環境党青年部の年次総会2

 境党青年部の年次総会の二日目。この日の主なスケジュールは、青年部代表の二人(男女)を選挙で選ぶこと、各々の党員が提出した政策提案を一つ一つ吟味することだ。以下では、代表選挙の様子を少し紹介する。

 青年部の代表と聞くと、日本の政党の学生部の代表みたいにパッとしない存在に聞こえるかもしれないが、スウェーデンではそれなりの社会的な地位があり、世間の認知度も高い。特に総選挙のある年には新聞などのメディアへの露出も多い。青年部の党員とのコミュニケーションだけでなく、新聞に政策意見を書いたり、メディアに広報活動(PR)するのも代表の大きな役割である。

 今年の代表選挙の候補者は、女性はレベッカ•カールソンだけでそのまま当選となったが、男性の枠には四人の応募があったため競争選挙となった。候補者らに与えられたプレゼンの時間は2分だけで、この短い時間枠で自分の経験、理念、政策を訴えることになる。

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          右からレベッカ、4人の男性候補者たち。

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 :代表候補者の投票用紙。ここに第一希望から第四希望まで書くことができる。その順位に合わせて異なるポイントが与えられる。つまり、第一希望として投票した候補者が第三位や第四位だった場合でも、自分の意思ができるだけ公平に反映させる仕組みになっている。

 党員は何を見て代表を選ぶのかー。基本的には事前に渡されたマニフェストやブログでの主張を見て基礎的な情報を頭に入れておき、前日の質問会や当日のプレゼンテーションの内容で最終決定を下すことになる。ただ、政策の方向性に関しては大きな違いはあまり見られないので(同じ党に所属していてイデオロギーに大きな差があったら困る)、基本的には人柄やスピーチの感触で選ぶことになる。日本の流行で言えば、「人間力」で選ぶという感じだろうか。

 今回、一人だけ特別に個性的な候補者がいた。ユーリというストックホルム大学修士課程の学生で、「平和運動」に一点集中してスピーチを行った。彼は、スウェーデンの北部にある「北ヨーロッパ航空試験場」(NEAT)を一切無くし、「武器輸出」を禁止し、先進国で最初の「非武装中立国」になり、「ガンジーのように非暴力の思想を広げていこう」と主張した。

 (補足:「北ヨーロッパ航空試験場(NEAT)」はヨーロッパ最大の軍事演習場で、NATO軍やアメリカ軍も使用している。スウェーデンはNATOには加盟していないが、NATOとはパートナーシップを結んでおり、アフガニスタンなどのNATOの軍事行動に参加している。環境党の一部のメンバーは2月初旬に「戦争はここから始まる」という反対キャンペーンをスタートした。日本でもよく知られた話だが、スウェーデンは一人当たりの武器輸出額は世界第二位で、エジプトにも武器輸出をしている)

 候補者のプレゼンテーションの後、他の党員による応援演説が行われた。応援演説の参加者は15人で、その割当は公平にくじ引きで選ばれる。応援演説をしたい人は、自分の参加番号を書いた紙を箱に入れ、選挙管理委員会がそこからランダムに選び出すことになっている。しかし、この時参加者から「ランダムに選び出す前に男女の数を公平にするべきだ」という声が出た。これを議長が妥当と判断、すぐに多数決の採決が取られた。その結果、応援演説の割当は男女「公平」になった。

 選ばれた参加者は1分間で応援演説する。それぞれ堂に入ったスピーチだったが、その多くが「非武装中立」を唱えたユーリへの支持表明だった。こののちすぐに投票を行った。

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 この写真は、執行部候補者のプレゼンテーションの様子。これも一人当たりきっちり1分間。少しでもオーバーすると途中で遮られる。また、演説中に拍手を行うことは妨げになるため禁止されている。青年部では、自分の顔の当たりで両方の掌を横にヒラヒラさせることでスピーカーに対する賛意を表現する。素晴らしい演説があると、参加者の手がずっと動き続ける。ほとんどの候補者は時間通りに終えるが、たまに緊張して失語したり、時間オーバーする人がいる。演説が上手くいなかった参加者は残念な表情を浮かべながらステージを後にする。

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 さて、代表選挙の結果が出た。女性枠ではレベッカ、男性枠ではビョーンに決まった。二人とも誰もが認める優等生、環境党青年部での経験も豊富で、現実主義でバランスが取れている。もともと予想されていた通りの結果となった。ただ、個人的には「スウェーデンの非武装中立化」を唱えたユリを支持していたので少し残念だった。

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               投票結果を受けての反応

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        夜の21時半に会議が終わった。その後はノンアルコールジュースでパーティー。

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(政治・社会), 政治参加・投票率・若者政策 タグ: パーマリンク

環境党青年部の年次総会2 への2件のフィードバック

  1. kaoru より:

    たまに、勝手に遊びに来ているものです。
    今回は質問があり、コメントしました!
    写真の人たちの多くは半そでですが、
    スウェーデンの室内は冬でも暖かいんですか?
    くだらない質問ですみません・・・
    ものすごく気になって。
    暖房器具はどのようなものなんですか?
    エアコン?暖炉?
    日本では、夏は一枚脱いで、冬は一枚多くきてエコしよう
    みたいな空気がありますよね。
    スェーデンはどうなんでしょうか?

  2. おぐし より:

    Kaoruさん
    すいません、コメント来ていることに気がつきませんで。。。
    スウェーデンの室内は暖かいですよ。建物には断熱材がしっかり入っているので熱が逃げません。暖房は地域暖房システムになります。発電所から生まれた熱をそのまま熱湯の形でパイプを通して地域内の建物に分配しています。
    >日本では、夏は一枚脱いで、冬は一枚多くきてエコしようみたいな空気がありますよね。スェーデンはどうなんでしょうか?
    食に関してはエコマークのついたものを購入することは浸透していますが、日本で流行っている(?)電気の消費を自主的に減らすとか、クールビズをするとか、マイ箸、マイバックを持ち歩くとか、そういう意識の変革によって地球温暖化を防ごうみたいな感覚は日本ほど強くないと思います。スウェーデンの場合はむしろ、社会の仕組みを変えること(つまり政治を変えること、政策を変えること)でエコを進めようという意識はとても強いと感じています。

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