ジャーナリズムの本当の敵とは②

 の投稿で、ニック•デイビスの本から、英国のジャーナリズムは真実を報道できなくなっている、ということをまとめた。彼は、ジャーナリズムの最も大きな敵は、「国家による統制」でもなく、「広告主の圧力」でもなく、「オーナーの要求」でもなく、「商業化の圧力」にあると説いている。そして、ジャーナリズムの危機は今後も加速度的に悪化していく。インターネットが市場を奪うからだ。

 しかし、そもそも、これまでの「プロフェッショナル」のジャーナリストが社会に必要な情報を独占的に提供するというモデルは古いのではないか? 大手新聞メディアが市場から撤退したとしても、ソーシャルメディアが新しいジャーナリズムのモデルを作り出すのではないか? 新しいテクノロジーを駆使すれば必要な情報を素早く正確に伝えるモデルを作れるのではないか?

 ニック•デイビスは、こういう希望的なシナリオを「あり得ない」と一蹴する。

 インターネット、とりわけソーシャルメディアの出現によって人々の一次情報に対する「意見のやり取り」は増えたが、そもそも、そうした意見が参照する一次情報の成否を確認する(ファクトチェックをする)人間の数は減少している。国政でも地方自治体でも細部まで確認し報道する人がいなくなると、官庁や企業に都合の良い「PR広報」ばかりが氾濫することになる。現に多くの国々(特にアメリカ!)でそういうことが起こりつつある。

 つまり、ソーシャルメディアは補完的な役割を果たすが、大手メディア(主に新聞)を代替するまでにはいかない、という。プロフェッショナルのジャーナリストがそれなりに「フィルター」をかけて「真実」を報道する。それに、ソーシャルメディアが「解説」「批判」「修正」を加えることで、健全な言論空間が生まれる。ソーシャルメディアだけで、必要な情報を提供することはできない、という意見である。
 
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 大手メディアに生き残る道はあるのか? 現在、大きく二つのモデルが考えられる。

 一つは、アメリカで生まれつつある「寄付金(非営利)」によって支えられるジャーナリズム。例えば、Pro-Publikaなどがフロントランナーのモデルとして知られている。2007年にスタートしたときは、全体収入のほとんどを特定の資産家(Sandlers)に頼っていたが、2011年には、他からの寄付金が半分の収入を占めるまでになった(2011年は全体収入1000万ドル)。編集部には40人を超えるジャーナリストが働いているという。こうした寄付モデルには他にも、Democracy NowというオルタナティブTVなどが存在する。これもPro-Publikaと同じように、主に資産家や市民の寄付金によって支えられている。

 もう一つは、ジャーナリズムの活動への公共的な支援。一番分かりやすいのは、BBCやNHKなどの公共放送である。これなら、スポンサーや広告主を気にすることなく「有益な」報道活動を維持できる。ただ、アメリカでは商業メディアの影響力が強いため、公共放送の役割が限りなく小さくなっている。イギリスでも「受信料で成り立っている公共放送が民間のメディアの成長を阻害している」としてBBCがどんどん縮小されている。

ジャーナリズムを公共的に支えるという意味では、スウェーデンの事例は大いに参考になる。同国の公共放送であるSVT、また公共ラジオのSverigesRadioは、お互いに独立して運営をしているため、お互いの監視ができるようになっている。また、ここで流されるニュースは「(原則的に)無料で」他の放送局や報道機関に提供されている。また、オンラインでほぼすべて無料で見れる。(追記:2012年時点では、同国政府は、公共放送を財政的な基盤を確保するために国営化をするとの方針を打ち出している)

 また、新聞社に対して「補助金(Presstöd)」が出ている(他の欧州のいくつかの国にも同様の仕組みがある)。たくさんの新聞があることは多様な言論を維持する上で必要不可欠との考えのもと、例えば、左派系の新聞とバランスを取るために、保守系の大手新聞のSvDには毎年6億円近くの補助金が入っている。また、新聞に対する消費税の軽減税率も存在する。スウェーデンでは、書籍や新聞の消費税は6%まで引き下げられている。

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 さて、同じく衰退が進む日本の大手メディアをどうすればいいのか?

 これまで述べてきた論理からすれば、公共放送のNHKは維持、新聞は保護(軽減税率&各補助金)するべきという結論になる。だが、言うまでもなく、税金の投入は国民の信頼があってこそ成り立つものだ。スウェーデンで公共放送が維持され、SvDに補助金を入れても良いというのは国民がジャーナリストの仕事にある程度の信頼を持っているからだろう(もちろんスウェーデンでも受信料や新聞補助金に反対する人はそれなりにいるが)。

政府が消費税を上げるときを考えるとよい。消費税を上げる場合、それが有益に使われるという信頼感がなければ、当然、国民から反対が出てくる。新聞(及びテレビ)がきちんと報道しないという不信感がある中では、軽減税率に対する賛成は得られにくいだろう。もし日本の新聞社が補助金が欲しいというのであれば、新聞の構造改革が不可欠だ。政局中心の報道や無駄な選挙速報、他社との(早いか遅いかの)特ダネ競争を改める、そして(高齢世代の)さらなる給与カットと(無駄にお金の掛かる)労働環境の改善に取り組む必要があるだろう。

 民主主義が健全に機能するためには、(健全な)新聞社と公共放送は不可欠な存在である。日本の新聞や公共放送が十分に機能していないとしても、その代わりを果たせるメディアが存在しない以上は、当面はこれらを維持する他はない。公共的な役割を持っている以上、市場のニーズに答えられないから退場させればいいというわけではない。報道の質が悪くても、ないよりはあった方がましだ、というのが私の「暫定的な」結論である。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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