『大貧民』というトランプゲームがある。手持ちのカードを誰が早く手放せるかを争い、勝った順番によって「大貴族」「貴族」「平民」「貧民」「大貧民」などに階級分けされる。二回目からは、貧民は貴族に対して年貢を、つまり、強いカードを与えなければならない。 結果として、貴族はより勝ち続け、貧民は負け続ける、そういう仁義なきゲームだ。
最近、そんなシビアな世界が日本社会でも表出しつつある。教育の機会均等の原則が崩れ、親の経済力や文化力によって、子供のスタートライン、そして将来が規定されてしまうというのだ。
以前、日本三大ドヤ街のひとつである横浜の『寿』という町で、ホームレスや日雇い労働者への炊き出しを手伝った。寿では、バブル崩壊後、日雇い労働者たちが数多く押し寄せたが、仕事は減る一方だった。安宿だけでは足りず、支援団体が簡易施設を作った。そこには、今でも人が溢れ、三分の二が生活保護を受けている。驚いたのは、その中に子供を抱える家族の人たちも暮らしているということだった。その子供は周りの人の支援によって幸運にも今、大学に通っているというが、そういう人は稀だという……。
経済の後退や少子化の進行、社会構造の変化に伴い、「公共」という誰でもアクセスできる機会が崩れつつある。階級によって分断され固定化される世界の到来。それは、バブル期に流行った「マル金マルビ」という格差を戯画化する言葉が、今では「勝ち組負け組」という身も蓋もない言葉に取って変わられたことからも見て取れるだろう。この寒々しい世界の中で、誰もが方策を求めて探し回っている。それでも、答えは見つかっていない。
冒頭の『大貧民』では、階級の固定化を防ぐために、多様な救済ルールが敷かれている。特に地方によっては、数字の小さいカードを逆に強くしたりして、誰もが楽しめるように流動的な仕組みが多くあるという。どこか、地方からの悲鳴にも聞こえるが、そういう遊びの知恵を、現実にも応用できないだろうか。
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