今週の火曜日、環境党の青年部のメンバーとともに選挙活動のために再び高校を訪れた。このときは、我々の他に「革命党」「穏健党(保守党)」「中央党」「キリスト教民主党」がブースを出していた。スウェーデンでは、総選挙の日程に合わせて、中学校と高校でも「模擬選挙(skolval)」を取り入れている(後に詳述予定)。いわゆる民主主義教育のためだ。二日後に模擬選挙を控えていることもあり、多くの生徒たちがブースへとやって来た。
「革命共産党」。初めて見た。国会に議席はない。ここに来ていた党員たちも革命家っぽいTシャツを着てコスプレしている。何となくゲバラ的でかっこ良いからか、このブースの中で、もっとも多くの学生達を引きつけていた。高校のブースでは、革命党、海賊党、スウェーデン民主党などの過激な党が注目の的になる。支持しているかは別にして。
キリスト教民主党。この英語での広告もそうだが、PRセンスのなさが如実に現れていて面白い。YOSHIさんが政党の政策パンフレットをまとめている。「より人間味のあるスウェーデン」。
環境党のブース。ここではメンバーが「環境党ミニクイズ」を用意している。これに挑戦すると、自転車サドルに被せる専用のカバーなど、ちょっとした環境グッズが貰えるようになっている。写真上の学生たちも、ミニクイズに挑戦している。
どういうクイズかというと、選択肢の中から、マルかバツで、環境党の政策を当てるというものだ。例えば、次のように。「君主制(共和制)」(バツ)「石油依存」(バツ)「原子力発電」(バツ)「投票権16歳」(マル)「より短い労働時間(週35時間)」(マル)「クオーター制度(女性枠の確保)」(マル)「動物ポルノ(虐待)」(バツ)。
私もやってみたが、ユニークな政策を知ることができて単純に面白い。何よりも、このようなクイズを用意することで、相手との対話が可能になるということが素晴らしい。「どうして環境党は君主制に反対なのか、そしてクオーター制度に賛成なのか」と。
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こういう「対話」の場があることは重要である。「生産的な対話空間」のことを、社会学の専門用語で(すごく単純化すれば)、「公共圏」と呼ぶが、スウェーデンでは、「公共圏」が生まれる要素が比較的に整っているように思う。それらの代表的な要素は、たとえば、上に挙げた学校を始めとする教育機関、市民団体、(マス)メディアなどであろう。
もちろん、スウェーデンでも、マスメディアに対する批判の声は聞こえてくる。環境党の青年部のメンバーの一人は、「スウェーデンのメディアにおける党首討論やディベートでは、自分の主張の正しさを主張するだけで、相手の主張には全く耳を傾けない。そこから何かを生み出すような生産的な議論が全くない」と、フェイスブックで不満を吐いていた。スウェーデンでも、マスメディアが部分的に「公共圏」の役割を果たせなくなっており、少しずつインターネットにお株を奪われている、ということかもしれない。
ただし、これは程度の問題でもある。国際比較でみた場合(といってもそれを計る基準はないので私の主観的な国際比較)、スウェーデンのメディアは「公共圏」の役割を果たしているし、学校を始めとした教育機関も、民主主義の維持と発展に大きく貢献している。一方で、日本のメディアや教育機関は、「公共圏」の役割を果たしているといえるだろうか? これはかなり疑問符が付くだろう。これについてはまた改めて詳しく書きたいと思う。