これまで書いてきたスウェーデンの教育問題についてまとめる。スウェーデンの教育改革(①地方分権化②民営化)は良い面がなかったわけではないが、それ以上の多くの問題を引き起こしたと結論付けてよいだろう。
- 先生の専門性や職業性(プロフェッショナリズム)、社会的な地位を損なう。
- 学校が生徒を「お客さま」として捉えることで、生徒に必要なことではなく、生徒が欲しいものを提供するようになり、競争が教育の質の向上に必ずしも繋がらない。
- マーケティングやPR戦略などに余分な労力とお金が費やされる。
- 生徒や保護者が学校が合わないと思えば、すぐに他の学校に移動しようする。これは既存のルールの下では最も理性的な行動であるが、自分達で学校を改善していこうというインセンティブが失われ、地域のハブとしての学校の役割は低下する。
- 生徒の出転校のペースが早まることで、現場に混乱をもたらし、先生達の負担が大きくなる。また成績の良い生徒がいなくなることで、クラスの雰囲気や秩序を保ちにくくなる。
- 子供の人口減少によって学校間の競争が加速すれば、学校が潰れやすくなる(そして財政的に安定した大手企業が残りやすい)。生徒の数が足らずに学校が潰れれば、そこに通う生徒達は学校の変更を余儀なくされる。生徒達には精神的に負担になる。
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次の総選挙(2014年)では、経済や雇用と同様、教育改革が争点の一つになるだろう。特にフリースクールが国民の税金から利益を上げていることについては批判が高まりつつある。現在の右派政権はあくまで現状維持の立場であるが、これまでこの政策を支持してきた社会民主党は今、分裂状態にある。社民党の青年部は営利目的で学校が運営されることに明確に反対を表明、左派の環境党や左党だけでなく、(極右の)スウェーデン民主党も行き過ぎた学校改革を批判している。
次の選挙では、社民党の教育政策の動向に注目だ。