「ラトビア」行きの豪華客船

 後4時、僕たちはストックホルム駅から暗闇のなかを歩き続けていた。
 都会のネオンはもうはるか後方へと消えている。40分ほど歩いただろうか、林を抜けて工業地帯に入ったところ、ようやく港らしい風景が見えてきた。何となく波風が強くなるのを感じる。だが不思議と塩の匂いは弱い。寂れた工場外の町の香りが、海の塩水と混ざり合い、行き場をなくして漂っているようだ。
 突然、「あれだ!」と指をさして叫ぶ。空中にぼんやりと見えるのは、けばけばしい黄色と白色のネオン。大きなスタジアムの光か何かと思ったが、それはこれから乗り込む大型客船の光だった。近づいてみると、豪華客船が2体、たて二列に並んでいた。全長は200メートル、横幅は30メートルほどあろうか。とにかく大きい。ほとんど見分けは付かないが、それぞれの白い船体には「タリーン」、「リガ」と大きな文字が描かれている。
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 僕たちが乗り込んだ船は、リガ行き。リガはバルト三国の一つで、ラトビアの首都。タリーンはエストニアの首都だ。(ちなみにもう一つのバルト三国はリトアニア)。
 ストックホルムからは毎日午後17時から、バルト三国やフィンランドへのフェリーが出ている。スウェーデン人は船の中では”タックスフリー”でお酒が安く手に入るということで、そのためだけに船に乗り込む。週末の金曜日の夜に出発して、翌朝の午前中に到着。そして適当に時間をつぶしたのちに、夜の便に乗って翌朝に帰ってくるというのが、お金のない、お酒好きのスタンダードのようだ。
 豪華客船の中は、8階建てのマルチコンプレックス施設そのものだった。
 煌びやかなレストランから、ダンスフロア、映画館、カラオケ(パブリック)、プール、サウナに至るまで何でもござれ。僕の部屋は、一番安い四人部屋。ドアを開けると、狭い空間に二つの小さいベッドがある。あれ、と思ってみてみると、小さいベッドの上に折りたたみ式のベッドが仕込まれていた。17時に乗り込んだあとは、お店が開くまでの20時まではとりあえず昼寝タイム。そしてその後、フェリーの長く険しい旅が始まるのである。
       

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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