今年はノーベル賞の秋

 う十月になった。自転車で大学に向かうとき、冷たい風が手と足に直撃する。木の葉が赤く染まっては早々と散り、道路へと積み重なる。いつもの町並みから色が落ちていることに、ハッとする。一週間前まで夏の終わりくらいに思っていたら、もう秋が終わり始めている。
 スウェーデンに交換留学で来ていたとき、毎朝、ルームメイトたちと森をジョギングしていた。見る見るうちに木々の葉っぱが赤に変わった。昼と夜の温度差が厳しいからだろうか、スウェーデンの真っ赤な紅葉の美しさに感動した。友達と一緒にキノコ狩りをし、パスタにして食べたことも、昨日のことのようだ。スウェーデンに来た人は、夏の澄んだ空と輝ける太陽が好きだという。私は、ホタルのように激しく輝き消える秋にこそ、美を見出したい。
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 今年のスウェーデンの秋が思い出になるかどうかー。
 それは村上春樹のノーベル賞受賞に掛かっているといっても過言ではない。私は、毎年のように村上のノーベル賞受賞を楽しみにしている一人である。これまで二年間スウェーデンで秋を過ごしているが、その度に大いなる期待を抱き、その度に悔しさを味わってきた。来年スウェーデンにいるかどうかわからない。もしかしたら今年が最後かもしれない。今年こそぜひとも受賞してほしい。もし本当に受賞したらストックホルムの市庁舎に行ってこようと思う。
 今年のノーベル賞は木曜日に発表される。スウェーデンの新聞やテレビでは、ノーベル賞候補者の予測を始めており、村上は有力候補に上げられている。私の主観的観測を抜きにしても、村上の文学賞受賞の可能性は高いはずだ。
 今年、「1Q84」のスウェーデン語翻訳が英語版よりも先に出版され、新聞の書評欄ではこぞって取り上げられた。映画「ノルウェーの森」も公開された。「走ることについて語るときに僕の語ること」のスウェーデン語版もよく売れている。また、何よりも、大地震が起き、世界中が日本に注目した年でもある。村上春樹は、地震をテーマに「神の子供達はみな踊る」を書いている。これでは村上を選ばない方が不思議というものではないか。
 ただ、もしも村上が文学賞を取ってしまったら、その後に誰が続くことが出来るのだろうか?村上なき後で、世界に羽ばたける日本人の文学者がいるのだろうか? 毎年の秋の「行事」が無くなってしまうのはそれはそれで寂しい。楽しみにしていた遠足が終わった後のように。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: スウェーデン(その他) パーマリンク

今年はノーベル賞の秋 への4件のフィードバック

  1. えふたか より:

    今年は楽しみですね。ホントに。

  2. おぐし より:

    我がことのように楽しみですね。まあ、競馬を見るみたいに(見に行ったことないけど)、朝からビールを飲みながら待ってようと思います。笑。

  3. esora より:

    はじめまして。ひょんな事でここのサイトを拝見しました。論考文、興味深く拝見しました。最近考えていた事で、はっとさせられた箇所があり、もし良ければここの、次の日記での、原発についてのコメントを引用させて頂いてもよろしいでしょうか? なぜこっちに書き込ませて頂いたかというと、こっちの村上氏の受賞を待つ記事が好きだったからです。それはまた来年、ですね。笑

  4. おぐし より:

    Erosaさん
    コメントありがとうございます。私のブログは基本的にすべてフリーです。どうぞご自由に引用してくださいませ。それにしても、村上さんダメでしたね。くやしい。こりずに来年の受賞を期待しています。笑。

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