前の投稿で紹介した藤岡たかおさんが、参院選と同日に実施された杉並区長選挙に立候補したのだが、残念ながら、票が伸び悩んで負けてしまった。僕もこの一週間は毎日ずっとお手伝いをしていた。日中は、真っ赤なシャツを着て、マニフェストのチラシを配り、たまにマイクを手に取り演説も行った(これが意外に楽しいのだ)。
夜中は、荻窪駅の北口を拠点に車に泊り込んで陣取り合戦。最後の三日間は藤岡さんも疲れのピークを迎えたが、それでも駅前のチラシ配りと挨拶を朝の6時から始めた。ギンギンに照らす太陽を受けながら、それが延々と夜の0時まで続いた。さすがに、俺も途中でバテてきた。「お金も貰わずに何をしているんだろう」とふと思ったりした。でも、藤岡さんの選挙陣営には、ひたすら率先して働き続ける、献身的な人達がいた。大学生だけではない。社会人のなかにも自身の仕事が終わった後に来て、始発の電車で仕事場に帰っていく人、朝だけは欠かさず来てくれる人、有給休暇を取ってずっと手伝ってくれる人もいた。
他の人はあまりやってくれないけど、誰かがやらないといけないものは世の中にはたくさんあって、実際に誰かがそれをやってくれているからこそ、世の中はうまく動いている。こういう考え方はわりと好きである。彼らを見て、最後まで頑張ろう、と思った。
もちろん、藤岡さんには個人的にお世話になっていた。志のある真っ直ぐな人間だと知っていた。そして、今回の杉並区長の候補者の中では、彼が最も相応しい人間だと確信していた。各々の政策内容を比較すればすぐに分かることだ。こういう志を持ち、政策に通じた「まともな」人間が政治家にならないとダメだ。もし世の中に対して批評・批判をするのであれば、自分が「行動」として示していかないといけない。だから、出来る限り力になろう思った。
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この点では、杉並区長選挙に落選してしまったことは、本当に残念だった。今回、藤岡さんは、たくさんの政策のなかで、「区職員の給与の3割削減」に絞って選挙活動を行った。杉並区は、税収が減りつつあり、しかも東京都からの交付金(補助金=隠れ借金)を増やしているにも関わらず、自らの区役所の職員の給与はずっと高い水準で止まりしたままである。
この高い給与がどれくらいかというと、聞いてびっくり、平均で740万円である。杉並区の税収がずっと落ち込んできたなかで、多くの民間企業がリストラや給与カットを行ってきたなかで、区役所の給与だけがすごく高い水準で維持されている。藤岡さんのマニフェストに記載されている数値を上げると、杉並区の清掃職員(710万円)、学校給食員(644万円)、守衛(796万円)などとなっている。普通の民間の1.5倍から2倍の給与ではないか。
これから日本全体でも杉並区においても、税収が伸びることは考えにくい。でも、介護や医療、年金、子育て支援などにお金が必要になってくる。杉並区は、借金を積み上げることで、これらの増える社会保障費に対応していくつもり(将来世代にツケを回していくつもり)かもしれないが、本当に今必要とされていることは、寒風に晒されることなく丸々に太った杉並区職員の贅肉にメスを入れていくことだ。実際、杉並の区長、区議会議員や市役所の職員の給与を3割カットすれば、およそ100億円程度の財源を確保することができる。これらの財源を使えば、借金を最小限に抑えつつ、社会保障や保育、教育分野にも当てることができる。そもそも、行政側が改革の姿を見せずして、市民がついていくだろうか?
こういう当たり前の政策を打ち出していたのは、藤岡さんだけだった。他の候補者のチラシやホームページを見てみても、杉並区役所の給与の削減など触れてもいなし、そもそも現在の区政についての具体的な数値がない。有権者を馬鹿にしたような言葉遊びしか記載されていない(「しなやかで、やさしい区政」(千葉なおこ氏)「杉並の魅力・最大化」(田中良氏)。
また、今回当選した元都議会議長の田中良氏(民主党推薦)は、毎日新聞の記事のなかで、「具体的な政策については区長になってから検討する」という趣旨の発言をしている。具体的な政策など本当に何もなかったのだ。しかも、自民党の推薦の千葉なおこ氏と田中氏は離婚した元夫婦で、現在は田中氏の不倫に対して、千葉氏が(田中氏と田中氏の愛人を相手に)裁判を起こしている。常識的に考えて、この二人何かおかしい、って思わないのだろうか?
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まっとうな政策を掲げている人が評価されない―これは、本当に本当に悔しいことだ。こういう現実を実際に体験してしまうと、どうしようもない無力感でいっぱいになる。今回の杉並区長選挙は知名度や様々な面で準備不足は否めなかったが、それでも、選挙ポスターや新聞の選挙公報を見れば、藤岡の政策が明らかに違うことがすぐにわかるはず。人々は公務員の無駄に対して「許せない」と怒るくせに、なぜそれを投票で示さないのだろうか? やはり、人々にとって、選挙なんてどうでもよくて、政策内容なんて見る気もしないのだろう。僕たちは、もう何も変えられない。変えることなんてできやしない。
7月11日の朝日新聞の朝刊で「日本国民よりも、どうも政治家の方が程度が低いと感じる」という池澤夏樹氏のコメントが紹介されていたが、その診断は甘いと感じざるをえない(それは現実の分析というよりも、そう信じたいという池澤氏の願望の発露なのではないか)。
それは杉並区長選挙の結果だけではない。今回の参議院の比例選挙の結果も同じことだ。本当にショックを受けたのは、柔道の谷亮子(民主)氏が当選したことだ。いくら民主主義だからといって、こういう適当な選び方はしてはいけない。こうした候補者に対して「おかしい」「それはダメだよ」と言ってあげるのがまともな大人のすることではないのか。谷亮子氏が当選することはないと心の底から信じていたのに、日本国民の良心を信じていたのに、裏切られたような気持ちだ。壊れるところまで壊れないと、もう日本は立ち上がれないかもしれない。
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おつかれさまでした。
藤岡さんのすごさ?は折々聞いてはいたんですが、
なかなか実際には一度しかお会いしたことがなく今度チャンスがあったらお話してみたいです。
8月25日発ですよねスウェーデン???
ぴぃさん
どもども、ありがとー。藤岡さんはずっと温めてきた志があったわけだけど、それを行動に移したところがすごいよね。文句ばっかりいって何もしない大人が多い中で、リスクを負って突き進んだところは本当に尊敬するよ。これから当面どうするのかが少し心配だけど。。。
俺の出発は8月16日。タイ航空で行きます(^^)
杉並区長選挙 出口
なんとぉ~~~びっくりです!まさかっっっこんな事が今・・・・・・・・・もっと詳しくしりたい。。。。。。まずは、本日のおすすめ♩・・・男性の方、ご存じですか??いま、女性に人気の スッキリ美顔ローラー ゲルマニウムボール雑誌の「フロク」に美顔器・・・ついてるんですよ。知ってると、あのヒトに 尊敬されちゃいます。プレゼントにどうでしょう・・・スウェーデン留学日記:もう立ち上がれない、日本
前の投稿で紹介した藤岡たかおさんが、参院選と同日に実施された杉並区長選挙に立候補したのだが、残念ながら、票が伸び悩んで負けてしまった。僕もこの一週間は毎日ずっとお手伝いをしていた。日中は、赤いシャツを着て、マニフェストを配り、たまに …(続きを読む)
圧勝蓮舫氏 魅力はハキハキ? 島嶼部以外は得票トップ
2010年7月12日 「実績重視派」には、日本創新党で前杉並区長の山田宏氏が人気が高かった。 港区の主婦(41)は「私の投票基準は『実績』だけ。山田氏は杉並区長時代、希少資源保護のためにレジ袋を見直すなど斬新で身近な政策がおもしろいなあと眺めていた」という。 … (続きを読む)
激戦5議席:10参院選東京 民主2人維持 みんな初勝利(その2止) /東京
2010年7月11日 山田氏は杉並区長だった4月、中田宏・前横浜市長など地方自治体の首長経験者らと「今の日本の惨状は、国会議員に責任がある。永田町と一線を画して、新しい政治を打ち立てる」と主張して新党を結成した。当初は比例で出馬するとみられたが、5月になって東京選挙区からの … (続きを読む)
さて。。。だんだんと、暑い夏がやってきて、夜のビールが美味しくなってきた♪うんうん。花火も楽しみな季節ですね!ゆかたで打ち上げ花火★★★想像したら、ものすごく行きたくなってしまった。カップルだと、楽しそう♪花火の見えるお宿で見たら最高だろうなぁ(*^_^*)~♪あなたは誰と行きますか~?私は、あの人と行きたい~~rakuten_design=”circle”;rakuten_affiliateId=”054e7186.6a34ca0a.0688e910.fb5015f4″;rakuten_ite…
そしたら行く前に壮行会しましょうよ~~)^o^(
ぴぃさん
壮行会しよー!!
どうも、お久しぶりですー。朝だけの人ですw
てか、色々あったので、何回かだけしか手伝えず失礼しました。
おぐおぐ頭いいねー。文章もうまいし!
そういう人材は絶対に将来日本に戻ってきて活躍してほしいけど、本当にこれからの日本がそれだけの魅力を保っていられるか・・・、私も疑問に思います。
ところで、魔女の宅急便や、長くつ下のピッピを読むたびに、スウェーデンに行ってみたくなります。
そのうちいくかもしれんので、そのときはよろしう!
たっきーさん
コメントありがとうございます。国の基本は、人だとすれば、若者を育てる土壌が失われつつあることに、強い危惧を覚えています。若者が育っていないとすれば、それはこういう大人になりたいと思わせるロールモデルがいなくなっているからともいえますから、この問題の根はかなり深いと思っています。
ただ、たっきーさんのように尊敬できる大人は探せばたくさんいますし、特にいまの20代30代の若い世代に社会を支えようと積極的に活動されている方が多くいるような気がするので、そこはすごい期待しているところでもあります。いまのエスタブリッシュメントの方々からは改革も変革も期待できませんから、やはりこれからの若い世代がそれを実践して、さらに若い世代へとつないでいくしかないと思います。ぜひがんばっていきましょう!!
スウェーデンは本当に奇麗なところがたくさんありますので、ぜひぜひいらしてください。プロのガイド並みにガイドしますから笑。