今日は一日、部屋に缶詰になって卒論を書いている。文字通り、一歩も外に出ずに。リビングルームにいっても誰もいない。今日はクリスマスイブだ。いつもと同じ風景。部屋の隅っこには、クリスマスツリーがポツンと置かれている。圧倒的な無音がすべてを包み込む。僕は、ホットコーヒーを持って、部屋の机へと戻る。
ふと、ホットメールを開くと、「日経ビジネス」のメールマガジンが届いている。「ああ、また来てる」。めんどくさそうにメールをあけてみると、いつものお馴染みのラインが立ち並ぶ――「元気な職場を目指して」。「部下とのコミュニケーション術」。「聞き上手になるために」――。メインは経済なはずのに、いつも「コミュニケーション」についてのコラムがランキング上位につけている。不思議だ。
ほんとうに日本のビジネスマンの多くが、こういう代わり映えのしないマニュアル作法を読みたがっているのだろうか。そうだとしたら、彼らにとっては、経済情勢の分析よりも、職場における人間関係の方が重要ということなのか。よくわからないが、たぶんそういうことなのだろう。ただ、僕にとっての確かなる事実は、そんなマニュアル指南を読んでも、さっぱりためにならない、ということだ。
ため息が出てくる。はぁ。気を取り直して、パソコン画面を下へとスクロールしていく。すると、小田嶋隆の「ピース・オブ・ザ・警句」という文字が目に入る。おお。小田嶋さんじゃないか。ここにも連載持っていたのか。しかも、なんとまたナイスなタイトル。さっそく第一回目のコラムから嘗め回すようにして読む。久々の小田嶋節に触れて笑転。やっぱ日本語っていいなと思う。読んでいてジーンとする。
と、そうじゃない。そうじゃないのだ。
僕が今回わざわざ日本語で書いて伝えたかったことはこの小田嶋さんのコラムのことではない。その下のリンクに張られている、小田嶋隆(コラムニスト)さんと岡康道(クリエイティブディレクター)さんの対談「人生の諸問題~ウェブ時代のコミュニケーション作法(笑)~」のことである。一言で言うと、これはすごい。とてつもない破壊力を持った対談録である。これですよ、こういうことですよ。コミュニケーションというのは。人生どう生きるか。そのヒントが、ここにはある。具体的なエピソードを散りばめながら、ズバッと本質が抜き取られている。
小田嶋隆氏と岡康道氏が高校時代からの友人というのが、それ自体がビッグニュース。まったく知らなかった。これを組んだ編集者は本当に良いところに目を付けたものだと思う。敬服。というのも、ここに出てくるような青春時代の生き生きとした場面をビビッドに引き出すのは、どんな卓抜なインタビュアーでも無理だ。その空気を一緒に吸った仲間がいなければ絶対に出てこないものだ。
というか、岡さんってこんなにぶっ飛んだ人だったのかと、まずそこからびっくりだ。そう、あれは一年かそこら前のこと。うちの大学のメディアの授業に岡さんはゲストとして来ていた。僕はモグリで参加していた。岡さんが自分の作ったCMを流して解説していたのを覚えている。ただ、そのときの印象は「謙虚でカッコいい人だな」くらいのものだった。「変」という言葉はまったく浮かんでいなかった。まさかこんな人だったとは…。自分の人の見る目の無さにはいつも情けなくなる。
親愛なる日本の友人たち、是非とも一読をお薦めします。
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日経はwebの使い方が上手いよね。
この対談は俺もたまに読んでたよ。
日経だとあと、『Safety Japan』(http://www.nikkeibp.co.jp/sj/)がオススメかな。
コミュニケーション云々の話で言えば、結局のところ「読み易いから」って理由でアクセス稼いでるんじゃないかなと思う。
たけいしさん
日経のウェブ、良いですよね。ウェブでは好きなことやってますし(時たま意味不明な企画(外見だけでなく中身も意味不明なものが)あります。こういうことができるのはそういうリベラルな雰囲気があるからかなと思っちゃいますね。まあ、そもそも経済時評はその紙面でやっているから、ウェブは人を集めるためのフォーラムとしてのみ使っているという感じですかね。