今回のエネルギーワークショップで、私は二つのグループに所属していた。一つは、原子力発電グループ、もう一つは声明文の作成グループ。原発グループでは、私がモデレーターとして、「脱原発は可能か」について検討した。
まず、原発の良い点と悪い点について議論を行なったあと、具体的にどのように脱原発を進めるのか、そのためにはどういう課題があるのか、ドイツの事例などを元に話し合った。
原発の良い点と悪い点について、次のような意見が出た。
良い点:
1、温室効果ガスをあまり排出しない、
2、大規模で安定的に電気を供給できる、
3、比較的に安い(疑問)
悪い点:
1、ウランが枯渇する
2、廃棄物処理の問題
3、中央集約型のエネルギーシステムなので少数の企業による市場の寡占を招く
4、核拡散に繋がる可能性がある
5、事故は起こりうる
6、一度事故が起これば、損害は計り知れない(フクシマ)
もちろん、大多数の参加者は、プラス面よりもマイナス面の方が圧倒的に大きいとして脱原発の立場だ。だが、どのようにして脱原発を達成するかは微妙に意見が分かれた。
まず、脱原発を行なうためには、次のトレードオフの関係を考慮する必要がある。1脱原発 ⇄ 経済成長、 2脱原発 ⇄ CO2排出。つまり、1、脱原発を進めれば、安定的なエネルギー供給が難しくなるので、経済/生産活動にマイナス影響が出る可能性がある。2、脱原発を進めれば、化石燃料やガスの使用が増え、C02排出が増加する可能性がある。
ドイツの事例をもとに考えてみる。現在のドイツの電力供給は、2010年と2020年(目標)では、次の通りで、2020年までに温室効果ガスの40%削減という目標を掲げている。
これらの数値から分かるのは、上記の2「脱原発とCO2削減の両立」に関しては解決できそうだが、1「脱原発と経済成長の両立」については、クエスチョンマークが残りそうということ。ドイツは、原発のかわりに、天然ガスと再生可能エネルギーで賄う計画である。
2については、化石燃料を減らしつつ、天然ガスを増やすことで、CO2排出を増やさずに脱原発が可能である。だが、1については、近隣国からの電力輸入による電力価格の上昇、将来的な天然ガスの価格の上昇、また、再生可能エネルギー(自然エネルギー)グリッドシステムの普及の不透明性などから、色々な難しさが考えられる。
特に、原発に代わるエネルギーを賄おうとすれば、再生可能エネルギー(太陽光/風力/地熱)があるだけでは不十分で、それを安定的に供給するための、地域内/地域間をつなぐ送電(グリッド)システムの構築が不可欠となる。しかし、これには大規模な投資はもちろんのこと、環境アセスメント、住民の説得/理解が必要になる。誰でも自分の家の裏庭に、送電線など建ててほしくない(「Not in my backyard」)。
緑の党の党員のなかでも、再生可能エネルギーを早く増やすために国を横断する大規模のスーパーグリッドを構築するべき(で、そのために送電線を国営化するべき)という人もいれば、スーパーグリッドは大規模化/中央集権化に繋がるから嫌だという人もいる。
急進派は、経済成長を維持しようという目標が間違っていると批判し、人間の生活様式や経済システムを変革し、エネルギー需要を減らすことを最優先に考える(車に乗らない/飛行機に乗らない/肉を食べない)。エネルギーシステムの大規模化/中央集権化にも反対する。
穏健派は、経済成長への影響に考慮しながら、部分的な改革を進めようとする(エコカーに乗り換える/肉をなるべく食べない/省エネを進める)。もちろん、多くの人達は、その両方を同時にやればといいと思っているし、私も真ん中にしか答えはないという立場だ。つまり、①省エネ/節エネを通じて、エネルギー需要を減らしながら、②再生可能エネルギーとグリッドの構築を進める。結局はこれらをバランス良く進めていくしかないだろう。
(ちなみに日本は、欧州みたいに国外から電力の輸入ができないから、ドイツを脱原発のモデルにするべきではない人がいうが、それをいうなら、日本は世界で屈指の災害大国なのだから、そもそも原発を作るべきではないといいたい。フクシマの事故をみれば、日本にとって原発が最もリスキーな選択だったことが分かる。ドイツの例でも分かるように、脱原発を達成するためには短期的なコストは掛かるが、長期的にはペイするはずである。日本にはまだ省エネの余地も再生可能エネルギーの技術のポテンシャルもある。少なくとも、2020年までにドイツよりも先に脱原発するべきである)
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