スウェーデンの若い世代の学力低下が長年に渡って問題視されており、大手メディアでも毎日のように取り上げられている。次の総選挙では、経済(雇用)と並んで教育問題が焦点になるとも言われている。まず、スウェーデンの(義務と高等)教育の実情について統計資料を集めてまとめてみた。
まずは中学生。2011年度の中学三年生の全国共通テスト(数学)の結果によると、全体の19.3%の生徒が国の定める最低限のレベルに達していない(2003年時点ではその割合は9.2%だった)。ただ、全国共通テストは直接的には生徒の内申点に反映されない。数学の内申点(学内成績)を見てみると、定められた基準に達していない生徒の割合は2002年で93%で、2011年は91.4%に下がっている。高校進学の資格を持つ生徒の割合は、2002年で89.5%だったのが、2011年には87%となっている。やや下がり気味の傾向にあるといえる。
また、日本でも言及されることの多いPISA(国際学力調査)。PISAは2000年から3年ごとに実施されており、そのスコアの変遷を追うことができる。これによると、スウェーデンの読解、数学、科学リテラシーのすべての分野において順位が下がっている。前回のPISAの結果は2010年に発表されたが、そのときは大手新聞やテレビが危機感を持って報じていた。
※ただし、補足をすると、成績上位の割合にはあまり変化はなくて、成績下位の層が増えている。つまり、日本と同様に、上と下の二極化が進んでいる、ということ)。
次は、高校生。2010年〜2011年の年に、高校の最終成績を取得している生徒の数は99,000人。そのうち、大学や高等専門学校への進学資格を有する高校生の割合は87%だった。進学資格を持つ人の割合は年によって多少前後しているが、あまり大きな変化は見られない。
ただし、スウェーデンには高校の最終成績をもらえない生徒(中退者)がいる。英語の記事。3年間で卒業できない生徒の割合は31%、4年間で卒業できない割合は約24%、最終的に、高校中退の割合は22,7%になる。もちろん、高校を中退したとしても、成人学校(Komvux)などで再教育の機会が与えられているので、高卒資格取得者の割合は24歳までに90%に回復する。
とはいっても、特に高校の職業系のコースにおける中退率は高止まりをしており、失業率を高める要因として問題視されている。ブルーカラーの工場系の需要がなくなっているので、高卒資格をもっていない若者は仕事を見つけられない。あとで成人学校でやり直しが効くといっても、高校の段階で基礎的な知識やスキルを身につけておくに越したことはない。
また、スウェーデンの中学や高校では、秩序や規律が欠如しているとして学級崩壊(?)が長年問題視されている。PISAの調査(2009)では、教室の秩序に関する国際比較(先生が授業をすぐに進められるかを生徒に尋ねたもの)をしている。これによれば、スウェーデンはOECD諸国の平均値よりも低いスコア(71%)を示している(これでも2000年のスコアが56%だから、一応、15%も上昇!)。ちなみに日本は、共産党支配の中国(上海)を抑えての堂々の一位(93%)になっている。笑。