先週は多くの時間を欧州議会で過ごしていた。私の修士論文のテーマが「欧州議会における政党政治と議員の行動原理」で、共通漁業政策をケーススタディーとして扱う予定なので、その下準備のための調査を兼ねていたのである。
スウェーデン環境党の欧州議員、イサベラ=ロヴィーンさんを通じて、漁業委員会やセミナーを傍聴、他の欧州議員や政策アドバイザー、NGOで働くエキスパートなどを紹介してもらった。EUの政策決定の研究を行なう場合、一定の期間ブリュッセルにいないとダメだと痛感した。インタビューができないし、データも手に入らない。EUの機関でインターン先を見つけて滞在するのが一番理想的ではあるが、これも中々難しい。これから選択肢を詰めて実行するしかない。やることがたくさんあって大変だ。
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EUの漁業政策は相変わらず失敗で悪循環が続いている。今、共通漁業政策の改革の中身が議論されているが、現行案では根本的な問題の解決にならない。乱獲をすれば、魚の数が少なくなる。魚の数が少なくなれば、漁業者の取り分は少なくなる。それでも取ろうとすれば、小さな魚から根こそぎ取ることになり、次の年にはさらに取り分が少なくなる…。まさに悪循環だ。
欧州緑の党の立場は、1年〜3年くらいの期間での完全漁業禁止である。こうした措置を取ることで、数年後に魚の数が回復するだけでなく。魚のサイズも大きくなるので、漁業者が利益として受け取る分も大きくなる。逆に毎年20%の漁獲削減を実施すると、魚の数は少しずつ回復するが、ペースが遅い。早く完全禁止をした方が、結果的にはより早く、漁業者の利益が増える。でも、漁船を休ませることは漁業者にとって耐えられないから、大きな反対が起こる。休業保障などでなどの措置を入れるしかないのだが、問題は理性ではなく感情だから受け入れられない。
また、来週、ストラスブルグの欧州議会で、EUとモロッコの漁業協定の更新に関する投票が行なわれる。EUの船がアフリカの海で漁業する権利を与えるのかどうか(特にモロッコには西サハラというモロッコが実行支配する紛争地帯がある)が問われている。
どの政党がどう投票するのか興味深いケースである。例えば、欧州保守党グループは、モロッコとの漁業協定の更新に賛成の方針であるが、スウェーデンなどの北欧を中心とする欧州議員の多くは、これに反対している。先日の漁業委員会の投票では、更新に賛成する人が多数派だったが、ストラスブルグの総会では、結果がひっくり返る可能性がある。楽しみである。