1月12日の東洋経済の「北欧はここまでやる」特集を読んだ。やばい面白い。
なにが面白いかというと、①高福祉と成長は矛盾しない。しかも、②北欧の一国の規模は、日本の大都市と同規模なので、分権の観点から日本にも応用できる(?)。―このように日本の喫緊の課題に対して「北欧モデル」という処方箋を具体的に提示しているのである。久しぶりに、読んでいてワクワク希望が溢れてきた。僕は来年から(旧)「自由の国」のスウェーデンに留学に行くのだが、この特集はまさに僕がかの地で勉強したかったことそのままであったのだ。
最近、(似非)就活を通じて、社会人の話を聞く機会が多い。そこで彼らからよく聞く話が、「仕事」を取るか「結婚(そして子育て)」を取るかという二者択一の悩みである。女の人は、「仕事も続けたいけど、さすがに子供ができると無理かしら」という。男の人は、「まあ僕がちゃんと働くから、家事と育児をしてくれる相手が欲しいのだけど」、という。
僕は、「そこそこ仕事をしながら、そこそこ家事及び子育てをすれば良いんじゃないんですか」、と質問する。そうすると、男の側からも女の側からも決まって、「社会はそんなに甘くない」と、フフン(福田首相)というような顔で言われる。「育児休暇があったとしても、ちゃんと仕事ができる人(能力のある)人じゃないと利用できないし、そもそも休んじゃったら仕事に戻るのは難しいのだよ」と。
ふーん、と思う。僕はあまり釈然としない。そして、たぶん、この人達は、競争社会を勝ち抜いてきた人達だから、「仕事」をバリバリやりたいんだなと、一方で納得する。でも、「幸せ」についての認識の幅が狭いんじゃない、とも一方で思う。
「そこそこ派」という選択肢をもっと増やしていいはずだ。「私もそこそこ派でいければそこそこ派に入りたい」という人は、実はもっともっとたくさんいるはずだ。僕はこのブログのなかでささやかにそう主張したい。そうだ、働きたい人は働けばいい。「子育てに時間を取りたい」という人はそうすればいい。そういうことができる制度があるべきだし、それについての選択の余地があるべきである。―問題なのは、日本にはそういう制度があまりないし、たとえあったとしても、「何だかんだ」、利用しにくいところだ。
実際、日本では、男性の育児休暇取得率は1%未満である。
この特集記事に出てくるノルウェーでは「90%」以上の男性が育児休暇を取得している。驚くべき数字である。スウェーデンでも同様である。子持ち(6歳未満)の女性の80%が働き続けている。日本は35%しかいない。しかも、北欧の教育費は大学までほとんど無償だから、安心して子育てができる(ノルウェーの出生率は1,9倍に上がっている)。
一度、住んでみたら、本当にびっくりすると思う。「幸せが何なのか」という社会的合意が、日本とはあまりにも違い過ぎる気がする。というか、日本はそんな合意はたぶんない。だからこそ、僕は「そこそこ派」で行ければ結構幸せなんじゃないかと「あえて」小声で訴えたい。普通に生きて、普通に暮らせれば幸せだろうと。「そんな悠長なスタンスじゃ、日本の経済成長は鈍化してしまう」、とか言われても知るかこのヤロウって感じである。そもそも、そうやって「そこそこ派」を無視して、子育て環境を整備してこなかったからこそ、子供の数も減って、経済が鈍化してきたんじゃないかこのヤロウ。
× × × × × × ×
この特集は、①高福祉と成長は矛盾しないということを様々なデータをもとにして論じている。ただ、それはすべて北欧が「いま好調」ということを前提としている。だが、皆さんご存知のとおり、いま世界のマネー潮流では、ヨーロッパと石油新興国のマネーが物凄い勢いで上がっている。(そして、ドルが下がり、それに付随して円も下がっている)。北欧の伸びも、ある意味、EU圏のユーロ高の伸びに牽引されているだけではないのかという指摘もできるかもしれない。まあ、よくわからないけど。
あと、(これは関係ないけど)、本当に「円」はまずい事態になっている。日経新聞のYEN漂流という素敵な連載にもあったように、YENの価値の低下は留まることを知らない。日本はもはや大国ではない。ただの弱小国である(ミドルパワーでもない笑)。一人当たりのGDPが、イタリアよりも低いのが実体である(IMFのホームページで確認すべし)。某外資系企業の人事曰く、「日本人を雇え、安くて済むぞ」ということがまことしやかに語られているのである。食料・穀物を輸入できるお金がいつまで続くか、本当にここは考えないとまずい。
…といっても、僕は楽天家なので、まあしょうがないじゃんと考えるようにしている。日本の経済規模が下がったら、下がったなりの生活に落として、地味に質素に暮らしていけばいいじゃないかこのヤロウと思っている。自給自足の生活バンザイである。
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文体がかわいくて仕方ない!
>こみー
コメントありがと☆
ちょっと可愛さ意識しました笑。
かわいくないかわいくない笑。
北欧で勉強できるなんてうらやましいぞ。香港は拝金主義すぎて、街に出るだけで息が詰まる。
今後の日本のキーワードは教育、福祉、地方、農業だ!!!とか最近強く思うわー。もう自国を大国と意識するのはやめましょう。と。
子育てについてイギリスと日本両方に住んでみて思うのは、日本の人は帰ってくるのが非常に遅い!
もちろん育児休暇を取れるようにする環境にするのも大事ですけど、仕事から早く帰れるようにしてあげて、日々育児をできる環境を整えるのも大事だと思います。
だって残業ってほとんど意味がないものなのでしょ?部長より先に帰れない、みたいな理由の残業が多いと聞きます。外国の人なんてちゃんと定時に帰っちゃいますからね。
素人意見ですいません。。。
changsu
これからは北欧の時代ですよ。笑。
低経済成長で成熟社会を目指すべきじゃ。
(問題は低経済成長できるかだけど)。
>今後の日本のキーワードは教育、福祉、地方、農業だ!!!
同感だがさ。ついでに環境を入れて、ニッチなところで戦っていけばいいのさ。
tani
外人って早く帰るイメージがある。少なくともヨーロッパの国は、休みも多いし。スペインはシェスタするし(もはや過去の産物かもしれないけど)。
何で早く帰っちゃいけないんだろうね。仕事が終わってないからかな。仕事が終わらない=能力が低いから、頑張るしかない、みたいな構図かな。あるいは終わって帰れるけど、他の人がまだ仕事しているから、集団主義圧力により帰れないみたいな構図かな。
いずれにしても、社会のソーシャルデザインとしては間違っているよね。制度として、みんなが帰る=だから俺も帰る、ような仕組みを作らないと、ダメだと思うね。ノルウェーでは、子育てで抜けてしまう人材の費用を国が負担するらしい。しかも制度を利用するのも、決まったときに利用しないと失効しちゃうから、必ずほとんどの人が利用しちゃうらしい。うらやましい。
久しぶり!
初めてコメントするよー。
北欧の育児に対する福祉はほんとすばらしい!!!
ってあまり知らない私が言うのもなんだけど・・・
高校の家庭科で習って感動したよ。
わたしとしては無駄な道路工事の税金を育児にまわしてほしい・・・
そして子供は産むべき!
幸せのためにももちろんだけど、
自分が生まれたからには、後世につなげないとなぁ、と思うのです。
すごい同感だったのでコメントしちゃった、休学生でした(笑)
>僕は「そこそこ派」で行ければ結構幸せなんじゃないかと「あえて」小声で訴えたい。
とかなんとか言ってるオグシの人生は、
「そこそこ派」には絶対まとまらないだろこのヤロウ…
と「あえて」小声で指摘したい(笑)
就活してると思うけど、「仕事はそこそこに、家事育児も…」
なんて口が裂けても言えないよね。
特に男は。
>「幸せ」についての認識の幅が狭いんじゃない?
っていうのには同意。
彼らの幅が狭いというより、世の中が認識の幅を狭めているような。
ということで、帰ってきたら、おれも育休とれる世の中にしてくれこのヤロウ!
>まみ(むめ)子氏
わーコメントありがとう☆
同感していただき嬉しいです(^^)
>自分が生まれたからには、後世につなげないとなぁ、と思うのです。
激しく同意しまっす。
人類の粛々と築いてきた普遍的な営みに、
自分も参加しないと、みたいな。
いや、単純に子育てやってみたいね。
絶対、思い通りには育たないんだろうけど、
それもまた一興かな、みたいな。
次の劇は絶対に見に行くね☆
(あ、子供に演劇やらせたい笑)。
>おーき氏
>就活してると思うけど、「仕事はそこそこに、家事育児も…」
>なんて口が裂けても言えないよね。
>特に男は。
言ったらすべからく落ちるだろうね笑。
たいていのところは。
おーき氏の言うとおり、
世の中の当たり前が、他の有り得る可能性を
潰してしまっていると思うよ。
(というか、アメリカ型じゃないとダメだみたいな、向米一辺倒があらゆる多様な視座を見えなくさせ、社会を壊した一因ではあると思うよ)
教育は未来への投資。
まず、育児支援の拡充が必須だよ。
会社も、地域も、政府も。
ちなみに、僕は『主夫』がいいです笑。
これから料理学びます☆
「そこそこ派」~、本当に賛成します。
スウェーデンに1年半住んできましたが、
本当にみんなの帰りが早い!16時台には帰宅ラッシュが
始まります、金曜は他の日より更に帰宅が早いです。
イヤなこともた~~くさんありましたが、彼らの
働かなさを我々も少し取り入れるべきだと思いました。
(住んでいる時は「日本人の働きすぎ?をほんの少しで
いいから見習って、ちゃんとして欲しい」と思っていましたが…苦笑)
両極端すぎるんですよね…、この2ヶ国が。
>やぎさん
コメントありがとうございます(^^)。
実際住まれていたんですか。
場所はストックホルムとかですかね。
ちなみに僕はウプサラ大学に行きます。
日本人も3000人くらい住んでいるらしいので、
現地の日本人の話を聞いてみたいと思っています。
>(住んでいる時は「日本人の働きすぎ?をほんの少しで
いいから見習って、ちゃんとして欲しい」と思っていましたが…苦笑)
以前、スウェーデンに行っていた友人も言ってました。
「あの国は社会主義国だ」って。笑。
みんなのんびりしているし、お店も早く閉まるし、
洋服もかわいくない(?)とか。
となりの国は良く見えるじゃないですが、
入ってみると、いろいろと違和感が出てくるもんですね。
スウェーデンのこと書きますので、またコメント頂けると幸いです☆
社会はそんなに甘くないっていう形を取った言い訳と自己陶酔っしょ。
(女性)私、結婚・育児のことも考えてるけど実際出来ないくらいバリバリ働いているのよ、ね、そんな私凄いでしょ?凄いから育児とか見逃してね。
(男性)いやぁ、もう仕事が楽しくて楽しくてね、家事とかやってられないよね、仕事がジャンジャンバリバリあるからさ、だから女の人には家庭に入ってもらいたいんだよ。それ守るのがさ、僕達の務めっていうかね、誇りよね。ふふん。そんな僕、格好良くない?
みたいな。こういう異様な自己陶酔が出来てしまう社会は異形ですよね。まぁ、多分僕が捻くれた見方をしているだけでしょう。
以上、専業主夫希望の戯言でした。
再びお邪魔します。
ごく最近まで住んでおりましたが、すごく田舎に、です。
滞在中、ウプサラも何度か行きましたよ。
おぐしさんの滞在が楽しく有意義になることを祈っています。
なんというか、同じ人間社会なのだろうか?!と思うくらい、
「労働」に対する考え方が違うなと感じました。
日本だと、基本的な価値観としては、「勤勉は美徳」ですけど、欧州は誇張
すると「悪」って見なしてるんじゃない?って感じですからね。
(日本のように)病気で仕事休んで有休充てるとか、あり得ない感じでしたね。
責任感も全然ありません。管理職だけはあるかもしれないけれど…。
休みを取ることに関しては、本当に日本は「甘くない」です。
少しずつ変わってきてるとは感じますが、本当にゆっくり、ですよね。
スウェーデンみたいに夏休み5週間なんて日は、…来そうにないですね。
えふたか氏@アイロンがけの匂いが好き
そこそこ生きようとか言いつつも、実際、モーレツにバリバリと働くことになりそうな気がする僕たちはやはり麻痺しているのかな。まあでもこういうことを考えておけば、バリバリ働いているときにふと自分を遠くから見れるようになるでしょう。なんて思いながら、楽しく地道に生きるのであります。
やぎさん
>日本だと、基本的な価値観としては、「勤勉は美徳」ですけど、欧州は誇張
すると「悪」って見なしてるんじゃない?って感じですからね。
勤勉さが悪いものっていうのもすごいですよね。
いい悪いは別にして、それで生きていけるのは、
なるほど豊かで寛容な社会なんだなーとは思いますけど。
(僕は「勤勉」って言葉好きなんですけど)
日本は、「勤勉は美徳」って感じしますね(今どうなのかわかりませんが)。
ただ「勤勉は美徳」を利用して、「お前がダメなのは勤勉じゃないからだ」と自己責任と文句をつける人は嫌ですね。もちろん、「いや社会のせいだ」って声を荒げる人も嫌いですけど。笑。
バランスよく生きましょう(^^)