EUでのインターンのススメ

 年10月に欧州議会でのインターンをするためにブリュッセルへ来てから丸一年が経過した。当時は、毎週出てくる新しい法案や修正案の確認、関係委員会の審議や公聴会のモニタリング、議会内のロビーイングを兼ねたイベントへの(ほぼ毎週)参加などで常に新しいものとの戦いだった。毎週木曜日の夜には欧州議会前の「ルクセンブルグ広場」で何百人ものEU関係に従事しているインターンが集まり、ビールを飲んではふざけたり議論したりしていた。ブリュッセルの良いところは、こうした狭いコミュニティーで同じような興味や関心を持った同性代の若い人達との繋がりが簡単に出来る点である。何より政治好きにはたまらない空間だ。今回は、こうした経験を踏まえた上で、EUのインターン応募を考えている人のために概要とコツを紹介したい。

 EU機関でのインターン

 EU機関では、春ターム(3月~7月)と秋ターム(10月~2月)の年に二回、5カ月の期間でインターン生を受け入れている。欧州議会では、毎年120人くらい、欧州委員会は650~700人ほどを受け入れている。その他にも、欧州投資銀行、欧州中央銀行、欧州司法裁判所、社会地域評議会などの機関もインターンを取っている。インターンの給料はそれぞれの機関で異なるが、おおよそ1200ユーロほど(約15万円)。

 インターンの応募資格

 欧州委員会と欧州議会のインターンの応募資格を持つ対象は、主に18歳以上の学位取得者で、過去にEU機関でインターンをしていない人となっている(一応、年齢制限はないが、インターンの平均年齢は24~28歳くらいだと思う)。非EU加盟国の人間にもインターンへの扉は開かれている。ただし、非EU加盟国の採用枠は、全体の10%を超えてはいけないという規定がある(欧州議会の場合、以前は5%の上限だったが、最近10%に引き上げられた)。つまり、欧州議会で120人をインターンで採用した場合、原則的には12人まで非EU圏の人間を採用できるということになる。

 インターンの応募手続き

 欧州議会でのインターン応募手続きは至って簡単。年二回(春と秋)の応募期間にオンライン上で、必要書類の提出、そして第一志望から第三志望まで希望する部署名を明記した上で、志望動機(A4の半分くらいの分量)の提出を行う。

 これに対して、欧州委員会の応募手続きは二段階に分かれている。第一段階は、まず欧州議会と同じように、オンライン上での必要書類の提出。ここで志望動機、専門性や言語力などをもとに2600人の候補者に絞り込まれる(いわゆるブルーノート・リスト)。その後、第二段階として、このリストに選ばれた候補者の中から欧州委員会の各部署が希望する人材に対して電話面接を行い、最終候補者を決定する。

 ただし、欧州委員会も欧州議会も選考基準は曖昧である。たしかに学歴(修士号)、専門分野、言語能力(3カ国語)が選考の指標になっているが、人脈(コネ!)も重要な鍵になっている。本気でインターン枠の獲得を目指す人は、事前に希望する部署あるいはその部署の知り合いにコンタクトを取り、どういう人材が必要かどうかを確認したり、ブリュッセルに来る機会のある人は知り合いを通じて担当者に売り込みをすることもある(日本の就職活動におけるOBOG訪問みたいな感じ?)。

 インターンの応募者数と採用数の割合

 欧州委員会は、インターンの応募者数の公式統計を発表している。年間平均の応募者の数の変化を見てみると、2007〜2008年の経済危機後に増加傾向にあり、2013年の秋タームは前年同期比では、9060人から18797人にほぼ二倍に増えている。また、インターン応募者の国別統計で顕著なのは、南欧諸国が突出して多い点である。2013年秋タームは、イタリア人が4179人、ポルトガル人が2491人、スペイン人が2489人で、全体のほぼ半分を占めている。なお、毎回イタリアの枠から採用されるのは80人、スペインからは40人くらいなので、平均的な応募倍率は50倍にも達する。その他の加盟国の倍率はおおよそ10~20倍だから、南欧諸国がいかに厳しい状況にあるか分かる。逆に、北欧諸国は給与水準が高いこともあり、インターンの応募倍率は常に10倍を下回っている。

インターン応募者数(年別)

インターン応募者(年別2)

2012年10月の応募者と2013年の応募者の比較(国別)

インターン応募者(加盟国別2)

 日本人のインターン

 非EU加盟国からもインターンを受け入れていると書いたが、日本人が採用されることはそれほど多くはない。ただ、だからといって、EU機関の側に日本語が使える人材の需要がないというわけではない。日欧関係は日米に比べれば重要度は劣るだろうが、それでも日本が関わる政策分野は多いため、日本語を使える人材を採用したいという部署はそれなりに存在する。例えば、日本とEUの自由貿易協定の交渉に関わる報告書を作成する仕事は増えている。昨年、欧州議会で関連のレポートを作成した際には日本人がいなかったために中国人のインターンがそれを準備していた。また、科学技術(特にICTやエネルギー)の分野でも日本とEUは、頻繁に情報交換を行っている。こうしたことを踏まえれば、欧州委員会の貿易総局や産業企業総局、欧州議会の国際貿易委員会や科学技術審査局(STOA)で日本人がインターンとして採用される可能性は決して低くはないだろう(少なくとも倍率が高いイタリアやスペインよりは可能性は高いはず)。

 私が思うに、日本の大学(あるいは大学院)でEUに関する研究をしている学生は少なくないはずだが、実際にEUがどう機能しているのかを熟知している人は驚くほど少ない。その原因はEU自体の複雑さ、日本との地理的な距離、日本の大学の教育の在り方などにあるとは思うが、政治学の学位を取得しておいて世界の政治経済の重要な独立変数であるEU機関の知識が乏しいというのは悲しいことである。特に、日本の修士課程の学生、あるいは欧州への留学経験のある学生には、こういうインターンがあるということ、そして採用される可能性は少なくないということを知ってもらいたいと思う。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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