上国−EU」の漁業協定の締結自体に反対だった。EUが漁業協定を結ぶことで、 途上国の水産資源を枯渇させ、地元民の社会経済的な基盤を奪うと考えていたからだ。しかし、「EUがモーリタニアの海から撤退すれば、中国や韓国、ロシアなどの漁船が入ってくることで状況が悪化する。むしろ、EUが見本となる漁業協定を示すことで、他国にも厳しいスタンダードをかけることができる」として、EUの漁業協定をより良い内容にしようと方針を変えるようになった。

EU−モーリタニアの漁業協定は2月18日か19日に漁業委員会で投票に掛けられ、その後3月に議会総会での投票となる。スペインなどの漁業国は草案の中容に不満があるだろうが、もし承認しなければ漁業協定自体がなくなってしまうから、このまま可決へと動く可能性が高い。EUの(対外的な)漁業政策も少しずつ良い方向に変わりつつあるといえるだろう。

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EUの共通漁業政策の改革案が漁業委員会を通過!

 日、魚が枯渇し、衰退の一途を辿るEUの漁業政策に大きなメスが入った。共通漁業政策の改革案がEU議会の漁業委員会を通過したのだ。10対13で改革案が可決したとき、会場に詰め寄せていた来場者からは惜しみない拍手がわき起こった。反対議員の一部は悔しそうな顔をしていたが、他の議員や市民は抱き合い喜びをわかちあった。喜びというよりは安堵の表情といった方がいいかもしれない。

 EUの共通漁業政策は10年に一度しか変えられない。これを逃したらもうEUの魚は完全に蘇らないかもしれない。そんな危機感が環境団体を動員し、世論を後押しし、議員を動かし、漁業委員会での劣勢だった状況をひっくり返したのだ。EUやったぞ。よくやった。政治は自分たちで変えられるという、希望を与えてくれた。本当に関係者にはおめでとうと伝えたい(また、特に改革の原動力になっているスウェーデン環境党のイサベラ議員にはお疲れさまといいたい。彼女がいなければここまで来れなかっただろう)。

 さて、今回の共通漁業政策案では、主に二つの重要な提案が盛り込まれた(本当は資源回復区域/海洋保護区の設定やIQやITQの推進などたくさん提案があったのだが、妥協を重ねるうちに萎んでいった)。

 一つは「漁獲枠をMSY(最大持続生産量)を超えて設定してはならないということ。MSYとは魚が乱獲にならないで持続的に再生産できる資源量のことで、逆からいえば、これを超えると資源量が下がって乱獲になる。これまで科学者が薦める漁獲可能量に対して「政治が介入する」ことで漁獲枠が過大に与えられてきた。たしかに漁業者の生活のことを考えれば漁獲量は下げたくない。でも漁業者のことを考えてMSY以上に漁獲枠を設定すれば、最終的には魚の資源量が減ることになるので、結局のところ、漁業者の首を締めることになる。MSYに基づいた漁獲枠設定を法律として明文化することは資源管理を行なう上での最低限の、でも重要な第一歩であろう。

 もう一つの重要な提案は、「船外投機の禁止(と漁獲量の把握)」をセットで盛り込んだことである。いくら漁獲枠が最新の科学的知見に基づいて決められたとしても、それが守られなければ何の意味もない。船上で釣った魚を、漁獲枠を超えてしまうからと海に捨ててしまえば、実際の漁獲量は大きくなる。今回の案では、ある一定の条件を満たす船に対して漁獲したすべての魚を持ち帰ることを義務付けている。また、いくつかの魚種に関しては海に戻してもよいこと、全体の漁獲枠の5%以内であれば許容値として認めることも記されている(委員会の修正案ではこの許容値を10%に引き上げる提案がされたが投票の結果5%になった)。

 これらのルールを徹底させるために提案では、CCTV(監視カメラ)を設置することを促進することが盛り込まれている。激しい議論の結果、CCTVの設置の義務化は取り消されたが、CCTVを設置した船に対しては漁獲枠や漁場へのアクセスを優先的に認めることで自発的な設置の促進を目指している。また、モニタリングの強化も盛り込まれている。

 また、今回はもう一つ重要な提案を盛り込んでいる。それは、多年度の漁獲枠の設定過程に欧州議会の関与を認めることである(Multi-Annual Quota)。2009年のリスボン条約以後、欧州議会(下院)は閣僚理事会(上院)とともに漁業政策の意思決定に参加できるようになった。ただ、漁獲枠の設定に関してはいまだに閣僚理事会が決定権を独占している。毎年12月(ちょうど今の時期)に各国の農林水産大臣が集まって丸々二日間寝る間を惜しんで自国の漁獲枠を増やすためにバトルを繰り広げている。もちろん、政治が全面に出てくるため、持続的な水準を超えて漁獲枠が設定されやすい。欧州議会は、こうした不毛な戦いをやめるために、水産審議会を作り、中長期に渡る漁獲枠を科学的に設定するように働きかけている。「政治」ではなく「科学的な知見」によって漁獲枠を決めることを求めており、今回の共通漁業政策の改革案ではそのことがきちんと明記されている。

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 もちろん、今回、改革案が漁業委員会を通過したからといってEUの漁業の状況がいきなり良くなるわけがない。そもそも草案はこれから他の委員会の意見を集めたのちに本会議での採決に掛けられる。ただ、私が見るところ、本会議では問題なく通過できる。漁業委員会では「漁業者の利益を代弁する議員の割合が多いため、漁業者に痛みの伴う改革案が通りにくい。逆に、全体として欧州議員は環境志向の人が多いため(また党議拘束もないため)、本会議では漁業委員会よりも強い規制の支持が得やすくなっているのだ。

 本当のヤマ場は、閣僚理事会だろう。加盟国も国益(という名の部分利益)を守るために必死だ。農業や漁業はお金が再分配され、勝者と敗者が見えやすい分野だけに国民の目も集まりやすく政治家も身動きが取りにくい。ここで規制の抜け道を増やす例外条項や文言の入れ替え(shall → aimとかabove→aroundなど)が行なわれる可能性は多々ある。ただ、欧州の世論は、現行の漁業のあり方に不満を持っており、資源管理を強化する改革案を待ち望んでいる。むしろ、10年に一度の漁業改革をブロックしようとすれば、政権に対する批判も出てくるだろう。

 EUの漁業の復活を祈りつつ、今後の推移を見守りたい。ガンバレ欧州議会!

 (参考:共通業業政策の修正案(209ページ

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欧州議会を支える部局の機能

 回は、私がインターンをしている欧州議会での仕事(およびその機能)について紹介したい。

(一応、基礎情報を確認する。EUの立法機関は、欧州委員会(行政/執行機関=欧州官僚)、閣僚理事会(上院=加盟国政府)、欧州議会(下院=EU市民によって選ばれた欧州議員)の三つに分かれている。欧州委員会が草案を提出したあと、両院がそれらを精査して採決を取る。これまで多くの分野において欧州議会は政策決定の蚊帳の外に置かれていたが、2009年のリスボン条約以後、欧州議会はある特定の分野を除いて閣僚理事会と一緒に「共同決定」に関与できるようになった)。

 欧州議会の中には議員の仕事をサポートするために10つの部局(DG)が存在する。その中でも内政局(DG Internal Policy)と対外政策局(DG External Policy)は、各専門分野ごとに法案作成のプロセスに直接的に関与する。それ以外の部局はより事務的なことで間接的に議会の運営をサポートする( ex 人事局、PR局、本会議局(DG Presidency)、翻訳局など)。

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 私が働いているのは内政局(DG Internal Policy)の地域政策”(Cohesion and Regional Policy=Directorate B)というユニットの、漁業政策の「政策課」である。このユニットは、①交通政策、②教育•文化政策、③農業政策、④漁業政策、⑤地域政策をカバーしている。

 それぞれの政策分野ごとに「政務課(Secretariat)」と「政策課(Policy Department)」という二つの下部組織がある。政務課は、議会の委員会の仕事を直接的にサポートする。議会の委員会の議員とも綿密にコンタクトを取り、議員の法案作成(修正案)の作業などに関わる。それに対して「政策課」はより”シンクタンク”のような働きをする(→米国の議会調査局(Congressional Research Service)の役割に似ている)。

 政策課は、委員会の議員の要請に従い、専門的な情報や知見を提供する。政策課だけで報告書を作ることもあれば、大学の研究者や専門家に依頼することもある。例えば、私の部署で最近出した研究レポートは「世界の漁業における中国の役割」や「海洋保護区の役割」。「魚の乱獲が海のエコシステム(および気候変動)に与える影響」。タイムリーかつ議員の中でも意見の分かれる話題も取り上げており、読み応えがある。しかも、これらはすべてインターネット上で見ることができる(米国の議会調査局は基本的に公開していない!)。

 政策課と政務課は形式上は別の組織であるが、綿密に協力体制を取っている。法案によっては政策課のスタッフが担当者として議員と一緒に法案の修正案作成にも参加する。また、欧州議会、閣僚理事会、欧州委員会との修正案を巡る三者交渉(トリローグ=Trilogue Meeting)にも参加する。このトリローグは法案の行く末を左右する最も重要な会議の一つだ。

 欧州議会でも議員によってはすべてを議会スタッフに丸投げする人もいるし、自分ですべての修正案を書く人もいるようだ。これは日本でもどこでも事情は変わらない。ただ、日本との大きなの違いは、議会のシンクタンク機能を強化することによって、行政官僚への(知識面での)依存を少なくしようとしている点であろう。日本の国会にも同じような組織に衆議院調査局というのがあるが、ホームページを見ると、その規模の小ささが伺える(まず報告書の数があまりに少ないし、それも農林水産分野ばかり)。

 ※ちなみに欧州議会の行政職員(議会スタッフ)になるためには試験(SPIみたいなやつ)を合格しないといけない。これは日本の国会職員も同じだろうが…。

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フォアグラの全面禁止の動き

 リュッセルでのインターンを始めてから4週間が経過した。EUの建物の地理や構造にも慣れてきて迷うこともなくなってきた。議会内のどこに行けばフリーランチ/シャンペ−ンにありつけるかという耳寄り情報も迅速に共有できるようになってきた(笑)。

 先週、フォアグラの業界団体がフォアグラをシャンペーンと一緒に無料で振る舞うというイベントに遭遇した。フォアグラは、世界三大珍味の一つで、ガチョウ(やグース)の肝臓のことである。フォアグラの生産過程ではガチョウの喉に長い管を通じて餌を無理矢理食べさせる「強制給餌」という行為を伴うが、これが動物虐待に当たるとして欧米では批判が強まっている。EU22カ国(ベルギー、ブルガリア、ハンガリー、スペイン以外の加盟国)ではすでに生産は禁止されているが、輸入や売買については自由に行なうことができる。今年7月、カリフォルニア州でフォアグラの全面禁止(生産/売買)になったことを受けて、欧州議員の一部がEUでも同様に全面禁止への動きを加速させている。

 ただ、35000人が雇用されているという経済的側面だけでなく、フランスの伝統文化というシンボリックな要因が絡んでいることもあり、全面禁止は長く遠い道のりである。(ちなみにフォアグラの80%以上がフランスで生産されている)。
 フォアグラの業界団体のカンファレンスの会場ではすでに人だかりが出来ていた。もちろん、ほとんどの人はダチョウの境遇とか産業界のことなどどうでも良くて、フォアグラにありつくことだけを考えて集まっている。フォアグラが出てくると、われさきに人々が前に出てきて争うようにお皿を取り、次の瞬間にはテーブルは空っぽになっていた。

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 クジラ(やイルカ)はすでにEU域内では全面禁止(漁業および輸入の禁止)になっているが、その原動力は希少資源の枯渇(と保護)という側面と動物保護の精神から来ている。動物保護の規範が広まることで、将来的にはフォアグラ産業は縮小していくと考えられるが、一方で、中国を始めとするアジアの国々が世界における影響力を高めることで、そういった西洋的な(というかエリート的な)価値観が中和されていく可能性もある。食べ物に対する価値観(および倫理的な正しさ)は欧米でも一枚岩ではないし、アジアの国々ではさらにバラバラだから、普遍的な価値を見出すことはさらに難しいだろう。

 もしかしたら、今後、クジラの商業捕鯨が再開されるかもしれないし、フォアグラの生産/売り上げだって伸びていくかもしれない。ただ、これは最終的には政治力学というよりも市場(消費者)が決めることだろう。クジラの商業捕鯨が再開されたところで食べる人がいなければ捕鯨文化は自然に衰退する。わざわざ税金をつぎ込んで南極までクジラを取りに行く必要もない(他の伝統文化と同じように需要がなければ供給は自然と縮小していくだろう)。

 いずれにしても、今後、ヨーロッパの世界経済における存在力の低下は世界的な規範形成のあり方にどういうを持つのかーこれは非常に興味深いテーマである。

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ブリュッセルでお部屋探し

 週の始め、ようやく部屋が見つかり引っ越すことが出来た(最初の10日間は、前にカウチサーフィングを通じて出会ったルディーのアパートに泊めてもらっていた)。

 ブリュッセルでの9月〜10月の「部屋探し」は簡単ではない(ストックホルムやウプサラほどではないが)。現地の大学の学生やEUのインターンが「よーいどん」で一斉に探し始めるからだ。大家と連絡が取れてアパートの見学にいくと、必ず3人から5人くらいのライバルがいる(もっと酷いと10人くらいいるらしい)。誰が大家に一番良い印象を与えられるかというという戦いが始まる。私は三回、その戦いに参加したが、一回目、二回目ともに他の若い女の子に敗北した。

 今のアパートは三度目のラウンドでゲットした。アパートはEU地区と呼ばれるところから北方面にあるのマドウ(Madou)という駅の近くで、欧州議会まで徒歩10~15分の距離にある。見学の当日、アパートの入り口で予定時刻にいくと、そこに大家はいなかった。5分経ってから電話をすると、1分後に来るという。それから10分後、大家らしき人がやってきたが、彼の横には二人の女の子がいる。二人とも部屋を探しているようだ。彼はフランス語訛りの英語で「ごめん、10分間待っていてくれ」といって二人と一緒にアパートの中に消えていった。空き部屋は二つだったので、またしてもダメかとテンションが急降下。

 だが、しばらくすると、大家が出てきて、笑みを浮かべながら言う、「悪いニュースと、良いニュースがある」。二つの部屋は女の子に渡ってしまったが、まだ隠された「地下室」があるというのだ。早速、部屋を見せてもらった。トイレとシャワーは部屋のなかについているが、地下室なので窓がない。電気がついていないとほぼ真っ暗。でも部屋自体は綺麗だし、地下室だけに静かだし、大きなクローゼットもある。しかも今なら特別価格で一ヶ月400ユーロ、また一ヶ月後には、3階の大きな部屋に移動してもいいという。その後、三階の部屋を見せてもらったところ、屋根裏の広い空間もあり、明るくて外の眺めもいい。こちらは550ユーロで少し高いが、素晴らしい物件である。こうして長い長い「お部屋探しの旅」が終わった。

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 今、アパートには10人くらい住んでいる(入れ替わりが早いのですべて把握していない)。ほとんどがEUで働いているインターンで、一階と二階はすべてイタリア人とスペイン人。ラテン系のステレオタイプを裏切って、静かで知的な人達だ。彼らは欧州議会ではなく欧州委員会(EUの司令塔)で働いている。普段は欧州委員会の人とは会わないので色々と話を聞けて面白い。昨日はEUのノーベル平和賞受賞の祝福をした後(もちろん皮肉混じりで)、サルサダンスパーティーへ。すべてがアパートから徒歩圏内で完結するので、すごく便利だ。

 唯一の面倒といえば、洗濯機がないことだろうか。歩いて5分くらいのコインランドリーまでいかないといけない(まあ、これはスウェーデンでも似たようなものだが、スウェーデンではアパートの中に共有のランドリーがある。ここでは仕事をしていると週末しか洗濯する時間がないし、しかも、日曜日は店がやっていないことが多いので、土曜日に行くしかない。)。

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欧州議会のインターン開始

 州議会のインターンの3日目が終わった。初日はオリエンテーションと同じ部署の同僚との飲み会、二日目は上司との顔合わせ、他の同僚との飲み会などで終わった。三日目の今日は、欧州委員会のメンバー、欧州議会の議員などのレクチャーのあとに、カクテルパーティーがあった。(飲み会だらけ笑!)

 インターン生は全部で600人を超える大所帯。欧州委員会からは400人〜500人くらいで、欧州議会からは100人弱くらい。ヨーロッパ以外からインターンを受け入れることは(米国人以外では)極めて稀だ。日本人はおそらく私だけだが、そのおかげで、顔と名前を覚えてもらいやすい。(イタリア人やポルトガル人が多すぎて名前が覚えられない!)。

 私が働いている欧州議会の内政部には約30人のインターンがいる。細長い廊下にデスクを並べて座らされている。それぞれ担当分野が違うので共同作業をすることはないが、12時には同僚たちとウキウキ気分でランチに行く。議会の中の食堂では7-8種類のメニューが選べる。EUの加盟国のなかで記念日の国があれば、その日はその国の特別メニューが加えられる。サラダバー、スープバー、デザートも豪華に用意されている。
 
 就業時間は8時30分から17時30分(昼食休憩は1時間)。先に書いたようにまだオリエンテーション期間みたいもので、仕事も割当られていないし、今週は委員会の審議もない。今日は、17時半を過ぎたあと、オフィスに残っている同僚たちと一緒にベルギービールを飲みに行った。グランドパレスから細い道に沿って歩いて5分くらいのところにある、ギネスレコードにも認定されているDeliriumというビアカフェ(一階では24種類の生ビールを選べる!)。私は、まず白ビールのFlorisを飲んだ。さっぱりしていて美味しい。そのあとにChimayというビールを飲んだ。こちらはよりコクがある。友達のビールを飲んでみたら、ブラウン色の苦みのある味で、アルコールの度数は10%だった。いずれも、2ユーロから3ユーロくらいで安い。

 明日は欧州緑の党の(インターン生の)パーティー、金曜日はウプサラ時代からのベルギー人の友人と飲み会、土曜日にはインターン生によるインターン生のためのパーティーがある。仕事を始めたはずなのに、大学に入ったばかりの新入生みたいだ。まあ、来週から仕事が忙しくなれば飲み会どころではなくなるし、新入生の気分もすぐに消えるだろう。

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スウェーデンの教育問題の原因⑤

 れまで書いてきたスウェーデンの教育問題についてまとめる。スウェーデンの教育改革(①地方分権化②民営化)は良い面がなかったわけではないが、それ以上の多くの問題を引き起こしたと結論付けてよいだろう。

  1. 先生の専門性や職業性(プロフェッショナリズム)、社会的な地位を損なう。
  2. 学校が生徒を「お客さま」として捉えることで、生徒に必要なことではなく、生徒が欲しいものを提供するようになり、競争が教育の質の向上に必ずしも繋がらない。
  3. マーケティングやPR戦略などに余分な労力とお金が費やされる。
  4. 生徒や保護者が学校が合わないと思えば、すぐに他の学校に移動しようする。これは既存のルールの下では最も理性的な行動であるが、自分達で学校を改善していこうというインセンティブが失われ、地域のハブとしての学校の役割は低下する。
  5. 生徒の出転校のペースが早まることで、現場に混乱をもたらし、先生達の負担が大きくなる。また成績の良い生徒がいなくなることで、クラスの雰囲気や秩序を保ちにくくなる。
  6. 子供の人口減少によって学校間の競争が加速すれば、学校が潰れやすくなる(そして財政的に安定した大手企業が残りやすい)。生徒の数が足らずに学校が潰れれば、そこに通う生徒達は学校の変更を余儀なくされる。生徒達には精神的に負担になる。

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 次の総選挙(2014年)では、経済や雇用と同様、教育改革が争点の一つになるだろう。特にフリースクールが国民の税金から利益を上げていることについては批判が高まりつつある。現在の右派政権はあくまで現状維持の立場であるが、これまでこの政策を支持してきた社会民主党は今、分裂状態にある。社民党の青年部は営利目的で学校が運営されることに明確に反対を表明、左派の環境党や左党だけでなく、(極右の)スウェーデン民主党も行き過ぎた学校改革を批判している。

 次の選挙では、社民党の教育政策の動向に注目だ。

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