バルト三国の一つ、ラトビア。
首都リガの港に降り立ったとき、あることに気が付いてぞっとした。頭のどこを探しまわしてみても、ラトビアについての知識がこれっぽっちもないのである。人口がどのくらいなのか、「ありがとう」をラトビア語でなんと言うのか(そもそもラトビア語ってあるのか)。どこへ行こうにも、何を見るべきなのか全くわからない。その意味で、僕にとってのラトビアはまったくの異国の地であった。
港を出て、ぼんやりした郊外を歩く。
道に沿って、赤茶色のレンガの建物が続いている。注意して見てみると、どの建物も少し煙がかったように古めかしく、ところどころ柱が欠けている。レンガの連なりの前には、行き場を失った車がぎっしりと詰まっている。どこかで見たような風景で、どこか違和感を感じさせる風景。小奇麗な車の数々と古びた低い建物。ふと遠くを見渡してみると、大きなビルがぽつんと二つ、突然変異で出てきたかのように聳え立つ。西ヨーロッパとは少し異なる、奇妙な無秩序が漂っている。
町の中心部に近づくと、少し景色が変わる。
古びた丸っこいドーム型の教会の周りには、これまでの古びた赤レンガとは異なり、比較的に新しいクリーム色の建物が多く見える。のっぺらしたデザインの壁に、ぽつりぽつりと小さい窓が重なるようにして編まれている。中世のハンザ同盟のときからの名残のせいだろうか。あるいは、ヒトラーの支配による影響だろうか。どこかしら、ドイツの建築物に似ているような気がする。
さらに奥に歩いていくと、白色を基調として、ドームの先端を黒色と金色でコーディネートしたこじんまりとした教会が見えてくる。教会といっても、その形はどこかお城のようでもある。明らかに西ヨーロッパのものとは異なる、ロシア正教会のものだろう。
ロシア正教と聞いてまず思いつくものが、偶像崇拝。この教会も入ってみてすぐ気づくことに、とにかく、イコンが多い。女神を象った偶像、カーテン、そして絵。あらゆる壁という壁に、ランク分けされた人の顔がぎっしりと詰まっている。それらイコンは、どれものっぺりとしている。ドイツ人の友人いわく、「当時は金が塗りこめられていたのだが、ほとんどは盗まれてしまった」のだという。
教会の聖壇にはカーテンが敷かれており、人が入れないようになっている。しかも、教会にあるべきはずの、聖書を読むためのイスがない。神の前では、座ってはいけないというのだろうか。さすが「正教」というだけあって、厳格さがにじみ出ている。
× × × × × × × × × × × × ×
ロシア的であり、大陸ヨーロッパでもあり、北欧っぽくもある、いろんなものが混じり混ざった、ラトビア。多文化主義(マルチカルチュラリズム)という言葉があるが、ラトビアが抱えるものはそのように主体的に選び取ったものではない。むしろ、歴史の大きな流れのなかで強制的に埋め込まれたものである。振り子が振れたときにそれに従うしかない。そんな風にして右へ左へ傷あとを残しながら生きてきたのがこの国なのではないか、と感じた。
今度は、ちゃんと時間を取り、下調べをして訪れたいところだ。
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メタ情報
ひさしぶり~!
ラトビアの記事だったから、思わずコメントを残したくなっちゃった♪
私も去年の夏、リトアニアでボランティアに参加した後、ラトビア、エストニア、フィンランドって旅行したんだよ~!バルト三国面白いよね。西と東と北に挟まれた独特の雰囲気があって。私は、エストニアのタリンも結構お勧めです。もっと中世っぽさが強くて、とっても好きだった覚えがあります。あともしチャンスがあれば、リトアニアとラトビアの間にSiaulai(だったかな?)っていう町があって、そこに十字架で埋め尽くされた丘があるのね。そこもとっても神秘的でお勧めです。もし機会があればぜひ!
なんだか、めっちゃ書いちゃった…ごめん。
バルト三国ネタに食いついてしまった 笑
留学楽しそうだね。うらやましいです♪
なをちゃん
どもども、お久しぶりっす。
コメントありがとう。バルト三国に行ったことがあるんだ。びっくり。普通はヨーロッパ行っても素通りしちゃうところだから、知り合いで行ったことある人はほとんど知らないもので。でも、なんかカッコいいよね、「バルト三国」って。しかも、リトアニアでボランティアなんて、さらにクールじゃないですか。うらやましい。
来年は絶対、エストニア、そしてリトアニア行きます。僕の寮にリトアニア人の子がいて、車で案内してくれるらしいので、そのSiaulaってところもぜひ行ってみたいと思います。
情報ありがとう!