スウェーデンのアニメ事情

 ウェーデンのアニメ・マンガの歴史的な変遷と、現在のマーケット状況、スウェーデン人のサブカル意識について簡単にまとめたい。(以下のまとめは、Uさんとシモンさんとの会話、そしてSFショップの店員に対する聞き取りをもとに書いている。前回参照。)
 This post examines how animation and manga became famous in Sweden, the current market situation, and the attitude of Swedish people toward Japanese animation. This brief report below is based on the conversation with U-san and Zimon-san and the interview with staff of Science Fiction shop at Gamla Stan.
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 1980年代、スウェーデンに日本アニメが入ってきた。「キャンディーキャンディー」や「SF西遊記スタージンガー」などが、ケーブルテレビやビデオ(VHS)という形で、一部の人間に知れ渡るようになる。ちなみにシモンさんは、そのころフランスのテレビで日本アニメを見たのが最初の出会いだったという。ここで子供だった彼らが、いわゆるスウェーデンにおける(アニメ)オタクの第一世代となる。しかしながら、スウェーデンの地上波テレビでは見れず、あくまで一部の人に留まっていたという。
 During 1980s, Japanese animation first arrived in Sweden. For example, “CandyCandy” and “SF saiyuuki Starzinger” were known to a few people through cable TV and VHS. It was during this period that Mr. Zimon, a well-known Swedish translatoer of manga and animation, watched Japanese animation in France for the first time in his life. Some children in this generation later became known as what is called “First Generation Otaku”. However, there was a limited number of people who enjoyed watching animation due to limited access to it.
 次に転機となったのが1995年。「セーラームーン」がスウェーデンの地上波(4ch)に登場して大人気になった。この時期に他の多くのアニメが流れ込むことで、多くの若者がアニメを好んで見るようになり、アニメに対する裾野が少しずつ確実に広がっていく。(ちなみにドラゴンボールのアニメはスウェーデンでは放送されず、漫画が2000年を過ぎたあたりで出てきたという)。
 The next turning point came around 1995.”Seira moon” appeared on TV(4ch) and became extremely popular. As more influence from animated TV shows increased during this period, more young people began to enjoy watching Japanese animation. ( “Dragon ball” wasn’t broadcast in formal Swedish TV, its manga appreared around 2000).
 そして、2003年に最後の大波がやって来た。「千と千尋の神隠し(2001年公開)」がスウェーデンで公開された年である。ここを境にして、オタクの第一世代、第二世代に関わらず、すべての人がアニメを「普通」に見るようになった。「いわゆる親公認になった」とは、シモンさんの使った表現だ。それに加えて、最近ではITテクノロジーの発達により、情報にアクセスするためのチャンネルが劇的に増えている。ユーチューブやインターネットのダウンロードを通じて、より若い世代の子供たちがアニメを楽しんでいる。
 The final wave of Japanese animation came in 2003, the time when “Spirited Away” started playing in movie theaters in Sweden. From this time on, not only first generation and second generation “Otaku” enjoyed watching animation, but so did ordinary people. Mr. Zimon described this development by saying “even parents are willing to allow their children to watch animations”. In addition, recent development in IT technology enables people to access various kinds of information on websites much more easily. Younger children in Sweden have started watching animation through YouTube and internet downloading.
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 かくして多くのアニメ好きが生まれたスウェーデンだが、DVDの売り上げに着目してみると、そのマーケットのサイズはあまり大きくなさそうだ。スウェーデンにおける主なDVDの購買層は、日本と同様に、いま30代の人たち―つまり80年代にアニメに触れたオタク第一世代―である。この世代が、昔見たアニメをもう一度DVDとして見たい、あるいは、自分の子供にも見せたいと思って買っているケースが大半だという。だから、新作のアニメDVDに関してはジブリ作品など一部を除いてあまり売れていない。
 Many people enjoy watching animation today in Sweden, however when it comes to the sales of DVDs, the animation market in Sweden doesn’t seem to be so promising. The younger geenration is not all that eager to buy DVDs when compared to older people. Like in Japan, the main consumers for DVDs in Sweden are those in their 30’s, whom we categorize as “First generation Otaku”. One reason for the latter group to buy DVDs is that they would like to see the animes which they used to enjoy watching in their youth once again. In addition, they would like their children to watch those animes. This means that while old DVDs are selling well, relatively new ones are not, though there are some execeptions like Studio Ghibli’s works.
 しかも、日本のようにDVDを「コレクション」として持つ傾向は薄い。例えば、日本ではオタクの人たちの間でヒットしている「涼宮ハルヒの憂鬱」や「ひぐらしの鳴くころに」なども、オフィシャルショップの統計によれば、スウェーデン全体として80部程度しか売れていない(海外から直接販売で手にいれている人は除外)。もちろん、スウェーデン人のオタクがその種類のアニメを見ていないというわけではなく、シモンさんは、少なくとも3000人から5000人はいるだろうと推測する。しかし、彼らのほとんどがDVDには手を出さずにインターネットを通じて視聴しているという。
 In addition, Swedish people have a tendency to not buy collector’s edition DVDs. For example, although the animations such as “Suzumiya Haruhi no Yuutsu” and “Higurashi no Nakukoroni” are popular among Japanese Otaku people, the sales of these DVD through official shops in Sweden amounted only around 80 DVDs. Of course it does not mean that Otakus in Sweden have not watched such animations. Mr. Zimon suggested that there should be at least 5000 people who have watched them. It is most likely that they watched the programes on the internet instead of buying the DVDs.
 彼らがDVDを買わない理由は大きく四つあると考えられる。一つには、そもそも若い世代は、インターネットの無料ダウンロードを見て育ってきただけに、DVDを好んで買わないということだ。二つ目の理由は、現在、日本の最新のアニメのほとんどが、48時間以内に英語字幕付きでインターネットで視聴することができる。しかも、これらの字幕はオタクの人たちが作成したもので、細かいところまで配慮が行き届いている優良品だ。こちらのインターネット作品の方が、その後で出てくる公式DVDよりも字幕の質が高いことがある。こんな状況ではたしかにDVDを買うインセンティブは起こらないだろう。
In total there are roughly four reasons for DVDs not selling well. Firstly, the younger generation, who grew up watching anime on the internet by downloading for free, don’t buy DVDs. The second reason is that today people can download the latest episode of an anime with ENglish subtitles within 48 hours after broadcasting on Japanese TV. These downloaded shows’ translations sometimes offer better quality than an officially translated version, because the subtitles are made with great effort and knowledge by Otakus. It is understandable that there is less incentive to buy DVD in these situations.
そして三つ目の、さらに大きな根本的な原因は、クリエーターの側にあるといえる。ここ二十年、アニメ作品がよりオタクの人達の趣向に合わせて作られるようになり、一般の人が見てもよく理解できないものになってきた。シモンさんの表現を使えば、「子供を正面から見据えた作品がなくなっている」という。本来、日本のアニメーションは子どもも大人も楽しめるという点で稀有な存在であった。しかしながら、今では「大人」に焦点が当てられて、「子ども」という視点が後景に退いている。昔のように子どもはアニメを見て育つという前提が無くなり始めているといってもいいかもしれない。
The third and underlying reason might also be in the hand of animation creators in Japan. Through 90s and 00s, works of animation are getting created for the tastes of Otaku and ordinary Japanese people find it difficult to understand them without previous animations knowledge. Mr Zimon described this phenomenon “Creators don’t make animation targeting for children”. Japanese animation has been something that not only children but also adults can enjoy watching. It seems, however, now Japanese animation focuses on adults and does not pay much attention to children. The assumption that children grow up watching animations might be going away gradually.
ここまで見てきたことをまとめよう。海外で日本のアニメーションが人気になっているものの、それは必ずしもアニメーションの市場の拡大を意味しない。今のDVDを買い続けているオタク第一世代が抜ければ、DVDの売り上げは大きく減ることになるだろう。日本のアニメ会社は、これまでのTV放送やDVD販売によって利益を上げるビジネスモデルだけでなく、インターネットを活用した方法を模索しなければならない。そして、一部のオタクにのみ焦点を当てたものではなく、子どもや普通の人々も楽しめるようなアニメーションが求められている。
In conclusion, Japanese animation is becoming more popular in the world, however, it does not necessary mean that the animation market is expanding. Once Otaku first generation stopped buying DVDs, the sales of DVDs would automatically decrease rapidly. Japanese animation companies need to change its business model, from the way of making money through broadcasting on TV and selling DVD and to come up with other mechanism to earn money by using internet downloading. It is also needed that Japanese animation company make animations targeting for not only Otaku but also children and ordinary people.

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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スウェーデンのアニメ事情 への4件のフィードバック

  1. 明日会社面倒くさいなぁ

    なにこれ!?
    お小遣い稼ぎのつもりだったのに、
    3回ヤっただけで月収軽くこえちまたぁぁぁぁあぁっぁぁ!!!!
    なんか真面目に仕事してるの馬鹿らしくなってきた。。。(´・ω・`)
     

  2. より:

    興味深いっす。僕も将来この分野を考えてるんで。
    ちなみに海外の2chみたいなところもありますよ。4chと言います。僕の友達が入り浸ってます笑 どれほど影響力があるのかはわかりませんが、海外のオタクの人にとってはとりあえず4chに行くのがデフォみたいですよ。

  3. f-taka より:

    >日本のようにDVDを「コレクション」として持つ傾向は薄い。
    日本人って「パッケージ化」されるものに弱いみたいね。所有欲が強いのかしら。
    小説でもさ、分冊の小説があって、それが一年越しに順次刊行されていくとする。そうすると最終巻の発売と同時に、三冊セットの豪華特装版が発売されて、ファンは普通に買うもんね。既に持っているにも関わらず。

  4. おぐし より:

    谷くん
    >海外のオタクは4ch
    早速チェックしてみました!レイアウトは2ちゃんとほとんど同じだね。ちゃんと日本語もあるのが面白い。日本人が作ったんじゃないの笑。
    でも、やっぱり日本語と英語では「場」の意味合いが違う気がする。2ちゃんの場合は匿名といっても何だかんだと同じ日本人で日本語で、同じような社会的出来事や流行・文化を基盤として共有しているから、書き込む側もそれとなくリスポンスを期待して書き込めるようなところがあると思うけど、英語の場合だと難しそう。オフ会もできなそうだし。…2ちゃんは島国ニッポンという同質性+1億3千万という人口の特殊性があってはじめて成り立つものだと思います。
    f-taka氏
    「収集する」っていう行為がすでにオタク的だからね。たしかに日本人はそういう傾向があるのかもしれない。いろいろと各国で調べてみると面白いかも。

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