ついに明日(2月6日)、EUの共通漁業政策の修正案がストラスブルグの欧州議会で投票にかけられる。下のポスター(Link)は明日の投票に合わせて欧州議会の宣伝部(環境団体ではない!)が作成したものだが、「海にはいつでもたくさんの魚がいるって、それ本当?」というキャッチコピーをつけて「乱獲の事実」を並べている。本来中立的であるはずの欧州議会のPR部がここまでやるのだから、いかに乱獲が「事実」として認知されているかが分かるだろう。
12月下旬に漁業委員会を通過したときに修正案の中身について書いたが、もう一度確認したい。どこの欧州政党も「水産資源の持続的な利用」に原則的に賛成しているものの、それをどのように達成するかで意見が分かれている。さて結果はどうなるか?
ー共通漁業政策の修正案(欧州社民党)のハイライトー
1. 科学的に持続的とされるMSYに基づく漁獲枠の設定と遵守(政治の介入にNO)
- 2015年までに魚資源が再生産できる水準(MSY)で漁獲量を設定する(2020年までにはMSYの水準以上で設定する)。
- 保守党グループは、準備が必要として、期限を2020年にするように要求。
2. 船外投棄の禁止(Discard Ban)
- 漁獲された魚を原則的にすべて漁港に持ち帰ることを義務化(例外として5%の投棄)。
- 加盟国には、魚種を絞りながら投棄の禁止の対象を拡大することを義務化。
- 保守党グルー プは、例外の割合を10%にするように要求。
3.個別式委譲(取引)可能漁獲枠(Individual Transferable Quota-ITQ)の導入に反対
- 現在、EUの漁獲枠は加盟国ごとに分配。それを国内でどのように分配するかは加盟国に委ねられている。
- ITQは漁業枠(権利)を取引可能にすることで、非効率な漁業者は淘汰され、経済的にパフォーマンスの良い漁業者(や企業)が生き残る。また、ITQをEUの加盟国全体で行なえば、さらに漁業の生産性が上がる、とされる。
- しかし、EU全体でITQを導入すれば、(スペインなどの)大きな漁船が漁獲枠を増やし、小さな漁業者は淘汰される。また、大規模の漁船が資源管理を守り、効率的な漁業をするとは限らない。むしろ、乱獲が助長される可能性すらあり、認められない。
- むしろEU全体でやるよりも、加盟国ごとに個別に漁獲枠を設定し資源管理を強化するほうがより現実的である。
- 保守党グループの多くもITQの導入に反対(ただし、スペインなどの漁業国の議員はITQの導入に賛成)
4.資源回復エリアあるいは海洋保護区(Stock Recovery Area/Maritime Protected Area)の設定
- 加盟国にそれぞれの海域内で10%-20%の資源回復エリアの設定を義務化
- 保守党グループは、数値目標の設定に反対(漁業委員会では否決)。
5.中長期的な漁獲枠の設定における欧州議会の権限拡大
- 現在、漁獲枠の設定については閣僚理事会(上院)が政策決定を独占。
- 欧州議会(下院)は「リスボン条約(2009)の締結後、漁獲枠の設定に関与できる権限がある」と主張。もし認めなければ、欧州司法裁判所に訴えるとして閣僚理事会を牽制。
- 欧州議会の政党のほとんどが賛成している。