ホタルノヒカリから見る「まったり世界」

 ・ホタルノヒカリ(日テレのドラマ)が終わった。ほとんどドラマを見ない僕であるが、これは毎週見るのが楽しみなドラマだったので、ちょっと残念であった。心にポッカリ小さな穴が開いたのである。しくしくし。
 ・干物女という概念が、そもそも、素晴らしい。「干物女」というのは、「恋愛よりも家でゴロゴロすることを好む」「適当なジャージ姿でビールをグビグビ飲む」女性を意味するらしいが、これは別に不思議な人種でも何でもないのである。
 ・一般的に、男はジャージでダラダラしてビールをグビグビ飲んでいるものだ。どうして女性がそれをしていけないのかという話である。また、好きな男がいないのだから無理やり外に出て頑張るのもアレだから、むしろ家でゴロゴロしてたほうよろしい。
  
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 さて、このドラマの面白さはどこにあったのか?
 それは、このドラマの恋愛観が、「どきどき」にではなく、「まったり」に価値を置いていたということ。そして最後には「まったり」が「どきどき」を超えてしまうことを、説得力を持って描き出している点にある。
 綾瀬はるか扮する「雨宮蛍」は、ひょんなことから藤木直人演じる「ぶちょお」(部長)と同棲を始めることになる。料理や洗濯をこなす、しっかり者のぶちょおは、干物女である雨宮(アホ宮)蛍を「女として終わっている」と宣告し、恋愛の対象として見ない。二人はお互いを男と女として意識することなく、それこそ「自分の素」(ナチュラリティー)をほぼ全面に押し出しながら生活を送ることになった。
 それほど「どきどき」することもないが、それだけ気をつかう必要もない。「素の自分」を気兼ねなくさらけ出せること、これが「まったり」の空気の内実である。
 その後、蛍は、会社の同僚の「まこと」くんを好きになり、まことくんとのメールや会話のやり取りに一喜一憂しながら「どきどき」を感じるようになる。そしてぶちょおに助けてもらい、紆余曲折を経ながら、二人の愛は結実することになる。
 だが、問題はその後だった。
 苦労の末、「どきどき」の恋愛を手に入れた雨宮蛍であったが、まことくんとの同棲が始まると、彼女にとっての「どきどき」は楽しさとしてではなく、重さとして感じられるようになる。一方のまことくんも、蛍が彼と一緒にいることで、「素の彼女」を出せていないことに何ともいえない苛立ちを感じ始める。
 そして、「蛍さんはぶちょおと一緒にいるほうが楽しいのではないか」という強迫観念に駆られたまことくんは、最終的に、蛍のことを捨ててしてしまう。
 大抵の恋愛では、「ドキドキ感」が時間の経過とともに減退していくにつれて、同時平行的に「愛着」のようなものが付帯されていく。この二人もお互いに深いところで愛着を持とうと「努力し」ていた。だが、その(ドキドキ状態における)「努力」という行為自体が、もっとも「まったり」の恋愛からほど遠いものであると、このドラマは示唆している。
 つまり恋愛とは、自分の素(ナチュラリティー)を気兼ねなく出せることであって、それは「努力」という概念とは無縁であるというのだ。ホタルノヒカリでは、このような「まったり」の恋愛観が隅々にまで徹底されていた。国中涼子演じる「素敵女子」の優華は、いつのまにか、武田真治扮する要さんと良い感じになっているが、彼女は蛍に諭すように言う。「ドキドキする恋愛もいいけど、一緒にいてホッとする恋愛も良いものよ」と。
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 「干物女って可愛いよね??」 こう言うと必ず次のように返答される。「それは綾瀬はるかが演じているからよ」と。僕もそれは否定しない。そう、綾瀬はるかは、確かに可愛いからだ。
 だが綾瀬はるかの可愛さを差し引いたとしても、「干物女」という概念にも固有の可愛さがないわけではないだろう。それはチョンマゲ固有の可愛さかもしれないし、ジャージと女性とビールいうギャップの可愛さかもしれない。あるいは、あの縁側の庭とジャージと新聞紙という関係性の可愛さかもしれないし、ぶちょおとの掛け合いから滲み出る可愛さからもしれない。だから、僕は「干物娘の多様な可愛さ」を「綾瀬はるか」の可愛さに一元的に収斂させることには断固反対を表明したい。「干物固有の可愛さを無視するな」と。
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 (最後に、このドラマの「まったり世界」が本当に「恋愛観」を志向しているのかどうかは実はよくわからない。「まったり世界」は、実のところ、「結婚観」を志向しているといえるからだ。このドラマは社会人の話だから、ヤングな「ドキドキ恋愛観」ではなくて、必然的に「まったり」にならざるをえないと言われるかもしれない)。 

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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ホタルノヒカリから見る「まったり世界」 への4件のフィードバック

  1. たけ より:

    「一緒にいたい」と思う相手より、
    「一緒にいられる」と思う相手の方が、
    結婚相手には適しているらしい。
    両方付帯していたら最強だわな。

  2. ぐっしー より:

    >たけさん
    「一緒にいられる相手ほうがいい」。
    なるほどなるほど。たしかにそうかも。
    両方がいいですけど、なかなか難しそうですね(><)

  3. はな より:

    先週ホタルのひかりをみましたけど、
    OLの私は、あまりにも共感してしまい、
    セリフの検索で偶然ここまで来てしまいましたが
    「干物女って可愛いよね??」からの書き込みが面白くて(*^ _^*)

  4. とし より:

    はなさん
    コメントありがとうございます。久しぶりに昔の記事を見て、自分でもこんなことを書いていたのかと、恥ずかしい限りで(笑)。。。干物女という概念自体があまり使われていないようで、やはり汎用性はなかったんですかね。

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