先日、NPOのRightsの事前勉強会で「EUの若者政策」について紹介した。前半部分がEUの基礎的な仕組みの話(EUと加盟国の権能、立法プロセス、欧州議会選挙の影響)で、後半はいわゆる若者政策(雇用+教育+参画)の話。自分も調べていて意外に面白かったので、ここでも簡単に紹介する(プレゼン資料はこちら)。
主にEUの抱える若年層の課題は、日本よりはるかに多い高校中退者やニートと、それなりの教育を受けた中間層のスキル不足とミスマッチである。
現在、雇用対策の目玉とされているのが「若年保障(Youth Gurantee)」。若年保障は、4ヶ月間求職活動をして仕事が見つからない若者に対して公共雇用サービスが介入し、地域の教育機関、企業、若者団体などと協力して個別的に対応するというもの(日本のワンストップサービスを体系化したようなもの)。特に教育水準の低い若者に対しては再教育や職業訓練の機会を提供しつつ、そうでない人にはカウンセリングやマッチングの助言を与える。さらに、欧州全域をカバーする雇用サービス(EURES)を追加で活用することで、若者の流動性とマッチングの精度を上げる。それに加えて、エラスムス+プログラム(留学プログラム)で、海外留学を経験した人材を増やして底上げをする。こうした中間層を対象とした対策を強化することで、若者の能力開花を促進していく。
もちろん、こうした若者に特化した措置だけでは十分ではない。特に若者をめぐる状況はむしろ経済財政状況によって左右されるので、短期的な若者政策で効果が上がるとも思えない。特に南欧の国々では、全体の雇用の流動化や国際競争力を伸ばす政策を並行的に進めないと根本的な解決にはならないだろう。それでも、EUの28カ国は比較可能な国が多いため、新しい取り組みを実施する場合には、そうした効果について科学的な知見を得やすく、ベストプラクティスも学び合えるし、そこからまた新しい動きも出てくるだろう。