有機農業のススメ②

 (遺伝子組み換え作物の危険性①はこちら)
  「アメリカでは、四社がほとんど作物の『種』を握っている。つまり彼らの種子倉庫がテロか何かで破壊されたら、それこそ食料危機になるわけです」
 子さんは、グローバリゼーションの名の下で少数の企業が世界の市場を覆い尽くす現状について警鐘を鳴らした上で、それぞれの地域ごとにその地域にあった農作物を作ることが、食料の体系や種の保存にとって一番だと続ける。「農家は自分が本当に美味しいと思うものを作ってそれで自給自足する。その延長線上に消費者がいればいい」と。
 そして現在、そのように農家と消費者を直接に繋ぐような動きが高まってきている。たとえば、『直売店』の増加にそれが見てとれる。かつては農家と消費者の間には、多くの中間業者が媒介していた。それの最たるものがJA全農で、彼らが農家から一括で農作物を買い取り、それを卸売り業者へと回し、市場に売り出していた。
 しかし現在、増えつつある直営店を通じて農家が自分の作物の値段を決定し、その品質と値段に納得した消費者が作物を購入する。品質が良く美味しいものを作りたいという農家と安全で美味しいものを食べたいという消費者の関係がこのように『顔』の見えやすい直営店を媒介として機能しているのだ。
 
 中間マージン料が少ない、品質の良いものが売れる、消費者とのコミュニティーが生まれる……。このように言うと良いこと尽くめのようだが、他方で直売店はリスクも伴っている。
 卸売りや農協の場合ならば、『事前一括買い取り』制度のため、作物を売り払った分だけの(安いながら)お金が手に入る。だが直売は『委託販売』を採用しているので生産者同士の競争は厳しくなり、自分の作物が売れなければすべて生産者の自己責任で一円も入ってこない。さらに直売店への商品の搬入やバーコード付けなどの煩雑な作業もこなさなければならない。
 ある程度の負担はやむをえないものの、やはり直売店の魅力は余りあると言える。直営所は商品の媒介地としてだけではなく、人と人を繋ぐ『コミュニティー』としての役割を期待できるからだ。災害時における食料供給場として機能したり、農作物(野菜やコメ)とその地域独自の『地域通貨』を交換したりと、地域コミュニティーの新しい形となることが期待されている。
 
 埼玉の小川町では、家庭から出る生ゴミや残飯を特殊な施設で液体肥料として資源化するいう試みを行っている(小学校の給食のゴミも再利用している)。そしてその活動に関わる住民は、ゴミの変換量に応じて年に二回の野菜交換会に参加できるという。「まだまだ費用や施設不足の問題で不都合はあるが、今後支援者や参加者が増えてくれば、この運動を恒常的に行い、少しでも循環社会を実現したい」。NPOふうどの関係者はそのように話している。
  「それぞれの地域・土地ごとにそれぞれの豊かな農作を!」。
 大規模化し規格化してきた農作であるが、より安くより効率的な商品の追求という国際競争スローガンだけでは解決できない種類の問題も存在する。豊かで安全な食の確保が喫緊の課題である現在こそ、アメリカからの遺伝子組み換えにNOと言い、自分たちの食は自分たちで作らなければならない。地域に根ざした有機農法の拡充こそが小さいながらも食料自給率の問題を解決する第一歩である。
 ちなみにキューバはソ連崩壊後、カストロの指導下で食料自給の確保をスローガンとし、国内の8割以上が有機農業にすることに成功している。またヨーロッパがアメリカの遺伝子組み換え作物を拒否できているのも、食料を自分たちで確保できているからというのが大きい。
 「農業に参加してみる。直売店を訪ねてみる。有機野菜を買ってみる。新聞にこの話題が出ていたら注意して読んでみる……」。一人ひとりができることは少ないかもしれないが、取り組めることはたくさんある。去年、国会を通過した『有機農業推進法』によって本当に事態が推進されるのかわからないが、金子さんが言うように「自分の地元の小・中学校では、地元の有機作物を使う」くらいは実現させてほしい。(そういえば杉並区の和田中学校は『食育』でも模範だったんだよなぁ、さすがだ☆)。
 オレもそろそろマックに行くの辞めようかなぁと思いますが果たして……。 

ぐし Gushi について

Currently working for a Japanese consulting firm providing professional business service. After finishing my graduate course at Uppsala University in Sweden (2013), I worked for the European Parliament in Brussels as a trainee and then continued working at a lobbying firm in Brussels(2015). After that I joined the Japan's Ministry of Foreign Affairs, working in a unit dedicating for the negotiations on EU-Japan's Economic Partnership Agreement (EPA/FTA) (-2018). 現在は民間コンサルティング会社で勤務。スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事した後(-2015年3月)、外務省で日EUのEPA交渉チームで勤務(-2018年3月)。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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有機農業のススメ② への2件のフィードバック

  1. たっとー より:

    沈黙の春からずいぶん時間が経って、日本にもすこしづつですが、いい流れができていると思っています。

  2. おぐっし より:

    >たっとー
    …沈黙の春、レイチェルカーソンですか。
    ってごめん、俺読んだことないからわからない(笑)。
    いい流れならいいんだけどね。
    ただ担い手の不足の問題は大きいと思うね(これもよくわからない)
    みんなで鹿児島に行ってサツマイモを作ろう(^^)

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