続-児童ポルノに関するテレビの報道番組

 ウェーデンの公共放送で、シーモンさんのエロマンガの所持の有罪判決に関する報道番組を流していた。毎週日曜日のAgendaというニュース番組のなかの、レポート&ディベートの10分程の枠。「色々な意味」で面白かったので紹介する。ここから視聴もできる。

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 アジェンダーいつも冷静沈着なニュースキャスター。

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 〜レポートの導入コメント〜
 「ショックを受けました。マンガの表現を巡って、モラルパニックが起こるなんて」。

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 ウプサラの警察署。シーモンさんのコンピューターから押収されたマンガの画像は、警察署の一室に厳重(!)に保管されている。ここでレポーターは警察官と会合する。

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 ナレーター「ここには児童ポルノ法に抵触するマンガの絵が保管されています。マンガの絵は機密文書扱いとされており、閲覧するには特別な許可が必要となります。児童ポルノとされたマンガを見ることは犯罪となるため、テレビに映すことはできません」

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 レポーター「 私の目の前には問題のマンガの絵があります。こどもが、、、様々な体位で、セックスをしています。その中には年上に見える人もいます。。。でも、これは単なるマンガの絵ですよね?違法なんですか?」

 ウプサラ警察署のセシリアさん「法律の前例に従えば、マンガの絵であろうと、コンピューターの中にあるアニメーションであろうと、すべての描写が適用の範囲になります」

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 ナレーター「マンガ絵は、日本のコミック文化の一つです。最も知られているは、若者を描いたマンガですが、他にも、エロ要素を含んだものもあります」

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 マンガ書店員のスタファンさん「(ニュースを聞いて)恐ろしくなりました。実際に児童ポルノと指定されたマンガの絵は公開されていないわけですから、どういうマンガが法律に違反するのかわかりませんでした。マンガを燃やせということかと思いました」

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 ナレーター「有罪判決を受けた被告は、著名なマンガ翻訳者の一人で、違法とされたものは、様々なマンガの描写の寄せ集めでした」

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 マンガ図書館の司書のクリスティーナさん「今回の判決は、文学作品のなかに児童ポルノの描写があると主張するのと同じくらいおかしなものです。単なる絵ですよ。誰が何をしたっていうんですか。マンガの描写を読んだだけで、人は犯罪を犯すわけではありません」

 再び、警察官のセシリアさん「このマンガ絵は、児童ポルノに当たると思います。彼ら(マンガのキャラクター)は思春期の発達過程を完全に超えていません」

 レポーターー「でも、それでも、単なる絵ですよね?」

 セシリアさん「生身の人間が曝されているかどうかは問題ではありません。これは、子供という存在に対する侵害に当たります」

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                     〜ディベート開始〜

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 海賊党の(新)党首のアンナさん「今回の有罪判決は現行の法律に従ったものといえます。しかしながら、問題なのは、その法律が間違っていることです。単なる描写であり、現実に子供が被害に会っているわけではありません。行き過ぎです。おかしいです。

 海賊党「警察はこんなことにお金と時間を費やすくらいならば、現実に被害に合っている子供を救うために働くべきではないでしょうか」

 司会者「(隣を向いて)どう考えていますか?」

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 子どもを救う会のオーロフさん「このような性的な犯罪が許されるわけにはいきません。明らかに許容レベルを超えています。例外を作ってはいけません。これは複雑な問題ですが、子供には身の安全と保護が必要です。今回のマンガ絵は重大な虐待に当たります」

  海賊党「子供を虐待したり、まして(子供の裸を)写真に残すなんてことはあってはいけません。でも、ポルノ法は現実の子供を守るためのものです。マンガは関係ありません」

 子供を救う会「その通りです。マンガの中の子供は、現実の子供とは違います。でも、重大な問題を示しています。性的虐待には解決策はありません。明らかなことは、これに対してOKといえないことです。子供はあらゆる方法で保護されるべきです」

 海賊党「犯罪に合ったことのある子供にとっては辛い問題なこと(?)は確かです。でも、他のおぞましい写真と比べて見てください。新聞には死体や怪我をした人の写真が載っています。それらをみれば人は困惑するでしょう。私も、あなたも、そういうものに日々触れているのです。いくつかの写真は不快に感じるかもしれません。でも、どう思うかは人の主観です。児童ポルノ法はたしかに曖昧ですが、明らかな境界線は存在します。それは、現実の子供が被害に会っているかどうか、現実に写真に撮られているか配布されているかという点です」。

 司会者「性的虐待について文章で表現することは禁止されていませんよね?」

 子供を救う会「それは良い質問ですが、私は良い答えを持っていません。この件を通じて考えていきたいと思います。私はビデオに撮られたを子供に会ったことがありますし、子供が虐待されている写真について考えてきました」

 海賊党「現実にはグレーゾーンがあります。私は、芸術と文学を専攻していました。私が研究をしていたときは、芸術関連の本のなかには、多くの表現や作品が掲載されていましたが、そのほとんどが現在では違法に当たります。(??)。。つまり、私が言いたいことは、境界線は、現実の子供が被害を受けているかどうかということです」

 司会者「(隣を向いて)境界線はどうやって引きますか?」

 子供を救う会「境界線があることは良いことだと思います。法律による線引きは、表現の自由を侵害するかもしれませんが、でも、ほんの少しです。法律が出来てから、何か状況が悪くなったりしましたか? 大半のスウェーデン人は、このような絵をおぞましく感じています。私は芸術の専門家ではありません。子供の虐待は改善されるべきです」
 
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 司会者「時間になりました。お二人とも忙しいところ来てくれてありがとう。ちなみに、後ろのマンガ絵は、児童ポルノ法には違反していませんので、ご安心を!それでは、さよなら」

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: スウェーデン, スウェーデン(政治・社会) タグ: パーマリンク

続-児童ポルノに関するテレビの報道番組 への8件のフィードバック

  1. 名無し より:

    翻訳お疲れ様です。
    この問題は非常に為になります、日本でも同じような問題が起きてますから。
    これからもがんばってください。

  2. Tassa より:

    はじめまして!@heatwave_p2pさんのツイッターでこちらのエントリを知りました。
    私もスウェーデン在住なので、この漫画裁判についてちゃんと書かなきゃなあ、と思っていたので、このエントリを読んで嬉しくなりました!
    私もこの回のAgendaは見たのですが、討論部分が短くなっちゃってて残念でした。(Troberg党首、WL関連のTV出演予定があった時も自爆テロで、番組自体がなくなるということもありました。。)
    そういえば51点のうちの1点は『ラブひな』からだったそうです。
    http://falkvinge.net/2010/07/26/nu-far-det-vara-slut-pa-kungligt-sanktionerade-bokbal
    (元海賊党党首Falkvingeのブログより)

  3. おぐし より:

    名無しさん
    シーモンさんには頑張ってもらいたいと思います。もし最高裁の判決が出ればヨーロッパにも影響を与えることになりますからその意味は大きいでしょう。僕ができることはほとんどありませんが、せめて応援したいと思っています。
    Tassaさん
    コメントありがとうございます。そうそう、51点の中には、「ラブひな」も入っていたんですね。変な話です。「ラブひな」を出版しているのはBonniersなので、今回の判決内容が違っていたら自分たちの商品である「ラブひな」を販売できなくなっていたところです。それなのに、Bonniersはシーモンさんとの契約を打ち切って裁判も放棄してしまいました。自分たちは「エロ要素」を少しでも含むマンガは販売しませんということなんでしょうかね。

  4. 555 より:

    はじめまして。KAMAYAN1192さんのTWITTERチェックからここにきました。 
    両者の討論が子どもを守るの一致点を持ちながら、日本と同じように
    漫画にどのように携わっているかで実在・非実在についてどのように
    考えているかの齟齬がハッキリと現れているのだと感じました。 
    そして子どもを救う会のオーロフさんの発言はスェーデンの法文化に道徳的規範が存在しているのですね。

  5. おぐし より:

    555さん
    コメントありがとうございます。
    >スェーデンの法文化に道徳的規範が存在しているのですね。
    この点はディスカッションのポイントとして面白い点だと個人的には思っています。スウェーデンや西洋諸国には児童ポルノに対する文化に根ざした道徳的な拒否感があることは事実でしょう。スウェーデン人に聞くと、今回の判決に関して「行き過ぎ」という点では一致するものの、文化のベースに違いもあるということで「仕方ない」と言われることも多いです。
    これは理解はできるのですが、私にはダブルスタンダードにも思えます。私が見るところ、これは表現の自由という西洋諸国が大切にしてきた「普遍的な価値」の核心的な問題です。「普遍的な価値」は国の文化に関係なく共有されるべきだいうことを常日頃から言っているにもかかわらず、自国の内政に関することは「文化の違い」という都合の良い言葉を使ってお茶を濁してしまう。これにはやはり不愉快な気持ちを覚えます。もしも「文化の違い」だから仕方ないというのであれば、スウェーデンの誇る(!)男女平等という「普遍的な価値」ですら「文化の違い」だから仕方ないということになってしまいます。
    「普遍的な価値」を積極的に推進するスウェーデンは個人的に割と好きなので、こういうダブルスタンダードはやめてほしいと思います。

  6. うーん、偏頭痛やら肩凝りがひどい

    この前(震災前)からの偏頭痛や肩凝りが半端ない

  7. なは より:

    私てっきり、西洋諸国の多くの人々は「実在しない児童の性描写」を悪と考えてると思っていたのですが、以外にもこの逮捕に関して驚いている人が多いと知って安心しました。(まっ、あんな法律が通ったら嫌という不安は残るけど)
    一度通ってしまえば可笑しな法律も納得されてしまうのかと不安でしたが、やっぱりそうではないんですね。

  8. メタ的な認知、リサーチリテラシー能力の崩壊 より:

    俗流若者論もそうですが
    いろいろと悲しいですね。
    こんなのに対してフォークデビル形成するほど社会の大人は・・
    頭の中で本気で現実とリンクできる人たちばかりなんですね。
    それって頭やばいだけですよ。
    哲学的リテラシーの崩壊、人間の崩壊がマスゴミの悲願でしょう

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