ギョウザ問題とそれを取り巻くメディア報道について、苦言を述べたい。
ギョウザ問題とは、周知のとおり、JTフーズが取り扱っていた「一口餃子」を食べた人が、バッタバッタと食中毒を催し、社会問題となっている件である。当初は、JTフーズと契約していた中国の「天洋食品」が、その原材料から加工の過程において、「殺虫剤」かそれに準ずる「農薬」を使っていた可能性があるとして、メディアは「中国問題」というフレームで報道した。そののち、ギョウザ問題は不可解な動きを見せる。ギョウザ袋に穴が開いていたり袋の表面にどっぺりと農薬が付着していたり、誰かが故意に何かを混入した可能性があるというのだ。まだ詳しいことはわかっていないが、餃子問題は、製造過程ミスの問題から、「故意」に混入されたという「事件性」を帯び始めている。
そもそもの前提から言おう。
これは「中国問題」として考えるべきではない。これまでの情報を総合すれば、JTフーズの管理問題と考えるのが最も妥当な推察である。たとえ、中国の「天洋食品」の農薬使用や製造工程に問題があったとしても、それを管理していなかった親元のJTフーズの管理ミスが第一に指摘されてしかるべきだからである。メディアは「日本VS中国」というフレームで報道をできるだけ控えるべきだ。話がややこしくなるだけでなく、無用なナショナリズムを煽るだけである(麻生太郎は言葉の重みを理解できないという意味で、政治家として失格であると僕は声高に訴えたい)。
もしメディアが責任問題を指摘するとしたら、そもそも何人の管理者が、JTフーズから(あるいは双日食品から)中国の工場へ出向していたのかという点についてである。日本の冷凍食品の大半が中国で生産されているとしても、まともな食品会社は、すべての作業について、自社の社員を派遣して関与・管理しているはずだ。だから、まず指摘するべきは、親会社のどれほどの人間が関与しているかについての、アウトソーシングの『丸投げ具合』である。この根本がなっていなければ、それは誰が何いおうと、親元の管理の責任である。中国問題として扱うではなく、日本問題として扱うではなく、まず企業としてのJTの管理問題を軸にして報道を行うべきである(他の餃子を扱う食品会社に対して迷惑極まりない話である)。
そして、もう1つの問題は、「被害者」に寄り添うメディア特性である。こうした事件が起こると、メディアはいつも「被害者」に寄り添う報道を行ってしまう。今回のケースでは、千葉市の保健所が槍玉に挙げられた。食中毒を催した人から食品の検査を求められていた千葉市の保健所は、「被害者からの声に耳を傾けず」、それを受理しなかった、けしからん、と他罰的な報道である。
だが、ちょっとまってくれ。保健所の言い分も聞かず一方的に、「受理しなかった保健所が悪い」と断罪するのはいかがなものか。メディアの方々は、保健所にどれほどの検査依頼が舞い込んでくるのか把握しているのか。消費者至上主義の日本では、膨大な数の検査以来が来ているだろうことは容易に推察される。「食べたらお仲が痛くなった」「味が変だ」とかちょっとしたことで。だから、そこに何かしらの「事件性」が無い限り、保健所の側が動けないのも十分考えられるし、妥当性すらあると僕は思う(もちろん、今回の件では事件になってしまったのだから、保健所に非はある事はあるだろうが)。
「より安く売れ」
このような消費者圧力が、企業をして、中国へ向かわしめている。例えば、消費者の味方のイオンを始めとした大手スーパーは、この原材料高騰のなかでも、「値上げは許さない」といって憚らないが、では、あなたたちは一体、何を努力しているというのだろうか。値下げの努力をしてきたのは、主に食品会社である。中国へ工場を移し、加工技術を刷新し、絶え間ぬ値下げを可能にしてきたのはメーカー企業である(そのなかで突出して(安全性を無視して)安く売ろうとするのが商社ではある)。大手スーパーは、極端にいえば、単に商品を右から左に流しているだけで、努力していることといえば、たかだか、人件費の値下げくらいである。
食の安全を語るならば、産業構造の問題、値上げ問題、消費者意識の問題を避けて通れない。これからのメディアの「食」を巡る特集に期待したい(ほんとは期待していないけど)。
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まぁ中国問題として扱うのはおかしいと思うけど。
でもこんなことがおきないかぎり中国問題は規制されて放送できないんじゃなかったけ?日中記者交換協定とかいうやつ。
結構前から中国の毒菜とかネットで有名だから麻生太郎はそういうのわかってるでしょ。
まぁ人柱みたいなもんじゃないの?
たとえ間違った報道の仕方でも中国の危険性を触れていることを俺はいいことだと思うよ。
「(冷凍食品に頼って)浮かれた生活してるから」なんて事を公共の電波を使って言い放った古館伊知郎さんもいるわけで。
ネットでニュース報道見てて、まったく同じこと考えてました。
確かに中国のせいにする一方で、日本の管理責任をまったく問うていない報道が多かったですね。
食品だけでなく、ほかの製品もそうですよね、made in chinaの多さ。でも格差社会が広がる一方で、国民の大半の底、中辺の人々(この呼び方嫌いですけど)はどうしても収入的に安いものを求めてしまう。品質のいい(食品の場合は国産)を買える人たちは一握りなわけじゃないですか。安くするための弊害としてどうしてもこういう事件は出てしまうと思います。アメリカでも少し前に中国産のおもちゃの大量リコール事件がありましたし。
食だけに限らずこういう問題って偏向報道の是正ももちろん必要ですけど小串さんの言った通り、産業構造とかもっと根本的なところから解決していかなくちゃいけないものだと思います。
と、中国産の甘栗を食べながら書いてみました。
sakurai氏
中国の食品がどれだけ危険かについては、実際のところは、検討もつかないしよくわからないのだけど、事実として明らかなのは、中国よりもアメリカの方が検疫で引っかかっていて、いいかげんだということ。その意味で、中国の食品を敵視して、その危険性を煽るようなことは、ちょっと待って、という思いが前提としてあった。(あと、この件については親父が食品会社ということもあって、中国の危険性が煽られるごとに愚痴を聞かされていた、という個人的バイアスもかかっているから、なんともいえないのだけどね)
日中記者協定はこういう件についてはあんまり関係ないと思うけど、…たぶん共産党の秘密合意とかスクープしない限りは笑。
tani氏
「100%の安全を」なんて土台無理な話ですよ。そんなこと言うなら、お前が自分で全部作ってみろよって言いたくなる(まあそういうこという人はたいていお金持ちで「生存」に関係のない人達なんだろうけど)。
例えば、JTとか商社とか生協とかは基本的に委託事業だから、自分たちで管理していないんだよね。自分たちで工場を作って人を雇ってってやると当然、お金が莫大に掛かるし、一度そういう体制作っちゃうとすぐに撤退できないからね。だから、管理が甘くなるのはある意味で当たり前だと思う。
そして、彼らに責任があることはもちろん明らかなんだけど、もう一歩踏み込んで議論しないと行かないのが、tani氏の言うとおり、産業構造と消費者意識。80年代後半からの円高、そして日米構造協議の規制緩和による大型スーパーの参入、90年代後半の不況とグローバル経済の進展によって、ますます低価格化が進んでしまった。そうして、(景気悪化を背景に賃金も上がらず)消費者は低価格を求めることが当たり前になり、企業はますます中国へ依存していかざるをえなくなった、と。
食品の問題はまさしく産業構造。だって安全な食品を作ろうにも、とにかく「安くしろ!」って消費者は言うし、ジャスコとか巨大スーパーも言うし。「努力」といっても限度がある。そもそも昨年の国内の食品偽装だって、同じところがねっこにあるし。
もし本当に食の安全を求めるのであれば、やはり、もっと食品の値上げ(特に大手の巨大スーパー!)が必要になる。でもそうすると、低賃金の労働者(多数)は困るから、賃金も上げないといけない⇒春闘の問題にも関わってくる。
暫定的な結論としては、(形だけでも)賃金の値上げをして、食品の値上げもしちゃうというものかな(まあ、賃金上げちゃうと、会社が困る ⇒ 非正規雇用の増加 ⇒ またワーキングプアーが増える、から解決に繋がらないと思うんだけどね)