公立校の逆襲―杉並区和田中学校レポート②

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 原校長が、元リクルートのフェローとして、当時小さかったリクルートを大企業にまで牽引した一人というのは有名な話だ。四年前、民間から初めて中学校の校長に就任した彼は、物事の選択基準を『子供たちのためになるかどうか』として厳格に定め、あらゆる改革を素早い意思決定の下で行ってきた。彼は、毎日新聞のインタビューに対して、「これから10年、私は『戦争』だと言っている。全国の中学校1万校のうち、10年間で計3000人、学校外から校長を連れてこないと(教育改革は)無理だと思う」(1月5日)と答えているが、やはり今後、思慮があってリーダーシップの溢れる校長を民間から登用することは、不可欠だろう。
 『よのなか科』の授業が終わった11時20分から、サポーターや見学者(校長は参加者と呼ぶ)を交えて、今回のレビューや今後の展望を話し合った。参加者の中には、鹿児島の奄美大島、秋田、四国の香川と日本全国からこの授業のために来た教員の人もいて、僕は、彼らの意思と思いに驚くとともにいたく感心した。「すげーじゃん!!」 何か温かい希望も沸いてきた。
 しかし現実は現実で直視しなければならない。藤原校長は、「小学生の時点ですでに未履修問題が進んでいることがハッキリしました」と問題を指摘する。高校における未履修ではなく小学生の段階での未履修が拡大していて、それは特に算数の分野において顕著だ。実際に、卒業前の小学6年生を対象にした試験では、130人のうちの30~40人の生徒が分数の計算を白紙で提出してきた。それは、小学校で履修しておくべき分数の分野をまったく学ばずに、中学生に上がってきたことを意味する。つまり、彼らは未履修だったのだ。藤原校長は、「ゆとり教育が問題だと指摘されていますが、現実はもっと深刻です。小学校では、指導要領が三割削減されたゆとり内容ですら、履修できていないのですから」と呆れたように漏らす。
 そういう状況に対応するために、和田中学校では、土曜日の午前中を利用して寺子屋を開いている。ドテラと呼ばれているこの活動は、生徒の自由参加であるが、300人の生徒のうち100人ほどが通っている。これが面白いのは、彼らの指導に当たるのが、地域の住民のサポーターや教員を目指す大学生や社会人がボランティアである点だ。金のために塾や家庭教師をしている大学生よりも、ハートがあり気合が入っている彼らの指導のほうが有益でためになることは言うまでもないだろう。また今年からは、このような土曜寺子屋を入学前の小学6年生にも門戸を広げ始めた。先の分数の未履修問題の対策のほかに、ここに子供の親を招いて子供と一緒に勉強できるようにしている。これによって親も自分が意外と勉強できないことを自覚すると同時に、子供の勉学に対する意識も高まる。さらに、この場を介して親同士が連帯することによって地域の共同体性も高まるというわけである。
 『公立校の逆襲』は、これから始まる。いや始めなければならない。

ぐし について

スウェーデンのウプサラ大学大学院政治行政学修士取得、欧州議会漁業委員会で研修生として勤務後(-2013年3月)、ブリュッセルでEU政策や市場動向などを調査の仕事に従事。2014年11月から慶應大学のEUSI研究員。千葉市まちづくり未来研究員(自転車政策)。NPO Rights副代表理事として若者政策(主に若者参画)の提言や分析を行う。連絡先:gushiken17@hotmail.com
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