新聞のなかのスウェーデン言説

 とつ前の投稿のスウェーデンパラドックスという本に関する追記です。 
 私の副専攻だったメディア•ジャーナリズム研究の論文(2009年)のタイトルは、「新聞の中のスウェーデン言説」というもので、朝日新聞を事例にして、1945年からスウェーデンがどのように取り上げられ描かれてきたかを分析した。現代的な文脈での問題意識は、スウェーデンに関する記事には、スウェーデンの「強い経済•競争社会」という視点が抜け落ちている、という点だった。今回のスウェーデンパラドックスという本は、このようにバランスを欠いてきたスウェーデン言説を埋めるものとして最適の一冊といえるだろう。
 ちなみに新聞分析(特集記事)のまとめの文は以下のとおり。
 「1960年代までの戦後の時期は、スウェーデンの全体像を浮き上がらせるような丸々一ページを使った特集が多かった。そこでは「武装中立」や「国連軍」についての言及、そして経済状況、社会保障・福祉制度などを総合的に紹介している。端的にいえば、福祉国家のモデルとしてのお手本のようなイメージが築き上げられている。また、60年代はそれとともに映画をはじめとした文化面についても取り上げられている。とくにフリーセックス(神話)については、それを取材する記者自身が好奇心と驚きを持って伝えている」。
 
 「1970年代に入ると、社会民主党の政権交代に象徴されるように「福祉国家の後退」が紙面でも大きく伝えられ、福祉国家に対する批判的な分析も含めて、社会保障・福祉の分野についての記事数が増加する。加えて1980年代に入ると、それまでのスウェーデンに対する関心が、環境、原発、行政、メディア(匿名報道)など多様な分野へと拡散していく」。
 「そして1990年代後半からは福祉国家に対する批判的な言説が消えてゆき、福祉の分野でも、介護、年金、少子化、子育てなどのように個別具体的な政策に焦点を当てた特集が多く組まれるようになる。スウェーデンの「福祉国家のモデル」というイメージは、21世紀に入っても継続している。だが、記事の焦点が個別具体的になればなるほど、スウェーデンモデルを底支えする「経済成長」や「国際競争力」という視点からの指摘が少なくなり、「手厚い福祉」という自分たちのフレームに沿う点だけを抜き取って報道している。つまり、スウェーデンの「つまみ食い」(土居丈朗)という現象が起きている、といえる」。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: スウェーデン(その他), スウェーデン(政治・社会), 評論・書評・感想 パーマリンク

新聞のなかのスウェーデン言説 への2件のフィードバック

  1. dojin より:

    これは面白いテーマの論文ですね!機会があれば是非読ませてください。

  2. おぐし より:

    Dojinさん
    お久しぶりです。論文というにはとても値しない期末試験のレポートみたいな内容で恐縮ですが、あとで添付ファイルで送らせてもらいます。ちなみに問題意識の枠組みは「日本は北欧から何を学んだか」(吉武信彦)より拝借しました。

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