スウェーデンの公共放送(SVT)や公共ラジオ(Sveriges Radio)は、日本のNHKと同じく受信料方式で成り立っている。受信料契約を結んで月額(か年額)を支払う仕組みである。
近いうちに「国営放送」(税金方式)へと変わるかもしれない、というラジオのニュースを聞いた。これによれば、今年の秋の国会で「公共放送の税方式負担」の提案が検討されているという。パソコンや携帯、インターネットを通じて公共放送のサービスを利用するスウェーデン人が増えているなかで、今後、受信料契約だけで支えられなくなる、というのがその理由である。
税方式による具体的な中身はまだはっきりしないが、日本でいうところの「特別会計(目的税)」を採用するようだ。政治的な圧力を回避するための仕組みである。ただ、公共放送は、今の受信料方式よりも「報道•編集」の自立性が失われる、として懸念を表明している。
私は、スウェーデンの公共放送を税方式で支えることにわりと好意的だ。今後、インターネットを利用したテレビ番組の視聴が増えていくことは避けられない。インターネットで公共放送の番組も無料で見られるため受信料を払うメリットがない。このままでは利用者負担の方針が成り立たないことは明らかである(NHKのように「無理矢理」払わせれば別だろうが)。
税方式が嫌だからといって、英国のBBCのように商業放送への道に進むと、報道の質の低下は免れない。企業広告や番組の課金制を導入すれば、結局、民間の商業テレビから民業圧迫として非難を受ける。「もし公共放送が商業化するのであれば補助をなくし、商業放送同士の公平な競争を促すべきだ」という声が出てくるだろう。
結局、この問題は、国営放送にしたときの国家の圧力と、商業放送にしたときの商業化の圧力、どっちのほうが怖いかという問いに行き着く。SVTのニュースのコメント欄の反応を見て見ると、ほとんどの人が国営放送化に反対しているようだ。たとえば、「強制的に税金で払わせるなんてありえない」「社会民主党色の放送局に税金なんて払いたくない」「今でもお腹いっぱいのプロパガンダがさらに増える」「民営化して競争原理を入れろ!」など。
スウェーデンの公共放送のサービス自体はそれなりに人々に支持されているはずだが、「国営放送化」についてはさすがに眉を潜める人もいるようだ。私は上であげたように、スウェーデンでは、商業化の圧力の方が(ジャーナリズムにとって)危険と考えている。