スウェーデンにおける「日本ブーム」

 プサラ大学に到着して数日したころ、インターナショナルオフィスからメールが転送されてきた。ウプサラに住んでいるイギリス人からだった。「これから日本語を勉強しようと思っています。僕がスウェーデン語や英語を教えます。もし良かったら、お互いに勉強しませんか」。
 
 政治行政学科の建物の前で待っていると、、50歳くらいのおじさんがやってきた。髪は細くひとつに束ねられている。さわやかとは一味違う、颯爽としたイメージを与える。
 名前はロッド。イギリスで生まれ育ったのち、スウェーデンにやってきた。スウェーデンには35年住んでいて、フリーのエディターをしている。主な仕事は、スウェーデン語を英語に翻訳すること。いくらスウェーデン人が英語が上手いとはいえ、それをきちんとした論文の形にするには教養あるネイティブの助けが必要となる。彼は、ウプサラ大学の研究者ともよく一緒に仕事をしているという。
 驚いたことに、彼は、「スウェーデンヒストリー」という本の英訳をしている。スウェーデンの一般書店に行けば、必ず目に付く有名な通史の本である。ほかにも、ダグ・ハマーショルドに関する報告書なども英訳している。「ハマーショルドに関連する研究をしウプサラに来た」と僕がいうと、彼に関する本を2冊持ってきてプレゼンとしてくれた。
 ロッドは現在、ストックホルム大学の日本語コースに週二回のペースで通っている。先週から通い始めたばかりで、ひらがなとカタカナと格闘している。最初の授業では、「はらい」や「止め」などを理解するために、習字筆を使って練習するらしい。ロッドは「カタカナの『ツ』と『シ』の見分けがつかないから困る」と笑って話す。
 僕は、ここスウェーデンでは日本語はあまり人気がないのだろうと思っていた。なぜなら、ウプサラ大学には日本語コースがないからだ。だが、そうではない、とロッドは言う。ウプサラ大学とストックホルム大学は提携しているので、どちらかにしかコースを置けないだけで、「いまスウェーデンは空前の日本ブームなんだよ」と、訝かる僕を諭すかのように力説するのである。
 日本ブームは二年前くらいから来ているらしい。それまでストックホルム大学では、日本語はマイナーコースの一つに過ぎず、1クラス(20~30人)を開講できるかできないかだった。それが今や160人を超える受講者が殺到している。…ロシア語の受講者は20人もいないというのに!!
 ―なぜいまスウェーデンで日本ブームなのか。
 「もちろん、日本のポップカルチャーだろう」、とロッドはいう。
 幼少期に日本の漫画やアニメを見て育った世代が、いま大量に生産されている。特にここ何年かでの大きな変化は、男性層だけでなく、女性の間での関心も飛躍的に高まっているという点だ。ちなみに、日本語スクールの学生の大半が18歳~19歳の若者らしい。
 ちなみに、意外が意外、JPOPも人気らしい。
 去年の4月(?)の「外交フォーラム」では、日本のテゴマスというジャニーズ・デュオユニットがスウェーデンで大人気だということを伝えていた。NEWSの手越祐也と増田貴久によるユニットは、2006年スウェーデンに進出し、その収録曲「ミソスープ(!)」がランキングチャートの上位に食い込んだ。これをきっかけに各メディアも、日本ブーム現象について多く取り上げるようになったという。
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 ウプサラに来てから、スウェーデン人から国際センター経由でもらったメールは全部で3通。一人がロッドで、二人は日本に留学していたスウェーデン人――ユリアとダニエル。ウプサラという日本人が少ない環境だからか、昨今の日本ブームの後押しからなのか。いずれにしても、日本人に会いたいといってくれるのは、自分としては嬉しい限りである。
 スウェーデン語はスウェーデンしか使えないから、不自由だ。たしかにこう思っていたふしも無きにしもあらずだが、今後さらに日本に興味を持つスウェーデン人が増えてくると思うと、スウェーデン語を学ぶ意欲もわくというものだ。上記のロッドとは週に1回、お互いの勉強会を開催すると約束した。
 これから頑張って勉強したいと思う。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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スウェーデンにおける「日本ブーム」 への4件のフィードバック

  1. クマ in Singapore より:

    お久しぶりです、先輩。
    偶然にも僕もシンガポールに来てから日本文化ブームに気がつきました。こっちの大学には日本研究学部があって、そこの"Samurai, Geisha and Yakuza. And self or other"というまったくもってふざけた名前の授業をとってるのですが、講義には250人ぐらい生徒がいてびっくりです。アメリカ人講師に源義経について講義を受けるなんて、アホらしくて結構面白いです。ちなみにこっちに来てからやっぱりアジアに個人主義はないのかなと体感しました。依然欧米個人主義的な雰囲気にあこがれています。スウェーデンはどうでしょうか?
    お互い留学がんばりましょう。では。

  2. たけいし より:

    北欧は日本のアニメの影響もあって日本に対する関心が高い、とIWで北欧に行っていたウチの嫁も言っていたが、まさにその通りなのねw
    20歳の若者がナルトの話で盛り上がっていたりするくらいみたいだし。

  3. おぐし より:

    クマちゃん
    お久しぶり。シンガポールはいかがですか。
    スウェーデンにも何人かシンガポールの子が来ていて仲良くなりました。みんな英語上手いね。やっぱり。
    >こっちの大学には日本研究学部があって、そこの"Samurai, Geisha and Yakuza. And self or other"というまったくもってふざけた名前の授業をとってるのですが、講義には250人ぐらい生徒がいてびっくりです。
    てか、その講義、ふざけすぎでしょ。笑。
    スウェーデンにはそこまでクレイジーな講座はないな。
    オリエンタリズム的日本観が行き過ぎないようぜひ監視してください。
    個人主義ぐあいでいうと、スウェーデンの個人主義はマジでびびるね。その完全さは、欧米以上だと思う。人間的な面はまだ良くわからないけど、制度的には、完全に個人主義にマッチするように出来ている。それについてはまた別の機会に書きますね。
    お互い頑張りましょう☆

  4. おぐし より:

    たけいし氏
    正直、僕も彼らの話には付いていけません。
    ちなみに、ここウプサラには、一年に一度、ウプサラコンベンションという世界的なポップカルチャーの祭りがあります。
    約して、ウプコン!
    はじめは20人くらしかいなかったそうですが、今や2000人を超えるマニアたちが世界中から集まるそうです。報告する意義が見出せれば、報告しますね。笑。

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