池袋から東部東上線で下ること70分のところにある埼玉県小川町。早くから有機農法への取り組みで有名な地域であり、最近では家庭から出る生ゴミを資源化し、町を循環させようというプロジェクトを始めている(ただし役場の主導ではなく住民の主導)。今回、私は『NPOふうど』という団体の会議に参加させてもらった。そこで聞いた話と自分が調べたことを合わせて少し紹介したいと思う。
「遺伝子組み換えの農作物は、何万年と続いてきた食の体系を根幹から崩してしまう。今こそ有機農法を推進していかなかればならない」
NPOふうど主催の講演会でそう語るは、小川町で三十年以上も有機農法を実践してきた金子さん。昨年の12月、超党派の議員立法で『有機農業推進法』が国会を通ったことを金子さんは「百年に一度の農業改革」だと評価する。近代に入ってから農作を大事にしてこなかった日本は食料自給率が40%と先進国では突出して低い。誰もが欠かせない大豆は5%、とうもろこしに至っては0%。日本はアメリカ産の遺伝子組み換えの食物に頼らざるをえない。このような状況を打開する転機がいまやってきたのだ、と。
では、そもそも遺伝子組み換え作物とは一体どのような作物で、どのように危険なのか。
それまで(第二次大戦後)農家は除草剤などの農薬を殺虫効果として使っていたが、90年代に(アメリカで)遺伝子組み替え技術が登場したことによって、除草剤に対して耐性のある作物が生まれ、除草剤(農薬)の量を減らせるようになった。また作物それ自体に殺虫効果を組み込んだ作物が開発された。つまり、外側から『化学物質』を注入してコーティングするのではなく、細胞の中に耐性効果や殺虫効果を有した作物を作り出したのである。
結論から言おう。このバイオテクノロジー技術は、基本的に消費者の利益にはならないだけでなく重大な危険性を伴っている。食料危機を解決するとか良質のものだけを採取できるなどと喧伝されるが、これはありえない。この技術開発が目指しているところは、畢竟、バイオ業界や大企業の利益に他ならないのである。
もっとも大きい問題は、少数の大企業が持つ遺伝子組み換え作物が、それまでの植物や作物の種の多様性を破壊してしまうことだ。遺伝子組み換えの作物が流通すれば、虫や鳥、風などで飛ばされた花粉などが、それぞれの地域ごとに自生する作物に入り込み、それまでの多様な種の体系を壊し均一化させる。実際に日本においても、トウモロコシやナタネなどのそれ自体が種子である作物がトラックから飛び散ってところどころに自生していることが確認されている。
また恐ろしいことに、特定の組み換え遺伝子の種類を『特許』として認定することがアメリカで制度化されている。この制度によって、たとえばアメリカでは、遺伝子組み換えを使っていない『ナタネ』農家の農地に、『モンサント社』の開発した遺伝子組み換え作物が発見されたとしてシュマイザー氏が裁判所に訴えられた。虫か風が運んできて自分の農地に入り込んだだけで、むしろ被害者であるはずのシュマイザーさんが、この遺伝子『特許裁判』で敗訴。自分の伝統の農作物を破壊された上、そのナタネをすべて没収されてしまったのだ。(ちなみに『モンサント社』は、一万以上の種の特許を持っているという)。
このように少数の企業が自らの利益のために、市場を独占している状態が健全なわけがない。②では、このような体制にNOを掲げて『有機農法』を目指す試みを紹介する。
参考 → 食の未来DVD及びそのテキスト
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