またまた更新が途絶えてごめんなさい。ロンドンからウプサラに帰ってきたのは22日なので、もう二週間近くも経ってしまったということですね。この間にも色々なところで色々な面白いことがありましたが、まずはロンドンでのことを少しまとめたいと思います。
ロンドンに行った目的は、(観光はもちろん)、私の西洋外交史のゼミの指導教授である、細谷雄一先生に会うことでした(ブログにもリンク張ってあります)。今回はイギリスの大使館の日英の修好条約150年の関連のイベントで講演をするため、はるばるアメリカのプリンストンから来られたとのことでした。ここでは、いろいろな方にお会いしました。LSE(London School of Economics)の修士コースにいる細谷ゼミの先輩、ちょうどアイスランドからの旅行の帰りで、ロンドンに立ち寄りしている同じくゼミの先輩二人、そして、現在外務省の留学派遣でイギリスで勉強されている方々。
LSEから少し離れたところの本棚のあるパブで、久しぶりに先生の含蓄の深い(そして所々にオチがある)お話を、長時間にわたって聞かせてもらいました。その視野の広さと抜群のバランス感覚は健在、というより、アメリカ留学でさらに磨きが掛かっているようでした。先生のブログを読んでも分かるとおり、とにかく常に謙虚です。アンテナを外に開いて学びの姿勢を崩さず、それでいて自分の軸足が浮くことなく研究に向き合う。このような知性のあり方は、ぜひ見習いたいところであります。
さて、ロンドンの観光についてですが、今回は人に会うことが多く、あまり回る時間がありませんでした。強いていうと、三つお薦めの場所があります。一つはロンドン外務省の建物の近くにある、チャーチル・戦時内閣・博物館。1940年の戦時内閣で使われていた地下壕をそのまま博物館にしたところです。会議室や部屋も当時のものを再現しており、かなり緊張感があります。
もう一つは、帝国戦争博物館。博物館の雰囲気は、戦車や爆撃機が真ん中にあったりして、全体的に子供でも楽しめるようにポップな感じです。ジェームズボンドで有名な諜報組織、M15やM16などの諜報組織の説明なども見ていて面白いのです。ここで感心したのは、説明の最後に行くと、だんだん空気が暗くなってきて、「民主主義の概念がこれほど世界に浸透したなかで、M16のような諜報組織はこれからもあり続けるべきかどうか」みたいな倫理的な問いが投げかけられることです。
その他には巨大なパビリオンがあり、近代の戦争を細かく掲示しています。これは評価が分かれると思います。私は個人的にはあまり面白くなかったですね。第二次世界大戦のところがやたら印象に残るようにできている気がして…。イギリスの戦争に対する考え方は、ナチスドイツに対するイギリスの大勝利であり、悪を倒すためには戦争は正しいという観念なんですね。確かに事実なんですが、子供でも楽しめるように作られているだけあり、その影響が気になります。(日本は正反対で、戦争はそれ自体悪だというイデオロギーが圧倒的に強すぎる。これはこれで問題だと思いますが)。
三つ目のお薦めは、ナショナルギャラリーです。イギリスの凄いところは、上の帝国博物館にしてもそうですが、主要な美術館と博物館が無料のところです。これは本当にすごい。世界から収奪したものを世界に還元するためということなのか、それとも無料にしたほうが観光客がたくさん来るから全体としてみてお得なのか、裏にはいろいろと理由はあるのかもしれませんが、とにかくこれほどのものが、すべての人間に無料で開かれているのです。ロンドンに住んでいれば、本を立ち読みする感覚で世界最高の美に触れられるわけです。
すべてを隈なく見ようとしたら三日あっても足りないかもしれませんが、個人的に特にお薦めなのが、ハンス・ホルバインによる「大使(ambassador」という絵です。私みたいに美術についてよく分からない人でも、この絵の凄さは分かります。16世紀、6回くらい結婚しちゃったヘンリ8世の時代です。二人の大使がフランスから来ました。絵の中では、二人が荘厳な装飾に囲まれて立っています。そして二人の前には妙にクチャクチャになった白いシーツのようなものが一つ細い線を描くように置かれています。正面から見ると全く違和感はありませんが、この絵を右側60度くらいの角度から見てみると、このシーツが実はガイコツの顔をしていることに気がつくのです。当時のローマ教会とイギリス国教会の断絶を見事に表現しているわけですね。
もう一つ番外編として紹介します。ヴィクトリア駅の近くにある、面白い教会を見ました。ウェストミニスター大聖堂という英国カトリックの総本山の教会です。どこが面白いのかというと、この教会の外観を見てみると、オレンジ色にドーム型をしています。カトリックにも関わらず、ロシア正教のシンボルでもあるネオビザンツ様式で作られているのです。(なぜ?)そして教会の中には、お土産ショップと思ってしまうくらい商売色を全面に押し出した売店があり、イコンなども大量に販売していました。(どうして?)
前回、イギリスに来たときは、高校生一年生のときで、過ごした場所はケンブリッジでした。ロンドンに遊びに来たときも、ブリッジを眺め、赤いバスに乗り、シティーの金融街を歩いたのみだったので、ロンドンは小奇麗な町という記憶しかありませんでした。今回の滞在では、建物を意識してみてみたのですが、モダンなビルなどについては、高さも形も全く違いすぎるものがズラーと立ち並んでいました。意外にかなり適当でした。しかも移民が大量に流入していることもあり、町の風景はモザイクと化しています。それまで整然として、くっきりと輪郭を持っていたロンドンという町が、何だかぼんやりとした雑多なものへと変わっていきました(これはどの大都市にも言えることかもしれませんね)。
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