面接官をしてみたけれど。

 属している研究所の入所試験があり、僕も教授とともに、面接官として参加した。人間としても未熟で、勉強不足の僕が偉そうに面接官をするのもどうかと思いながらも、めったにない機会なので、できるだけ誠実に(やや楽しみながら)一生懸命に取り組ませてもらった。
 面接官は、教授が一人に、僕ら学生が二人。入所希望者が5人のグループ面接だ。
 基本的に「研究所に入って何がしたいのか」についての志望動機を質問して、あとは、大学生活で頑張ってきたことや今まで最も影響を受けたことなど、極めてオーソドックスなことを聞いた。
 今回、面接する側に立つことで、いくつか新しい発見をした(気がする)。
 ・元気と覇気がない人は、印象が悪くなる。
 ・話が長くて冗漫な人は、追加して質問したくなくなる。
 ・「今までで一番大きい挫折は?」と聞くと、95%の割合で「入試で落ちた経験」と答える。
 ・「尊敬する人は?」と聞くと、8割くらいが「親族系(父母祖母、先生)」と答える。
 ふむ。概して分かったことは、5分の面接では、「何もわからない」、ということだった。一人ひとりにもう少し個別に突っ込みを入れる時間があれば、その人の人間性やポテンシャル(伸びしろ)が分かるかもしれないが、ひとつ質問を投げかけてそれに対して順番に回答していくという機会的な方法では、正直いって、よくわからない。
 もちろん、志望動機という核については、ちゃんと準備してくれば簡単に伝わる。ちゃんと言えれば評価は良くなる。本気で入りたい勉強したいという人は、もうほとんどこの段階で判別可能である(本当に少ない数の人達であったが)。問題は、最近になって準備を始めてあんまり問題意識を持っていない人達の評価についてである。そして実際、このような「漠然とだけど入りたい」という中途半端組が、大半を占めているから難しいのである※。
 (※もっとも、本質的に「学び」とは事後的に感覚されることなので、学ぶ前から自分が学ぶことを明確に言語化できるということはありえない。漠然として入りたいというのは極めて健全な気持ちだと思う)。
 ともかく、難しいのは、まだ問題意識も持っていないし、勉強もそこまでしていない、これから研究所に入って問題意識を見つけていきたいという(中途半端な)人に対する評価であり、彼らが「今後(勉強して)伸びてくれる」人間なのかどうかの(ポテンシャルの)見分け方である。
 いわゆる、「見る目がある」人というのは、この「表面には出てこないけど、実は芯や核がある、ポテンシャルのある人間を見分けることができる」人間のことであると僕は思っている。(だって、できる人を見分けるのは、誰でもできるから)。
 今回、僕はそれがことごとくわからなかった。もしかしたら、本当に潜在的にやる気がある子に×印を押してしまったかもしれない。そうなっていたら、本当に申し訳ないと思う(といってもほとんどが先生による評価で決まるから関係無いと思うけれど)。
 × × × × × × × ×
 ちなみに、質問して分かったことは、奇抜な質問は何も意味あるものを引き出せないということである。「尊敬する人」や「最も大きい挫折」という質問ですら、何も新しきものを引き出すことはできなかった。普通に、「大学入ってから頑張っていること」や「今頑張っていること」を聞いた方が有益だった。
 うちの教授の質問は、なかなか厳しかった。たとえば、「歴史認識と聞いて、何を連想するか」「アメリカ大統領選について自分の思うところ」「自民党と民主党の大連立について」などなど。
 これは賛否が分かれるところだと思う。
 大半の学生があまり答えられていなかった。挙手制だったので、全く知識がないからと「お手上げ」の学生もわんさかいた。たぶん、僕が二年のときでも、答えられなかったと思う。気の毒ではある。でも、先生としても、別に完璧な回答を求めているわけではなく、どのように答えるのか思考するのかを見ていたはずである。例えば、歴史認識については、難しいなりに自分の中の少ない知識を集めて答えようとしている子もいるにはいた。この質問により、確かに「差」は見えやすくなった。良い質問だったと僕は思っている。
 ただ、他のグループの面接が、どれほどのものだったのかという問題がある。他と比べて、明らかに難しかった、かもしれない。他を見ていないので、何ともいえないが、もしそうだとしたら、確かに可哀想ではあった。来年度に向けて、もう少し改善するところはあるかもしれない。

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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面接官をしてみたけれど。 への4件のフィードバック

  1. ト山 より:

    >「歴史認識と聞いて、何を連想するか」「アメリカ大統領選について自分の思うところ」「自民党と民主党の大連立について」
    流石O石クオリティw
    ここで「読売新聞主筆というジャーナリズムの担い手である立場の人間が伝えてとしてでなく、主体者として政権に関与することが問題なのではないのか!」とか熱く語る1年生がいたら是非とも欲しい人材ではあるがな。
    とりあえずお疲れ様。来年就活するときにいい経験になると思うよ。

  2. より:

    おつかれさまです★
    本当に入りたい人が入れるといいですね★
    Kちゃんとか★

  3. ぐっしー より:

    >ト山氏
    ほんと可哀想でしたよ。
    まさかそんなこと聞かれると思ってなかったって
    顔していましたから。
    あれだったらディベートにした方がいい気がしますね。
    平等だし、コミュニケーションの感度もわかるし。
    僕敵には、むしろ、「主筆が大連立を提案して何が悪い!!」
    っていうくらいの子もいても良かったと思うんですけど、
    みんな絶句していましたね。残念です。
    >ぴー氏
    本当に入りたい人が入れるといいねぇ。
    …早くも来年度が楽しみであります笑。

  4. はじめまして。
    ものすごいバランス感覚と
    行動力と知識。
    私の中でアルファブロガー
    候補に躍り出ました。
    楽しく拝読させていただきます。
    よろしくお願いいたします。

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