先の投稿で、スウェーデンの学校教育が多くの問題を抱えていると書いた。ただ、問題があることは分かっていても、何が原因でどういう対策をすればいいのかについては意見が分かれている。
教育の地方分権化が原因だという人もいるし、教育の民営化(営利企業の参入)が失敗だったという人もいる。また、移民が増えたことが問題だという人もいる。もちろん、これらはすべて絡み合っているので、どれか一つが絶対の原因というわけではないし、他にも都市化、消費文化の浸透、携帯やパソコンの普及など様々な要因もあるだろう。
ただ、あえて上の三つで問題に絞って優先順位をつけるとすれば、私の主観では、①地方分権化に3割 ②民営化に6割 ③移民の増加に1割に分けられると思う。
まず、③移民の増加に教育の失敗を求める説明があるが、これは(イスラム)移民排斥を掲げるスウェーデン民主党などがよく喧伝している。「フィンランドの教育が成功していてスウェーデンが失敗しているのはフィンランドでは移民が少ないからだ」ともいう。私は、移民の影響自体は否定しないが、それほど大きな要因ではない、と考えている。
スウェーデンの中学三年生の生徒数は107,177人。そのうち、外国のバックグランドを持つ生徒数をみると、2002年の15522人から2011年の19575人となっており、全体の割合としては14%から18%に増えている。ただし、この外国にバックグランドを持つ生徒のなかの10%弱(10407人)は、スウェーデンで生まれて生活している子供(二世)が占めている。つまり、純粋な移民の割合は8%前後(9044人)であり、その全体に占める割合は2000年の10%よりも少なくなっている。統計資料参照(スウェ語)。
もちろん、移民のバックグランドにも注目する必要がある。1990年代まではヨーロッパ系の移民が多かったが、2000年代にはアフガン人、イラク人、イラン人、クルド人、ソマリア人などの難民が増えている。彼らの中には教育を受けていなかったり、あるいは戦争でトラウマ体験を受けている親や子供も多くいるので、従来のヨーロッパ系の移民より社会に順応するのに時間が掛かる。そういう意味で、学校の教育現場はより大変になっている。
ただ、それを考慮しても、移民が全体の成績を押し下げていることにはならない。この10年間で数学のテストの結果を見れば、規定の点数に達しない割合が9%から19%に増加している。このことから、移民だけでなく、生徒全体の成績が下がっていると考えるのが妥当だろう。