(「走れ海士ワゴン―出前授業編」はこちら)
☆『ダトコンタ』 ~観光パンフ作り~☆
前日の出前授業の成功を祝して遅くまで話し込んでいたせいか、みんな心なし身体が重たそうだ。窓から柔らかい光が差し込むポカポカ陽気の下、眠い目を擦りながらその会議は始まった。
四月から海士町に移住し、現在、町の観光協会に勤めている青山敦士さんは開口一番、「これから観光パンフレット』を作ります」と次の企画について説明してくれた。そのパンフレットの名前は『ダトコンタ』。海士特有の言葉で、『わたしからあなたへ』という意味だそうだ。
『ダトコンタ』は、いわゆる「観光パンフレット」の類ではない。ただ観光地や有名所を紹介するというより、外から来た人間が、海士でどんな人と出会い、どういうことに参加し、どういうことを感じたのかなど、海士との関わりの中で気がついた、「新しい発見や学び」について紹介するものだ。ダトコンタは、「私からあなたへ」という言葉通り、海士に来てもらいたい人達に手渡しで渡せるように『招待状』として作成される予定で、6月中旬には、海士町長が出席する政府の地域・特別会議の場で、安倍首相にも提出されるとのこと。
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『ダトコンタ』(冊子)のコンテンツ作成を目的として、海士ワゴン・メンバーたちは島中を取材して回ることにした。三つのグループに分かれて、それぞれの取材方法で町ネタ・人ネタを探しに出かける。
筆者のグループは、隠岐神社の神主さん(村尾さん)にお話を伺おうと、キンニャモニャセンター(島の窓口の中心)の電話からアポを取り付けたあと、さっそく自転車で出発した。
いつもは車で通るためさほど意識しない道も、ゆっくりペダルを漕ぎながら進むと、新しい発見がある。道の隅に立ち尽くしている銅像を見つけては立ち止まり、山から海を見下ろしては写真を撮る。撮ってはまた一歩ペダルを踏む。ペダルを踏む足どりは重く、踏めば踏むほど顔から汗が吹き出てくる。暑い……。が、立ち漕ぎで山道を登りきったあとの、身体いっぱいに風を受けて坂道を下りていく瞬間が、何とも気持ち良い。久しく忘れていた、自分が自然に浸透していくような感覚に陥るのだ。
隠岐神社では、神主さんに海士町の森林保全や農業の問題について話を伺った。緑に溢れていると思っていた海士の森だったが、実は、松の木がほとんど絶滅状態に追い込まれていることを知って驚いた。この海士でさえ、自然が脅かされているとしたら、日本の自然・文化はどうなるのか、少し不安になる…。そんな神主さんのお話の途中で、「ちょうど今、コメの苗付け(種付け)の作業をしていて人手が足らない」ということを聞いた。我々メンバーは間髪入れずにお願いして、種・苗付けを手伝うことになった。
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宇受賀地区のビニールハウスに着くと、作業をしていた(営農組合の)おじさん達が笑顔で受け入れてくれた。すぐさま上着を脱いで、作業スタート。
仕事はいたって単純で、まずは肥料を含んだ土を長方形のボックスに詰め込む。そして、それを機械のラインに流すと、土の上に「苗の種」が均等に降り落ち、さらにその上にもう一度、土を降りかける。その完成したボックスをビニールシートの端から運んで揃えて水をかける――これが一連の作業である。覚えてしまえばそれほど難しい作業ではないが、しかしこれを三人四人でやるとなると相当に骨の折れる仕事だ。
作業をしている藤田さんは「いまは機械のおかげで相当楽になったけど、昔は大変だった」と感慨深く語ってくれた。また、ここで出会った陽気なおじさんの亀原さんは翌日、作業を手伝ったお礼に、「山椒取り」、そして海に連れて行って「アメフラシ取り」を体験させてくれた。僕らが海面をいくら覗き込んでも見つけられないアメフラシを、亀原さんは、すぐに探し当てた。やりで巧みに突っつくと、海面の中に浮かぶブヨブヨした個体を指して、「ほら、これだ」と笑顔で教えてくれた。
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海士で出会った人の話はすべて、自分らが長い間生活してきたこの島の海や山、自然と繋がっていた。島の歴史や風土に結びついている、農業や漁業、そして料理。それらを当たり前のように語れる人達の存在は、僕の目に新鮮に映った。ここには確かに日本の文化が生きている、そう確信した。
また他のメンバーの中には、外からのIターン者へのインタビューを行ったり、CAS(鮮度を保ったまま魚を輸送するシステム)工場の見学をしたり、ヒッチハイクで7台の車にお世話になったという人もいた(何という優しさ、温かさ!)。それぞれがそれぞれのやり方で、海士の住民と出会い、海士を感じて、海士の魅力に触れることができたことだろう。溢れんばかりの充実感と喜び、そしてまた絶対に海士にやって来るという思いを胸に秘めて、僕たちは本土へ帰っていった。 (おぐし)
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ワゴンr ctについて
ワゴンr ctの人気の秘密は、高い背と座面にあります。ワゴンr ctはスズキが生産している軽自動車です。ワゴンrの排気量は660で、軽自動車というと、室内が狭いという弱点がありました。その弱点をワゴンr ctは見事に克服しました。背を高く取ることで、室内が狭いというイメージを払拭しました。それだけではなく、ワゴンr ctは、アルトやセルボモードをベースにしながら、アンダーフロアを二重構造にして座面も高く取っています。ワゴンr ctの良さは、足を窮屈に曲げずに座れるというところ…