ブラタモリとアマデウス

 曜日か日曜日のお昼下がり。天気はそこそこ良い。自宅で論文やら卒論やらを書いていると、ふと、すべてを投げ出してバタンキューをしたくなる。こういうときは、テレビをポカーと見るにかぎる。一階のリビングルームに行き、ソファにドシっと座りこむ。リモコンでHDDスイッチをポチっと押す。スクリーンには、この一週間に録画したテレビ番組の名前がずらーと並んでいる。
 そう、日本に帰国後、よくテレビを見る。最近、お気に入りの番組の一つが、NHKの木曜日10時からの「ブラタモリ」。お笑いタレントのタモリが、久保田アナウンサーと一緒に都内のある場所を歩き回るというものである。江戸時代の古地図を広げながら、現代の町の風景を、大きな歴史のなかから照らし出す。大火事、大震災、大空襲、そして高度経済成長によって過去と切り離されてきた東京。このブラタモリはそんな現在と過去の繋がりを回復しようとしている。そんなことも考えさせる。
 最初に見たロケ地が、東京の「三田・麻布編」であった。慶應大学のすぐ裏にある、イタリア大使館。そこは昔、江戸情緒溢れる大名庭園だった。そこから麻布十番へと坂を降りていく。ゴミゴミとした細い路地を通り抜ける。そしてまた坂を駆け上がる。そして、麻布の伝説のガマ池へ―。ささやかな感動は、最後の最後で、ガマ池をマンションの中庭で見つけたときに訪れる。こんなところにひっそりと生き延びていたとは!!
 「日本橋編」もまさかの発見にあふれていた。強固な岩々によって編みあげられた日本橋。ここはすべての地方へ通じる出発点だった。もともとは運河が広がり、魚市場がにぎわう、日本の中心地だった。皇居まで張り巡らされた運河は、当時の効率的な交通網だった。しかし魚市場は、関東大震災で破壊されたあと、築地へと移転してしまった。三越も三井の建物も、震災で無へと帰した。それでも、日本橋だけは存在している。歴史を断絶させることなく、関東大震災にも東京大空襲の焼夷弾にも耐えて生き延びてきたのである。
 もう一つお気に入りの番組が「NHK名曲探偵・アマデウス」。
 毎回、天出臼夫というふざけた探偵が、あるクラシック音楽の魅力や秘密を暴いていくというもの。これはなかなか魅力的な番組である。そもそも、僕のような音楽に疎い人間の場合は、クラシック音楽とか現代音楽とかいっても、それなりにポイントや特徴を説明してもらわないと、楽しめない。平易な言葉での分かりやすい説明というのは、音楽を楽しむ上で邪道なやり方だとは思うが、まあそうしないと何にも「聞こえない」のだから仕方ない。作曲家の人間模様にも踏み込んで解説があり、素人に対する配慮が行き届いている。
 とりあえず番組で取り上げられたものを参考に聞いている。僕のお気に入りは、ショスタコーヴィッチの交響曲第7番のレニングラード。とくに最後の第四楽章の「ララララララララー」というところが、痺れる。この個所は番組によると、この個所はソヴィエト共産主義に対する反発の意が込められているらしい。「私は認めない」と。天才過ぎる。
 もうひとつよく聞くのがヴィヴァルディ―の四季。特にこの「冬パート」がすっごく好き。凍えるような吹雪が自分の後ろに迫り来る、張り詰めた感覚。その後に来るつかの間の冬の木漏れ日のひととき。また厳しい冬の到来。そして春の兆し。この音楽を聴くと、スウェーデンの暗く冷たい冬を思い出す。吹雪のなかで大学から家に帰る間のあのなんとも凍える感じ。いろいろなバージョンを聴いたが、NHK交響楽団のそれが怯えを感じさせる点で好きである。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: つぶやき・殴り書き パーマリンク

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