ギョウザとメディア②

 HKスペシャル・「食品の安全をどう守るのか~冷凍ギョウザの波紋~」を見た。
 僕の個人的な、あくまで個人的な感想を書こう。
 はっきり言って、満足はできない番組内容だった。取材内容やその構成などについては、かなりの綿密さに感動したのだが、それだけに残念かつ問題だったのが、さかしら顔でコメントをするゲストの一人、元生協職員で、現在は消費者団体の事務局長の女性である。この人の発言は、素人である自分にもわかるくらい、はっきりと瑕疵のある、現実を歪めて伝わってしまうものだった、と思う。
 ①まず、番組の頭で、餃子事件の予兆と経過を次のように時系列的にまとめて伝えていた。「JTフーズと生協coop」による最初の中毒患者が明らかになったのは、12月28日である。しかし、すでに10月、11月の段階で、3件の「異常報告」が伝えられていたのである。それにも関わらず、JTフーズと生協coopは、主だった対策をとることなく、それ以後に中毒が起こることを防げなかった。しかも、その事例の報告と時を同じく、他の「異常事例」がJTフーズにも伝えられていた。それらの情報について、生協とJTフーズは「共有」することがなかったというのである。
 番組では、その「情報共有ができなかったこと」については、「企業秘密の壁」があったため、「情報共有は困難だった」として、それ以上深く追求することはなかった。上記のゲストの女性も、「それは難しいですね。協力して共有してほしいですね」として、簡単に流してしまったのである。
 これは普通に考えてみると、おかしい。だって、「異常事例」が出ているのだから、それについての情報を共有するのは当たり前のことである。JTフーズの商品を売っている生協が、JTフーズに対して、「その商品の安全はどうなっているのか明らかにせよ」と言えないことは、「普通には」、ありえない。(だから、それをしなかったということは、この二社の責任は圧倒的に重いと思わざるをえない)。
 おもうに、この番組が切り込むべきだったのは、「なぜ企業間の情報共有が困難なのか」についての現場検証であった。それを報じてこそ、今後のためになるし、「企業秘密だから難しいですよね」、では、今後の安全性の確保に発展はないであろう。だって、日本の食品流通の特徴(問題)は、小売、流通、生産とすべての段階において、異なる別の企業が担っていることにあること、つまりは「情報共有をどうするのか」という点に大きくあるのだから(これまでの国産偽装の問題もそうであろう)。
 (もちろん、番組では、その次の話題で「アメリカの行政主導による、企業間の情報共有を経ずに中毒を発見できるCDCという仕組みについて説明していた。だから上記の問題について「深く」説明しなかったということは、理解できないことではない)。
 
 ②僕が驚いたのは、このゲストの女性が、あまりにも現在の食品流通の現場に無知ということである。アメリカの仕組みについて、単純に「素晴らしいですね」と礼賛したり、日本の食品メーカーの中国での徹底的な管理体制について、「こんなにしっかりやっていたのですね」などとのたまわったり…。
 もう一人の専門家の男性が発言していたように、またVTRでもメーカー企業の取り組が流されていたように、中国から日本に輸出される加工食品の管理レベルは日本と同等か、その企業によっては、日本の管理レベルよりも断然に高いといえる。
 もちろん、先週、テレビ朝日の報道ステーションが報道していたが、農村によっては全く管理できず毒の農産物が蔓延しているところも多数あるのだろう。だが、「農村に毒食品が存在すること」と「日本用に管理された加工食品が輸出されること」は全く別の次元の問題のはずである。それなのに、ろくに取材もせずに先入観だけで意見を言う、この女性ゲストみたいに、ごちゃまぜにしてしまうから、恐怖が煽られるのである。
 ③もうひとつ、番組内で、「問題なのは、利益追求に躍起になり、消費者抜きの議論をすることである」という、視聴者からのアンケートを紹介していた。こういう言葉をマスコミは好んで使用するが、この「消費者のために!」というキーフレーズは、僕は一面的な消費者エゴでしかないと思っている。この消費者エゴという言葉は、神門善久氏の「食と農~危機の本質」で使われていた概念である。
 つまり、利益追求のために消費者抜きになるのではなく、消費者のためという美名のもとにドンドン価格を吊り下げ、適正価格を見失って暴走したあげくの果てがいまの状況なのである。ゲストの女性が最後にのたまわっていた、「安全は絶対ですが、消費者のためにできるだけ低価格で提供を」という言葉は、本質論を無視した体の良い言葉でしかない。どれだけの作業が、生産・加工の段階で費やされているか、まるでわかっていない、結局は、小売(生協)の側のわがままである。
 番組内容も、男性ゲストも素晴らしかっただけに、この「生協の代弁者」みたいな女性ゲストをコメンテーターとして使ってしまったことが、残念で仕方ない。といっても、ディレクターの役目は、信頼できるゲストを揃えることからスタートすると思うので、やはり、その点は落ち度があったのであろう。
 × × × × × × × × × × ×
 
 さてさて、4月1日から、主にメディアコムの有志のメンバーとともに、「食とメディア」に関する勉強会を行っていきます。最初は、「餃子事件」についてのメディア報道に焦点を当てて、徹底的にその問題点をあぶり出します。そして、それを5月中旬に講演会イベントとして発表する予定です。新聞・テレビ報道を分析し、メーカーに取材も行い、それらを上手くまとめ、最高の成果を披露したいと思います。また日にちなどをご連絡するので、ぜひぜひ見に来てくださいませ。よろしくお願いします。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
カテゴリー: 評論・書評・感想, 時事ネタ タグ: パーマリンク

ギョウザとメディア② への4件のフィードバック

  1. たかだっち より:

    講演会の目的は何ですか?あなたの学問として、「最高」を達成するためですか?

  2. ぐし より:

    >たかだっちさん
    最高というのは、自分ができる最大のこと、
    というニュアンスで使いましたが、少々言葉が悪かったですね。
    (今読み返してみると、偉そうな感じがします、失礼しました)
    講演会イベントをやろうと思ったのは、批判だけするのではなく、自分でも何かしないとと思ったからです。講演会の目的は、今のところは、食とメディアに対する理解を深めること、そして、社会に対して、食と農をめぐる問題において生じている誤解の解消に寄与することです。たぶん。
    学問としてどうこうというのは、正直なところ、あまり考えていません。多くの人を巻き込んで、大きくメッセージを発信できればと考えています。

  3. たかだっち より:

    ありがとうございます。
    いや、批判のし合いからは何も生まれないと
    常々思っていて。
    マスコミ問題には、いろいろと考えさせられますよね。
    これからもがんばってください。

  4. ぐし より:

    たかだっちさん
    マスコミを批判するのは簡単ですからね。
    僕も多くの知り合いが働いていて、その難しさはよく聞きます。
    自分がその場にいたら、果たして、適切な報道ができていたのか。
    そこまで考慮した上で、マスコミ報道を考えないといけませんよね。
    (そこはこのブログでも自戒をしないと、と思っているんですが…)
    また、コメントくださいね。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中