シェルターライフ

 回は、大学院について書こう。やはり大学院ともなると、それなりに忙しい。交換留学のときよりも断然に自由な時間が制限されている。ここ3週間ほどは週末以外ほぼ朝から晩まで図書館に引きこもっている。家から大学まで10秒で行けるので、本当に缶詰のようなシェルターライフである。ただ、セミナーも学ぶところが多いし、セミナーの学友たちも真摯によく勉強している。
 セミナーの後には、ステファノ教授(ドイツ人)の泊まっているホテルで、ドキュメンタリー鑑賞会がある。一緒に夕食とワインを摘みながら、ゲリラやテロリズムに関するドキュメンタリーを鑑賞し語り合う。スウェーデンの大学(あるいは欧米の大学)では、日本の大学のように教授の存在が身近ではないので、、彼のように学生に時間を割いてくれる教授は極めて珍しい。生活空間はかなり閉じられているが、その分密度の詰まった、充実した生活を送っていると思う。(唯一の、そして重大な懸念がスウェーデン語に時間を費やせていないという点である。頑張らなければ)
 スウェーデンの人文系の授業は本当にシンプルである。私が取っている授業は「国際政治」。9月から10月の二ヶ月間のコースで、一週間に一冊のペースで国際政治の理論ベースの本を読む。そして一週間に二回のセミナーが行われる。学生は、4〜5ページのレビューを教授に提出してセミナーに臨む。
 一週間に一冊というのは、日本の大学院の授業と比べても多いとはいえない。だからといって、多く読めば良いというものでもない。たくさんの授業を履修して、たくさんの課題図書を与えられると、それだけで多くを学んだ気分になるが、やはり大事なことは、自分がどれだけきちんと消化したかということだろう(ただ、きちんと批判的な見方をするためには、他の視点から書かれた本も読み込まなければならない。ここが難しいところでもある)
 課題図書の中には、マイケル•ウォルツァーの「正しい戦争と不正な戦争」が入っていた。すでに日本でも何度か読んだことがあり、彼の主張についてはよく知っていたつもりだったのだが、改めて原著で読み込んで彼の論理を追ってみると、これまで考えたこともなかった視点が見えてきた。例えば、ウォルツァーが「人類が共有できるモラルというものが存在する」という場合、そこには西洋世界が想定されているのではないか、といった具合に。
 一昨日、課題図書のレビューをすべて書き終わったので、月末に向けてファイナルペーパーを書かないといけない。が、まだトピックを決めかねている。使える時間が限られているので、まずは比較的に簡単そうな「国際レジーム」という概念を使って、気候変動の国際レジームがどのように形成されているかに当たろうと考えている。ただ、本当は、アイデンティティーが国家の方向性を規定するというコンストラクティビズムの視点から論文を書きたい!!
 これらがメインの課題図書。ステファノ教授は「パワー」という概念を専門に研究をしているので、コテコテの理論が多い。
 
Seminar 2: Theorising as Political Theory (3 hrs + 2 hrs)
Required reading:
Bull, Hedley (1977) The Anarchical Society: A Study of Order in World Politics, London: Macmillan.
Seminar 3: Theorising as Moral Theory (3 hrs + 2 hrs)
Required reading:
Walzer, Michael (1977 [2000]) Just and Unjust Wars: A Moral Argument with Historical Illustrations, 3rd ed, New York: Basic Books.
Seminar 4: Theorising as Theory Development (3 hrs + 2 hrs)
Required reading:
Hopf, Ted (2002) Social Construction of International Politics: Identities and Foreign Policies, Moscow, 1955 and 1999, Ithaca, NJ: Cornell University Press.
Seminar 5: Theorising as Paradigm-Comparison (3 hrs + 2 hrs)
Required reading:
Hasenclever, Andreas, Peter Mayer, and Volker Rittberger (1997) Theories of International Regimes, Cambridge: Cambridge University Press.
Seminar 6: Theorising as Meta-theorising (3 hrs + 2 hrs)
Required reading:
Wendt, Alexander (1999) Social Theory of International Politics, Cambridge: Cambridge University Press.

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: つぶやき・殴り書き, スウェーデン(その他) パーマリンク

シェルターライフ への2件のフィードバック

  1. Ak より:

    すげえ骨太ストレートにIR理論やってんだな!力付きそうじゃん。そして面白そう。うらやましい。

  2. おぐし より:

    AK氏
    どもども、お久しぶりです。骨太の理論ですけど、あんまり日本ではやってこなかったので面白いです。問題は、まあ、どういう事例を選ぶかということですけど。日本に帰ったらぜひ相談させてください(><)

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中