欧州議会を支える部局の機能

 回は、私がインターンをしている欧州議会での仕事(およびその機能)について紹介したい。

(一応、基礎情報を確認する。EUの立法機関は、欧州委員会(行政/執行機関=欧州官僚)、閣僚理事会(上院=加盟国政府)、欧州議会(下院=EU市民によって選ばれた欧州議員)の三つに分かれている。欧州委員会が草案を提出したあと、両院がそれらを精査して採決を取る。これまで多くの分野において欧州議会は政策決定の蚊帳の外に置かれていたが、2009年のリスボン条約以後、欧州議会はある特定の分野を除いて閣僚理事会と一緒に「共同決定」に関与できるようになった)。

 欧州議会の中には議員の仕事をサポートするために10つの部局(DG)が存在する。その中でも内政局(DG Internal Policy)と対外政策局(DG External Policy)は、各専門分野ごとに法案作成のプロセスに直接的に関与する。それ以外の部局はより事務的なことで間接的に議会の運営をサポートする( ex 人事局、PR局、本会議局(DG Presidency)、翻訳局など)。

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 私が働いているのは内政局(DG Internal Policy)の地域政策”(Cohesion and Regional Policy=Directorate B)というユニットの、漁業政策の「政策課」である。このユニットは、①交通政策、②教育•文化政策、③農業政策、④漁業政策、⑤地域政策をカバーしている。

 それぞれの政策分野ごとに「政務課(Secretariat)」と「政策課(Policy Department)」という二つの下部組織がある。政務課は、議会の委員会の仕事を直接的にサポートする。議会の委員会の議員とも綿密にコンタクトを取り、議員の法案作成(修正案)の作業などに関わる。それに対して「政策課」はより”シンクタンク”のような働きをする(→米国の議会調査局(Congressional Research Service)の役割に似ている)。

 政策課は、委員会の議員の要請に従い、専門的な情報や知見を提供する。政策課だけで報告書を作ることもあれば、大学の研究者や専門家に依頼することもある。例えば、私の部署で最近出した研究レポートは「世界の漁業における中国の役割」や「海洋保護区の役割」。「魚の乱獲が海のエコシステム(および気候変動)に与える影響」。タイムリーかつ議員の中でも意見の分かれる話題も取り上げており、読み応えがある。しかも、これらはすべてインターネット上で見ることができる(米国の議会調査局は基本的に公開していない!)。

 政策課と政務課は形式上は別の組織であるが、綿密に協力体制を取っている。法案によっては政策課のスタッフが担当者として議員と一緒に法案の修正案作成にも参加する。また、欧州議会、閣僚理事会、欧州委員会との修正案を巡る三者交渉(トリローグ=Trilogue Meeting)にも参加する。このトリローグは法案の行く末を左右する最も重要な会議の一つだ。

 欧州議会でも議員によってはすべてを議会スタッフに丸投げする人もいるし、自分ですべての修正案を書く人もいるようだ。これは日本でもどこでも事情は変わらない。ただ、日本との大きなの違いは、議会のシンクタンク機能を強化することによって、行政官僚への(知識面での)依存を少なくしようとしている点であろう。日本の国会にも同じような組織に衆議院調査局というのがあるが、ホームページを見ると、その規模の小ささが伺える(まず報告書の数があまりに少ないし、それも農林水産分野ばかり)。

 ※ちなみに欧州議会の行政職員(議会スタッフ)になるためには試験(SPIみたいなやつ)を合格しないといけない。これは日本の国会職員も同じだろうが…。

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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欧州議会を支える部局の機能 への3件のフィードバック

  1. kaoru より:

    お返事どうもありがとうございます。
    みんな何か抱えながら過ごしているんですn

  2. kaoru より:

    すみません、打ってる途中で誤って送信しちゃいました・・・
    みんな進みながらも、少し不安な気持ちを抱えてたりするんだなと思ったことは、私にとって、とても大きな発見でした。
    実は私もブログをやってます。
    よかったら遊びに来てください。
    アドレスです↓
    http://k19660419.blog49.fc2.com/
    北欧の冬は寒そうですね、お体に気をつけて。
    あ、室内はあったかいんでしたね。

  3. tcconfing より:

    それぞれの政策分野ごとに「政務課(Secretariat)」と「政策課(Policy Department)」という二つの下部組織がある

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